長編12
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救い神(巣食い神)

「え~ん、Gアンにイジメられたよー!」

Dえもんに泣きつくN太。

誰もが知ってる某マンガのワンシーンだ。

DえもんはしぶしぶN太に道具を与える。

Gアンに仕返しをするN太。

しかし道具の力に頼り、私利私欲に駆られたN太は結局 道具に振り回されて因果応報。

子供の見るアニメなら当たり前の話だ。

だがイジメたGアンに仕返しをする為には、当然 力のないN太は力を手に入れなければならない。

だがもしこれが、実際の話だったらどうだろう?

力を与える者はDえもんのような善人とは限らない。

例え力を与えた者が死神だったとしたら、それでも人はその力を使うのだろうか?

これは偶然にも、そんな力を手にしてしまったN太のような話だ。

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僕「くそっ、アイツ。○○め…」

兄「どうしたんだ!?」

僕「なんでもないよ!兄さんには関係ない話だから」

兄「イジメにでも遭ったか?」

イジメられてることがカッコ悪いことだと思っていた僕は、家族にそのことを話すことができなかった。

僕「んな訳ないだろ…。僕の大事なキーホルダーを失くしただけだよ…」

兄「そうか…」

本当は○○に壊されたのだが。

兄「それは運が悪かったな(笑)まぁ、運が無いのならあそこに行ってみるといい。『救いの社』っつったかな?」

僕「『すくいのやしろ』?どこのこと言ってんの?」

兄「ほら、裏山にある お社あるだろ。お前も何回か見たことあるはずだぞ」

僕「あぁ、あれか。あれがどうしたの?」

兄「何かあそこ、魔除け効果があるらしいから行ってみてはいかがだろうか?」

兄さんは恐らく感づいているのだろう。

気を遣って提案してくれたんだと思う。

僕「あぁ。まぁ考えとくよ」

学校から帰って来てやることも無くイライラしていた僕は、兄さんが折角 提案してくれたこともあって、その『救いの社』とやらに行ってみることにした。

僕「なんか久々だなー。たまに来ると落ち着くのかもな~」

自然 溢れる立地もあって暢気な気分になった僕は、確かに気が紛れたのを実感した。

でもよくよく考えてみると、中を探索したことはあまりなかったことに気付いた僕は折角なので色々 調べて見ることにした。

すると お社の奥に、木の神輿のような物があった。

僕は何となく手を合わせて拝んでみた。

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僕「○○ってヤツを消して下さい!な~んてね」

すると

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ガタッ!

 

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僕「な、なんだ!?」

何か妙な音と共に声がした。

?「何をしてる!?」

僕「!」

急に声がして驚いた僕は、一瞬 引き下がってしまう。

すると小さな神輿の中から、同年代(中学生)くらいの男の子が出てきた。

どこのなく僕に似ている。

?「そこで何をしてるんだって」

混乱していた僕は焦るあまり、良い言葉が出てこなかった。

僕「え?なんなんですか?」

支離滅裂だった。

?「あぁ?お前こそ何なんだよ。俺はあれだ、ここに住んでる神だよ」

僕「はぁ。そんなんですか。神様なんですか…」

?「お前、信じてねーな。まぁ、あれだな。良い方の神じゃねーけどな」

何と言うか、ずいぶんと若々しい神様だな、色んな意味で。

僕「あのー、良い方の神様じゃないってどーゆーこと…?」

?「言葉の通りだ。死神とか疫病神みたいなもんさ。『救う神』有れば『巣食う神』有りってね。俺様は『巣食い神』ってんだ」

僕「でも僕は魔除け効果があるって聞いて来たんだけど…」

巣「魔除けはになるぜ。なんか消してほしいヤツがいるんだろ?」

僕「あ、あれは…ただちょっと思っただけで、本当にそう考えてた訳じゃ」

巣「消してやろーか?」

僕「え?」

巣「その○○ってヤツ。消してやるよ」

僕「いや、あの」

僕は完全に混乱している。

巣「そいつを巣食えばお前は救われるし、魔除けにはなってるだろ?」

僕「でも…」

巣「なぁに、すぐに消えやしないさ。それに代償ってのもあるしな」

僕「何?その代償って?」

巣「お前にとって大切なもんだろうが――、まぁ魔除けするなら安いもんさ」

その代償っているのは何か分からなかったけど、僕は今まで○○から受けた仕打ちを思い出す。

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○「お前の顔、ムカつくんだよ!」

○「こいつハブにしよーぜ」

○「おい、たばこ買って来いよ」

○「お前アイツのことが好きなんだろ?アイツの前で脱げよ」

○「明日までに5万準備しろよ。親の財布から盗んででもな」

○「お前に生きてる価値はねぇ。死ねよ」

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僕「消して…」

巣「ん?」

僕「消してほしい…。○○を消してほしい!巣食い神、僕を救ってくれ!」

巣「…。わかった、後悔するなよ。お前を、ソイツを巣食ってやるよ」

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次の日、○○は学校には来てなかった。

先生 曰わく、○○は風邪か何か引いたのではないかとの情報だった。

巣食い神の効果か?

○○が居なくて安心していた僕は、今日だけは平和な学校生活を満喫できると思っていた。

しかし学園カーストは皮肉なもので、○○が居なくても第2の○○、つまり××や△△が残っているものなのだ。

×「テメェ、○○が今日 居ないからってチョ付いてんじゃねぇぞ」

△「おい、パン買って来いよ。いつも通りお前の金で(笑)」

なんでこうなるんだ。

コイツらも…、

消してやろーか。

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気付けば、また僕は救いの社に来ていた。

巣「なんだ、○○ってヤツを消そうとしてもお前の周りは敵だらけじゃねーか(笑)」

僕「ここまで来たらイジメられてる僕に非があるのかもな?」

巣「まぁ少なくともあるだろうよ。イジメてるヤツが百パー悪いなんて、俺様は思わねーな」

僕「でも関係ないな。ここまで来たら1人も3人も同じだ」

巣「じゃあどうする?」

僕「消してくれ。××も△△も。僕を害する者は全員…、消す」

巣「わかった、ソイツらを巣食ってやるよ」

次の日、○○だけじゃなく、××と△△も学校に来ていなかった。

先「○○君、××君、△△君は皆 同じ病状らしいです。もしかしたら何かの感染症かもしれないから、皆も気を付けるように」

僕「やった…」

僕は完全に勝ち誇った顔をしていただろう。

この日の学校生活は中学生活 始まって以来の快適な一日となった。

僕「今日は最高だったよ。アイツらがいないってだけで、こんなにも幸せだとはね」

巣「そうか。ソイツぁー良かったな」

僕「ところで、この代償ってなんなんだよ」

巣「ん?まだ気付いてないのか…。まぁ今に分かるさ」

もう代償とやらは払っているのか?

巣「ところで今回はだれも消さないのか?」

僕「今日は――、いいや」

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次の日、僕はクラスで色々と感じることがあった。

普段からイジメられていたせいか、このクラスは僕に対してどことなく冷たいことに気付いた。

敬遠されていたのだ。

だれも昼飯時は仲間に入れてくれない。

陰で僕のことをバカにしていた男子。

こちらをチラチラ見ながら笑っている女子。

その中にはかつて好きだった娘もいる。

今 考えれば何で誰も助けてくれない、先生さえも。

なんなんだコイツら、このクラス。

ふざけんな。

結局、僕を救ってくれたのはアイツ、巣食い神だけだった。

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僕「クラスの生徒を全員、消してくれよ…」

巣「いいのか?後悔…」

僕「しねーよ」

言葉に被せるように僕は言う。

僕「気付いたんだ。僕が恨んでいたのはイジメていたアイツらじゃない。この世の中そのものなんだって」

巣「ずいぶんと大きく出たもんだな。そんなんだったらクラスと言わず、世の中の人間すべてを消したらどうだ」

僕「いずれね。今はまだアイツらだけで良いさ」

巣「…。わかった、ソイツら全員 巣食ってやるよ」

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母「あんた最近、どこ行ってるの?」

家に帰り、食事中に母さんが話しかけて来た。

テレビはアニメが付いており、「Dえもん」のやってる時間帯だった。

兄「コイツ、裏山に行ってんだよ。な?」

僕は応えない。

母「あら、どうして山に行くの?山菜取りでも始めたの?」

僕「別に良いだろ、何やってたって」

母「何よ。その言い方。心配して言ってんのに」

兄「大丈夫、大丈夫。コイツにも色々あるんだよ。なぁ?」

僕は応えない。

母「そうなの?大丈夫ならいいんだけど。って言うかあんた達、中学・高校にもなってアニメなんか見て…」

兄「他に見るものないんだ。まぁ、たまに見ると面白いじゃないか。色々思うところがあってさ」

母「何よ、思うところって?」

兄「例えばこのN太。俺はこのマンガの中で一番 性格が悪いのはコイツだと思うんだ」

何てことを言うんだ。

今の僕の心境に一番近いキャラクターはまさしく、このN太だっていうのに…。

僕「何でだよ。N太が一番ってことはないだろ。Gアンの方が悪くないってのか?」

僕は何故かムキになっていた。

兄「Gアンは悪いさ、でもN太ほど陰険じゃないだろ。Gアンは少なくとも自らの力のみでやってのけてる。それに対してN太は自分の力じゃあ何もしないし、Dえもんにすがり泣きついて他力本願。しかも力を手にした瞬間、イジメてたヤツを仕返しに行くんだぞ。実際にいたら最低の人間だ」

僕の心に兄の言葉が深く刺さる。

まるでN太は自分

Dえもんは巣食い神

Gアンは○○

そう言われているような気になってしまう。

僕「ごちそうさま…」

多分この男は気付いている。

気付いていてなお、こんなことを僕に言ってきているんだ。

そうだ、そうに違いない。

だいたい、救いの社に行けって言ったのは兄さんじゃないか。

ムカつく。

この家族もムカつく。

明日、消してやる。

巣食ってやる。

アイツら同様、

葬ってやる。

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次の日、学校に行くと、もう朝礼が始まる時間なのに誰も登校していなかった。

僕「馬鹿なヤツらめ。僕を怒らせるからだ」

ガラッと扉が開き、先生が入ってきた。

先「おぉ、来てる生徒がいたのか!良かった。今朝、電話がひっきりなしに掛かってきて」

チッ、コイツは確かに「クラスの生徒」には含まれないか…。

失策だった。

先「とにかく皆のお見舞いに行こう!ほとんどの生徒が総合病院に入院中だそうだ!」

そういえば僕は消してくれとは頼んだものの、アイツらが居なくなっただけで満足していた。

アイツらがどうなったのかという肝心なところが、抜けていた。

僕「わかりました」

気になった僕は二つ返事だった。

入院中だって?

もちろん見に行くさ。

アイツらが苦しんでるなら尚更だ。

そんなところを見られるなら、金すら払えるよ。

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病院に到着した僕と先生は、今日 入院した生徒達を見て回った。

入院 初日だっていうのに顔がやつれており、目の下のクマが皆 印象的だった。

そして全員が全員、同じことを口にする。

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『寝ると金縛りに遭うんだ』

『枕元に男の子が立ってる』

 

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このふたつ。

なるほど、これが巣食い神のやり方か。

「すぐに消えやしない」とは言ってたけど、体を巣食い、蝕み、散々 苦しめてから消してくれるって訳か。

復讐したい者からすれば最高だな。

僕「○○もこの病院に居るんですか?」

先「…。居るには居るんだが…」

僕「どうしたんですか?」

先「○○のヤツ、精神的に相当マズいらしくてな…」

それならば是非とも見てみたい。

僕「僕と○○とは友達なんです。友達にお見舞いに行かずには帰れません!」

僕は心にも無いことを言った。

先「わかった…」

僕と先生は○○のところに向かう。

扉の前に立ち、

そして扉を開けた。

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!!!

 

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僕はその場で腰を抜かしてしまった。

○○の容体は想像を絶するものだった。

冗談ではない、まさしく「死にかけ」だった。

身体はガリガリにやせ細り、

眼球は真っ赤に血走り、

目玉は飛び出しているかのようだ、

髪の色は白髪、

常に小刻みに痙攣しており、

「あっ、あっ」と、か細い声を漏らしている。

先「見なけりゃ良かったって思っただろ?悲惨なものさ、可哀想にな。医者(せんせい)も原因が全くわかっていないらしい。ただ、このままだと命の保証はできないんだとか…」

僕「へ、へぇ~。そうなんですか」

僕は顔が引きつっていた。

僕はここに居たくないと強く思った。

早急に学校に帰った後、この日は家に帰らされた。

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僕はとんでもないことをしてしまったのかもしれない、、、

まさか人があんな姿になるなんて、

想像ができなかった。

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巣食うとは――、ここまでやるのか

 

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…。やることは決まっている。

裏山だ。

あそこに、アイツのところに行くしかない――。

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巣「どうした?怖い顔して?」

怖いのはどっちだ。

正直、僕は今コイツに畏怖している。

でも言うしかない。

僕「あそこまで苦しんでるなんて、聞いてないぞ」

巣「あぁ、アイツらのこと見に行ったのか」

僕「僕は、ただ『消してくれ』って頼んだだけだろ?」

巣「心配すんな、時期に消えるさ。今、巣食ってる最中だ。それによー、」

僕「な、なんだよ」

巣「気持ち良かっただろ?」

僕「な!?」

巣「お前が消えて欲しいと願うヤツらがバンバン クラスから消えて、スッキリしただろ?」

僕「ふざけんな!」

巣「手に入れたら次から次へと使いたくなる、それが力ってヤツだ」

僕「僕は違う」

巣「お前だってそうさ。現に今までそうしてきただろ。それが代償なんだよ。復讐したい対象の身体を巣食うことにより、一時的にお前の心を救うと同時に、お前の良心を根っこから巣食うのさ。それが『巣食い神』だ」

なるほど、そーゆーことか。

確かに僕はどうかしていた。

こんなヤツに何かを頼もうだなんて。

そして何かに取り憑かれたかのように、人の不幸を楽しむなんて。

心を巣食われていた。

心だけじゃない。

足元すら掬われてる。

あともう少しで――、

家族までも消すところだったんだ。

巣「そうだ、今日は誰を消したい?先公か?それとも家族か?お前が望む人間を巣食ってやるよ」

僕「いい加減にしろ!皆を元に戻せ!」

巣「いいのか?元に戻して」

僕「な!?いいに決まってるだろう」

巣「アイツらをじゃない、元の生活に戻していいのかって聞いてんだよ」

僕「それは…」

巣「お前は俺に救われたいんじゃなかったのか?」

僕「僕は、こんなの望んでない…」

巣「元に戻す代償は――、『二度と力を使えない』ってことでもか?」

僕「あぁ。もう二度と、君には会わないよ…」

巣「じゃあこれからどうすんだよ。1人じゃ何にもできない軟弱モンの分際で!」

僕「…僕はN太じゃない」

巣「あぁ?」

僕「僕は軟弱者なんかじゃない。これからは君なんかに頼らなくとも、自分自身の手で解決してみせる」

巣「そんなことできんのか?」

僕「できるさ」

巣「本当だな?」

僕「あぁ」

巣食い神は強く、そして悲しそうな目をしていた。

なぜか僕は、目から涙が溢れて来た。

巣「後悔するなよ」

僕「後悔はしない」

巣「約束だぞ」

僕「約束だ」

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巣「わかった。お前を、アイツらを救ってやるよ」 

 

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次の日、欠席していたクラスのほとんどが学校に来ていた。

また次の日には××と△△が登校。

そしてその数日後、奇跡的に回復した○○は学校に来るようになった。

あれから僕のことを心配してくれた兄さんは、僕を誘って一緒に救いの社に連れて行ってくれた。

でもアイツはやっぱり現れなかった。

兄「ここな、」

僕「え?」

兄「昔 虐げられた人達が その無念を、祀っている神様に聞いてもらっていたんだとよ」

僕「あれ?魔除けじゃなかったっけ」

兄「だから心を痛めた人間が通ると、その者の理想とする『もう1人の自分』が現れて力を貸してくれるという伝説があったのさ。まぁ、所詮は言い伝えだけどな」

僕「ふ~ん」

兄「お前がもし、何か人には言えない嫌なことがあったのなら、神様に聞いてもらうのもいいかもしれないと思ってな」

兄さんはなんとも言えない、優しくも悲しい目をしていた。

そりゃそうか…。

学校は違えど、家族は家族。

僕のクラスの異常事態を耳にしてないはずはないんだ。

心から僕を心配してくれてる。

そんな家族を、僕は…。

僕「大丈夫。心配いらないよ」

僕らは帰り道を歩き出した。

僕「Dえもんが帰った時、N太は1人の力でGアンに勝っただろ?」

兄「やっぱりお前、イジメ…」

僕「一つ言っとくけどな、やっぱり一番悪いのはGアンだろ。いや、力を貸すDえもんも悪いな」

兄「はぁ?まぁいいや」

僕「ん?」

僕は後ろを振り返る。

なぜか視線を感じた気がした。

多分、気のせいだろう。

兄「どうした?Dえもんでもいたのか(笑)」

僕「そんなヤツいるはずないだろ。もう行こう」

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翌日

○「おい、サンドバック。今日の放課後、体育館裏に殴られに来いよ。なんか無性にムシャクシャしてんだよ」

退院した○○は、今までに増してイジメの度合いが酷くなっていた。

でも後悔はしてない。

僕は、もう二度とあんな力は使わない。

巣食い神。

君は死神なんかじゃない。

疫病神でもない。

僕にとっては、正真正銘の『救い神』だ。

君のおかげで自分の弱さを知った。

心の弱さを知った。

あんなことになるくらいなら、自分で手を掛けた方が百倍ましだ。

約束したろ?これからは君なんかに頼らなくとも、自分自身の手で解決してみせるって。

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僕は右手を大きく振りかざし、

思いっっっきり○○の頬をぶん殴った。

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