花火。ー夏の夜の夢リメイクver.ー

中編6
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花火。ー夏の夜の夢リメイクver.ー

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「明日のデート、楽しみにしてるからね♡」

彩花からのラインに、思わず顔がほころぶ。

僕と彩花は明日の日曜日で付きあって1年になる。

その日曜日に、大きな花火大会が予定されている。

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僕は前々から1年の記念に、彩花と一万発の花火を見に行こうと決めていた。

まだ彩花にはどこにデートに行くのか言ってないが、色んなイベント事に敏感な彼女だ。

きっともうなんとなく予測は付いているはずだ。

だけど僕の用意したメインイベントは、花火大会の後なんだ。

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先日購入しておいたプレゼントの入った小さな箱を、そっと撫でる。

以前一緒にペアリングを購入した事もあり、サイズも間違いない。

僕ははやる気持ちを抑えるように、早めに寝る事にした。

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〜♫

早朝、着信音で目が醒めた。

枕元の時計を見ると、まだ午前6時過ぎ。

今日は1日デートを予定してはいるが、約束の時間にはまだ全然早い。

「誰だ?こんな時間に。。。」

僕は見慣れぬ番号からの電話を取った。

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「もしもし。。。」

『もしもし、浩明さんの電話でしょうか?』

「はい。。そうですが。。。」

『朝早くごめんなさいね。彩花の母です。実は。。。』

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僕は真っ白になった頭のまま、病院へと車を走らせていた。

そんな。。。なんで。。。

彩花のお母さんは、電話口で震える声で

『今朝早く、病院から電話があって。。。

彩花のアパートの下の階で、火事が起きたらしくて。。。っ』

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そこまで言うと、声を殺して泣いていた。

泣いていて話のできないお母さんから、かろうじて病院の名前を聞き出すと、

僕は部屋から飛び出していた。

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病院へ着き、受付で彼女の名前を告げると、集中治療室にいると告げられた。

急ぎ足で向かいながら、嫌な予感が拭えない。

集中治療室の前の通路に着くと、彩花のお母さんとお父さんが僕の足音にこちらを向いた。

どちらも憔悴しきった顔をしている。

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『浩明君、来てくれてありがとう。。。』

お父さんがゆっくりと頭を下げる。

「彩花さんは。。。」

僕の言葉に、二人とも無言のまま集中治療室の方を向いた。

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窓ガラスの向こうに、体中に包帯を巻かれ、あちこち管で繋がれた彩花がいた。

「彩花。。。」

ガラス越しに僕やご両親の前を、慌ただしく看護士が行き来する。

医師や看護士の様子を見れば、かなり危険な状態なのは容易に予想がついた。

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時折、お母さんの啜り泣く声や、お父さんの押し殺した嗚咽が聞こえてくる。

僕は、泣いていなかった。

ただ、現実味がなかった。

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ゆうべラインで話したじゃないか。

明日のデート楽しみにしてるねって、言ってたじゃないか。

一昨日は電話で話したよな?

僕にはわからないよ。

なんで。。。なんでキミがこんな。。。

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どれだけの時間を、そこでそうしていただろうか。

集中治療室から出てきた医師が、お父さんに何かを言っている。

手を、尽くしましたが。。。?

なんだよそれ。

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お母さんがその場に泣き崩れた。お父さんはお母さんの肩を抱きしめている。

僕は、フラフラと彩花のそばへと近づいていった。

顔も体も包帯と管だらけで、可愛かった僕の彩花は、そこに眠っていた。

そう。

眠っているようだった。

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僕は放心状態で、その後、ご両親とどんな会話をして、どうやって帰ったのかもわからない状態で、気付くと自分の部屋にいた。

「彩花、今日は、大切な日だったんだ。。。彩花。。。」

僕はうわ言のように彩花の名前を呼んでいたが、

ふと、あのプレゼントの箱を見るといても立ってもいられなくなり、

箱を握りしめ、車に乗り込んだ。

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時刻は午後6時半過ぎ。

もうすぐ、花火大会が始まる時間だ。

僕は花火大会の会場へと車を走らせた。

会場に着き、受付でチケットを2枚渡す。

チケットに書かれていた指定席へと向かい、その1つに腰をおろした。

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午後7時。

アナウンスと共に、最初の花火がうち上がる。

流れるように、次々とうち上がる花火。

「彩花、綺麗だな。。。」

僕は自然に声に出していた。

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『ホントだね』

僕は弾かれたように、彩花が座るはずの席を見た。

そこには、浴衣に身を包み、髪の毛を綺麗に結った彩花が、

うっとりと花火を見上げていた。

僕は、それから何も言わず、いないはずの彩花と、一万発の花火を眺めていた。

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3尺玉や2尺玉、1尺玉の大きな花が夜空を飾るたび、

『わぁー!!綺麗!!』

『浩明!見て見て!すごいね!』

と、変わらぬ様子ではしゃぐ彩花。

本当に、生きているように。。。

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「彩花」

僕は意を決して彩花を呼んだ。

『。。。なぁに?』

「彩花に、渡したいものがあるんだ」

『ふふ、どうしたの?改まって』

「今日は、僕達付き合ってちょうど1年だ。覚えてる?」

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『もちろんよ!忘れるわけないじゃない。ふふ、でも浩明、覚えててくれたんだね。ありがとう』

「もちろんさ。花火は、僕達1年の記念。

そしてこれは、これからも、僕達がずっと一緒にいる為の、記念。

受け取ってくれるよね?」

僕は持ってきていた小さな箱を彩花の目の前に差し出した。

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『っ!!』

彩花の大きな瞳が、ひときわ大きく見開かれ、僕を見つめる。

ああ。。。

これが現実ではないなんて。

こんなにも、キミは何も変わらないのに。

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「受け取ってくれるよね?」

僕はもう一度聞いた。

しばらくの沈黙の後、彩花は震える声で絞りだすように話し始めた。

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『浩明、ありがとう。。。

すごく嬉しい。今日の花火も、この指輪も。

もっともっと生きていたかった。浩明のそばにいたかった。

でも。。。

ごめんね浩明、私はもういないの。わかるでしょ?』

彩花の瞳は濡れていた。

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「わかってる。でも、僕の嫁になる人は、彩花しかいないんだ。これを、受け取ってくれ。受け取ってくれるだけで、それだけでいいんだ。」

僕も泣いていた。

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『浩明。。。私浩明に出逢えてよかった。

こんな形でお別れするなんて思ってもみなかったけど、

でも、私幸せだよ?幸せだったよ。

だからね、浩明。。。』

彩花がそっと僕の手に手を重ねる。

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キラキラと花火の火の粉のような光が、彩花を包んでいる。

彩花の体が、薄くなり始めている。

「っ!彩花!僕はっ。。。!」

『。。。浩明。。。』

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『私はもうじゅうぶん幸せだった。

今度は、浩明が幸せになる番。

私祈ってるから。浩明。。。

浩明が幸せになってくれないと、私成仏できないよ?』

「彩花!まだもう少し!もう少しだけ!!」

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一万発の花火のフィナーレなのか、ラストスパートのように次々と連続で花火がうち上がる。

彩花はその最後の打ち上げ花火と一緒に輝きながら、もう、その姿を消そうとしていた。

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shake

[[ドンッ!!]]

ひときわ大きな花火が、そのラストを飾りながら消えていく。

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彩花の姿も、その花火と共に、スゥッと消えていった。

ただ、最後にメッセージを残して。

『浩明。。。私の分まで。。。幸せになって。。。』

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separator

━━━━━━━あれから、もう5年が経ったよ。

彩花、君は天国で、幸せに過ごしているのかな。

君の墓前に結婚の報告に来たのは、もう2年も前になるんだね。

毎年、君と最後に逢った花火大会の日に君に逢いに来ているけど、今年はまた嬉しい報告があるんだよ。

君も喜んでくれるかな。

今、妻のお腹の中には、僕達の赤ちゃんがいるんだ。

早く報告がしたくて、今日がとても待ち遠しかったよ。

妻は、君の生まれ変わりだといいねと言ってくれてるんだ。

僕もそうだといいなと思ってる。

お腹の中の子は、女の子らしいんだ。

妻の熱望で、名前は「彩花」にする事になったよ。

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彩花。

僕は信じてる。

君が、僕と妻に逢いに来てくれたんだって━━━━。

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FIN

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良かった。前回のより、こっちのが断然良かった。
それしか言葉が出ないよぅ~

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まりかさん、夜分に失礼します。
この作品は本当に好きでリメイク版で出されたのを知り、すぐに読みに来ました☆
彼のその後が幸せであって良かったと思いました!

俺が同じ立場だったら他と結婚する勇気はないかも知れませんf^_^;
たった1人愛した女性を失ったら、とてつもない絶望感に襲われそうな… だからこそ大切に、何があっても守らなきゃ!って思わされる作品でした!
何より、まりかさんの作品をまた見させてもらえる事に感謝します(^^)

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切ないのぉぉ~(╥ω╥`)

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