中編3
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夕暮れの配達

こんばんは。弁当屋の山本です。

今日お話ししたいのは、ほんの少しだけ奇妙な配達について。

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うちの店では近くの家に限り、配達のサービスをやっているんですが、

やはり近所といっても初めての配達先のときはカーナビが欠かせません。

特にその日はいつもより少し遠くの目的地だったので、時間に余裕を持ってカーナビセット、車で出発しました。

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時刻は5時過ぎ、少しだけあたりは薄暗かったと思います。

いつも通りカーナビ音声を便りに運転していましたが、不可解な現象が起こりました。

そのカーナビがいきなり夜モードに、(つまり全体的に黒色で暗いところで見やすいモードのことですが、)変わってしまったんです。

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いつもならこの時期は19時に変わるようにしているので少しおかしな状態。

まあ、でもこのくらいの誤動作はいちいち気に止めないんですが、車の外の様子も少し変。

なんだかどんどん山の中に入っていってるんです。

人も家も姿が見えません。

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shake

「ぐぁー、ぐぁー」

虫か鳥かの鳴き声がいきなり大きくなり

「この先500meter目的地です」

そんな、どこにも家はなさそうなのに。

一本道で左も右も木でした。

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なんとなく気持ちが悪かったんですが、まっすぐ車を走らせると、

「この先100meter目的地です」

行き止まり、正確に言えば道がフェンスに遮られ

『私有地につき進入禁止』

の、立て札が。

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配達先のお客様に電話をかけてみました。

「すみませんお客様、配達に参りました山本です。」

「あ、すみません。今出ます……あれ、どこにいますか?」

「ええと、フェンスの前と言えば分かりますかね?」

shake

「……迷ってないで早く来い!」

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いきなり電話を切られてしまった。

もしやこのフェンスの中が目的地では無いのか。

恐る恐るもう一度電話をして、少し遅れそうなことを謝ったんですが、

もうお客様はそんなに起こっていないようでした。

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さて、私は、お客様から聞いた通り、ナビの目的地住所の一部を少し変え、再出発しました。

何故かナビは引き返すように案内します。

僕はナビの通りに運転し、いつの間にかナビ画面が昼モードに戻っていました。

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その後も案内に従って進んでいくと普通に団地へたどり着き、また普通に民家に到着しました。

チャイムを鳴らしましたら、穏やかそうな男性が出てきます。

「すみません。遅くなりました。」

「いやいや、大丈夫ですよ。」

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優しいお客様で良かったと思い、男性と話します。

「山の奥で行き止まりになったときにはどうなることかと……」

トン

いきなり男性が弁当の袋を落としました。

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そしてキッと私を睨み付けます。

「ウルサイウルサイウルサイ」

「どうなさいました!お客様!」

「ケンキュウシツ!オニ!オニ!」

騒ぎを聞いて家から出てきた女性が男性を抱きしめました。

「貴方!大丈夫だから!」

男性は少し落ち着きを取り戻したようです。

私はただただ突っ立っていましたが、

「山本さん、私たちは大丈夫なので帰って下さい。」

そう言われて車に戻りました。

その後私は何事もなく店に帰ったので、この話は特にオチもなく終わりです。

私自身は特に変な体験はしてません、が

車に乗り込むとき、女性が何やらこちらの上の方をを見て

怯えた表情を見せたのが、少しだけ気になります。

Concrete
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