Sの悲劇 ~幸せになりたかった…~

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Sの悲劇 ~幸せになりたかった…~

大変ご無沙汰しておりました。

投稿どころか、ここに来るのも久しぶりですが…

以前の作品にも登場した、後輩Sに続けざまに起こった悲劇をご紹介します。

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俺の後輩で釣り仲間のS…

お調子者で、トラブルメーカーなんだけど何故か憎めない愛すべきバカって表現がしっくりと来る男…

30代も半ばを過ぎた今年の2月にSはついに結婚をした。

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相手の女性はSよりも2歳年下の離婚歴のある娘だった。

年の瀬に合コンで出逢い、交際が始まり即結婚を決めた…

そして、出逢いからわずか2ヶ月で結婚式となった…

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俺を含め周りの友人は、少し心配だった…

偏見かも知れないが、やはり離婚歴があるということ…

出逢ってからの展開がかなり早いこと…

そして、何よりも彼女の人間性が引っ掛かっていた…

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よく言えば、明るく社交的…

悪く言えば、外見・話し方全てが馴れ馴れしくてチャラチャラした感じ…

噂でも、離婚の原因も彼女の派手な男性関係だったらしい…

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俺も結婚式の前にデート中のSと彼女に出会った事があった…

初対面にしては、かなり馴れ馴れしく接してくる彼女に少しひいた…

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初対面のその日のうちにLINEの通知が鳴った…

知り合いかも?のところに彼女の名前があった…

そしてすぐにメッセージが来た。

『S君から、電話番号聞きました!またなんかあったら相談に乗って下さいね~』

何故か知らないけど、ため息が出たのを覚えてる…

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友人の中にはSを説得した奴も居たらしい…

『ホントにあの娘でいいのか?』って

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かくいう俺も、

『結婚は、もう少し付き合ってからでもいいんじゃないか?』ってSに言った口だ…

『式場も押さえたし、彼女の両親も早い方がいいって言ってるから』

というのがSの返事だった…

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2月の終わり、結婚式当日を迎えた…

式は何事もなく進んで行った…

ほんの少しの違和感を俺に持たせたまま…

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大手の企業に勤務して、社交的で明るい性格のS…

たくさんの友人や、会社の同僚も式に出席して確かに華やかで賑やかな結婚式だった…

対して、新婦側の出席者はわずかだった…

親族は、両親と新婦の兄だけ…

友人も、4人だけだった…

漠然と、離婚歴があるとこんなものなのかな?って考えたりもした…

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でも、俺の持った違和感の正体はそれだけじゃ無かったんだ…

綺麗なウェディングドレスに身を包み場内を歩く新婦の胸元…

雛壇の上の席に着いた新婦の膝の上…

そこには、声こそ聴こえないが、顔を歪め泣いているように見える赤ちゃんの姿があった…

こんなめでたい席で、そんなことを言い出せるはずもなく、俺はなるべくそちらを見ないようにしていた…

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だけど、これだけでは終わらなかった…

新郎・新婦揃ってお色直しのために中座があり、再入場となった時だった…

『新婦・新婦のお色直しを終え、再入場となります。盛大な拍手でお出迎え下さい』

司会の声に、参列者は皆入場口に目を向けた。

扉が開き、新婦・新婦の登場かと思いきやそこには誰も居なかった…

庭に面した大窓が開かれ、そちらからのサプライズ登場となった…

庭では小さな仕掛け花火のようなものが用意されその中から二人が登場した…

花火の明かりに照らされ、入場してくる二人…

その光の中に、あり得ないものを見た…

仲良く腕を組み歩く二人の後ろに、1人の老婆が居た…

その形相は凄まじい怒りをはらんでいるように見えた…

怒りの表情で新婦を睨み付けていた…

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披露宴も終わり、バスに乗り二次会の会場へ移動した…

正直、気分が悪かった…

貸し切られた店の庭に出て、冬の夜風に当たっている俺の元に、Sがやって来た…

『あっ、イカさ~ん、こんなとこに居たんですか?ここ寒いっしょ?』

「おぅ、S。結婚おめでとう。少し酔いざましにタバコ吸いにね。主役が出てきたらアカンやろ?俺も一服したら入るから。」

『そうそう、イカさん何か見えませんでした?』

「えっ…」

(Sのやつ、気づいてたのか…?)

『これこれ、これが俺のばあちゃんなんスけど』

そう言いながらSは俺の前に携帯を差し出した…

そこには見覚えのある老婆が、穏やかな笑顔を浮かべて写っていた…

(形相は全然違うけど、確かにあの新婦を睨んでいた老婆だ…)

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『イカさんの結婚式の時に、イカさんのおじいさんとおばあさんが来てたんですよね?

オレもおばあちゃんっ子だったから、ばあちゃん来てたかなぁって思って。見ませんでした?』

(まぁ、確かに来てたみたいだよ… ただ、お祝いに来たって雰囲気では無かったけど… だけどそんな事言わない方がいいよな…)

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「あのなS、俺は霊能力者でもなんでもないからな。常にそういうのが見えるわけじゃ無いんだよ…

時々不意に見ちゃうだけ。だからお前のおばあちゃんは見てないよ。でも可愛がってた孫の結婚式なんだから、どっかで見てくれてたと思うよ。見えなかっただけで…」

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とりあえず、しどろもどろになりながらその場を取り繕った…

『そうッスかぁ、イカさんなら見えるかなぁって期待してたんすけどね。そうですよね。来てくれてはいますよね。』

「そりゃそうだろう…」

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言えないよ… こんなめでたい日に…

お前のおばあちゃん、結婚に反対してるんじゃないか? 彼女のこと、めっちゃ睨んでたよ。

なんて…

しかも、お前の嫁さんには赤ちゃんの霊が憑いてるみたいだよ。

なんて…

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結婚式から、3ヶ月が過ぎた6月…

Sは、離婚した…

甘い新婚生活を過ごすつもりで借りたマンションに、Sは今独りで住んでいる…

離婚の原因は、やはり彼女の男関係…

Sが仕事してる間に出逢い系に手を出して、逢瀬を繰り返していたらしい…

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その上、彼女… すでにカード破産していた様で、自分名義で金をかりれないので、Sの名義でかなりの借金をしたらしい…

詳しい金額や、経緯はS自身に聞くことも気がひける…

落ち込むSがあまりにも痛々しいから…

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そんな事になっても、お人好しのSは彼女が作った借金を返している…

きちんと法的なところに相談して、なんとかして貰えって、周りはかなり説得したんだが、

『見抜けなかった自分も悪いから…』

って聞こうとしない…

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呆れたのは、彼女の親…

「離婚するなら慰謝料よこせ」

ってSのところに乗り込んで来たらしい…

さすがに慰謝料は断ったらしいが、逆にお前が請求してやれよって周囲の意見をSは聞かなかった…

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励ますために一緒に飲みに行った時のSの言葉が忘れられない…

『ただ、普通に幸せに暮らしたかっただけなんですけどね… やっぱりもう少し慎重に話を進めないと行けなかったですよね… 』

そう言って、Sは泣いた…

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俺は、Sにあの結婚式に見たものについては、まだ伝えていない…

どこかで、Sに対して少し後ろめたい気持ちがある。

だから、Sに何かあったときには出来る限りの協力をしてやろうと思っている…

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そして、Sの身に立て続けに起こった災難に、俺も巻き込まれて行く事になる…

この時は、まだそんなことを考えもしなかったけど…

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