長編15
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大事な約束

ちょっと不思議なお話です。

ゾクリ系ではありません。ご注意ください。

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高校時代の3年間、弓子とは勉強から悪戯まで、何でも一緒にやる親友。

骨太のがっちりした体格は

昭和の<お母ちゃん>みたいで、クラスメイトからも『おゆみ』と呼ばれ親しまれていたし、私にとっても、自慢の大親友だったんだ。

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もっとも、部活は違うし、帰る方向も真逆。

登下校こそ違うのだけど、学校に居る時間だけは、殆ど一緒に過ごした仲。

そんな彼女は、高校卒業と共に埼玉へ就職のため引っ越してしまった。

私は、地元の短大に進んだ為、しばらくは互いに連絡も取れなかった。

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私が短大を寿中退?して、臨月の頃に姑との同居をやめ、貸家へ引っ越してから、やっと自由に連絡が取れるようになり、娘が産まれてから、割と頻繁に会うようになった。

今で言う<宅飲み>なんかも、結構やってたなぁ・・。

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そして、おゆみに紹介された彼氏は、元暴走族を仕切っていた総長なる人物だったらしい。

族を引退し、小洒落た喫茶店を経営してた。

お喋りも達者だし、穏やかで物事に動じない。

おゆみが惹かれたのも頷ける。

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おゆみも私も、ヤンチャ系ではない。

どちらかといえば、静かな方。

私に限っては、口悪いし態度デカいんですが。

共通項は、白黒ハッキリしないとイヤって事。

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ねぇ?沙っ羅~?彼、どう思う?

彼女が私を呼ぶ時、跳ねるように呼ぶ。

どう思うって、いいんじゃない?

そう答えた私だが、彼女が聞きたいのは世間体の事だった。

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ほらぁ~彼、昔だっていっても・・ねぇ?

少し困ったように肩を竦める彼女。

だぁ~からw んなの関係ないってば。

今もだったら、反対するかもしんない。

けど違うじゃん?頼りになりそうだし(^^

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甘く冷えたアイスココアのストローを噛みつつ、彼女の肩にデコピンを数回。

チラチラとこちらを気にしてる風な彼に笑顔を見せてみる。

ホッとした笑みを浮かべる彼女の表情で、彼も安心したようだった。

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注文もしてない軽食やドリンクが次々運ばれてきたのには少し驚いたけど。

程なくして、二人は籍を入れた。

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小さなアパートで慎ましく暮らす二人が、私は大好きだった。

二人の娘に恵まれ、私と同じように保険の営業をしたり、内職をしたり懸命に生活を支えてたんだ・・・。

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たまに私が泊りに行くと、彼、隆治さんも大歓迎してくれてね。

子供を寝かしつけカラオケなんかに行ったりもしてた。

ま。カラオケ屋の二階に住んでたから出来たんだけどね。

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保険の仕事してた関係上、自己契約もたまには必要だった。

お互いに入り合ったりもしたし、冗談だけど

「私に何事かあったら、旦那と子供よろしく頼むからねぃ」

そんな約束もしたりしてた。不謹慎だけどね。

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で、保険のセールス時代に、互いに夫には内緒にして年金に1本入った。

『自分の分、10万貯まったらハワイ行こう!』

「モチ!子供はダンナに預けて青春するぞ!」

私の口座だったが、半額負担で積み立ててた。

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ところが・・ある日。

すごく申し訳なさそうに電話が来た。

ねぇ。。さっらぁ~~あのさぁ~~・・

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何気なく「どした?積立キツイか?」と私。

驚きを隠すことなく、え~~!なんで?

なんで分かっちゃうの??と彼女。

~~~

彼女とは、どこかでリンクしてるかのようだったんだよね。

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電話が来る時は、呼び出し音が鳴る前に、

あ。おゆみだ。って何となく思うの。

で、ちょっと悪戯したくなったりしてね。

コール音がする直前に受話器を取って・・。

「へい!おゆみ~毎度どうも~」とか。

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どちらが電話を掛けた側なのか、判らなくなってる彼女と大笑いしたりしてた。

そんな事が、しょっちゅうあったの。

彼女が二番目の娘を授かった時もそう。

受話器取るなり「あれ?妊娠でもしたん?」なんてね。

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今は発信者が誰なのか当たり前のように表示されるけど、当時はナンバーディスプレイさえ無かった時代。

毎晩のように話してた。どうでもいいような雑談だけど、楽しかったの。

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・・・ある日。

いつものようにテレホンキャビネットの脇に座り込んで話してる時。

ねぇ?さっら~・・最近さ、頭痛いんだよね。

そんな事を相談?された。

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私は幼少時から、父親のマッサージを強制的にやらされていて。

適当にやると殴る蹴るされるから、いつも真剣にやっててね。

なので、結構ツボとか詳しかったりすんの。

ツボの名前は知らずとも、効果のある場所は知ってる。

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高校時代から肩が凝りやすい彼女の肩も、何度かマッサージしたよ。

で、セルフケア出来るツボ教えたりしてた。

そんな過去の裏打ちがあったからだと思うけど、身体の不調は、よく相談されてた。

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でも、その時ばかりは・・

ザワリザワリと音がするように、胸が落ち着かなかった。。

おゆみ?早く病院行きなよ。出来るだけ早く。

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かの有名な(胃に優しい)頭痛薬で何とか凌げるから、今はいいや。って渋る。

私は・・苛ついてた。意味なんてない。

いや。私自身の不安感が拭えないのが苛つく原因だったかもしれない。

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あのなぁ~?頭痛を甘く見んなよ?

凌ぎきれなくなったらどうすんだ?

道端で倒れたら、どうすんだよっ!

頼むから、すぐに病院行ってよ。

何でも無かったら、それで安心出来るし。

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珍しく、低く怒気を含ませた私の言葉の数々

縋る様に頼みこむ言葉の数々に、彼女は約束してくれた。

GW終わったら、すぐ受診するって。

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GWを目前に控え、二人の娘に東京タワーを見せたいんだと言っていた。

隆治さんの休みも、やっと取れそうだし。と。

イヤイヤ。その前に行ってくれって。

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何度も何度も、本当に何度も何度も頼んだ。

泣きそうになる程、何故か不安に潰されそうで堪らなかった。

今すぐは無理だけど、ちゃんと行くよ。

沙羅と約束したら、破れないもんねぇw

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その言葉に・・・私は渋々承諾した。

必ず。。必ずだよ?

零れ伝い落ちる涙交じりの私の声に、おゆみは笑って言った。

うん!ちゃんと受診する!

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・・・・・・・・

そして、GWの半ばに私の携帯が鳴った。

~~~

当時は、カケホなんてないし料金高いし。

仕事以外で使わない携帯だったのに。

表示された番号は、おゆみの携帯だった。

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ん?何だろ?緊急事態?保険の崩し方か?

頭の中は疑問符で一杯。

が、通話ボタンを押して聞こえてきた声は・・

おゆみではなく、隆治さんだった。

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「沙羅さん・・。」

いつも、さん付で呼んだりしない隆治さん。

胸に湧き上がる嫌な、何とも言えない感覚。

それらを、払拭するように明るく対応する。

「お~!隆治さん?珍しいねぇ?どした?」

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・・沙羅さん。実は弓子が倒れて・・。

え?おゆみ、胆嚢炎再発したん?

払拭しきれない感覚を脇に追いやり、無理矢理言葉を紡ぐ私。

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・・いえ。弓子が今・・意識不明で病院に居るんですけど。。

医者から、会わせたい人いたらって・・。

~~

たった今、聞いた隆治さんの言葉が、どこか遠くで聞こえてるようだった。

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その後の会話は、正直あまり定かじゃない。

ただ、病院名だけを聞いて隆治さんに心をしっかり持ってと伝え、すぐに向かうと告げたはずだ。

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まだ私がパニックを起こさず電車に乗れた頃だ。

駅までは、車をぶっ飛ばして行った。

駅に着いたところで、意外な人物から声を掛けられた。

前作の『新居に・・』のエリだ。

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あれ~~?沙羅ちゃん?どっか行くんですか?

エリは保険屋の後輩だ。

口早に、おゆみの生年月日やフルネームを伝え、どの保険が生きてるか、失効間近なら私がすぐに入金するから、営業所に戻って調べて。

と告げ、駅の階段を駆け上がった。

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そこから、暫し記憶がない。

生まれつき方向音痴のくせに、ちゃんとアパート近辺まで辿り着いてた。

だが、病院名は聞いたものの、どこにあるかなんて聞かなかった。

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駅前のロータリーでタクシーの運転手の人に聞いた。

この病院、すぐに行きたいんだ。と。

タクシーさんは、何か口々に訳の解からないことを言っていたが、一人だけ乗せるって言ってくれた。

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姉ちゃん?俺にも、姉ちゃん位の娘がいるんだよ。

だから他人事とは思えなくて乗せたんだ。

ちょっと遠いから、みんな電車使えって言ってたけどさ。

メーター、上げないでおくよ。

飛ばすからね。ちゃんと摑まってなよ?

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確か、そんな事を言ってくれたんだった。

そのタクシーさんの心遣いが嬉しくて泣けた。

車を降りる時の言葉は覚えてる。

姉ちゃんの友達、絶対助かるよう祈ってる。

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走り去るタクシーに深々とお辞儀をして、周りを見渡した。

・・だからみんな乗せたくなかったんだな。

その病院、駅の改札を出て目の前だったの。

電車で行った方が安いよ。って言ってたのか。

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そんな事を、ボンヤリ頭の隅で理解しながら病室を目指す。

病院内は走っちゃいけない。なんて、この際無視して走った。

息を切らして病室の入口に立ったワタシ。

そのまま動けなくなったワタシ。

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おゆみは静かに寝かされていた。

恐らく、変な電極みたいなのを外したら、そのまま逝ってしまうのだろう。

立ち尽くしてる私を見つけた隆治さんは、私を見るなり廊下の端へと誘導してくれた。

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沙羅。来てくれてありがとな。

俺さぁ、情けない事に弓子の友達って沙羅しか知らなかった。

他にも友達いる筈なのに、連絡しようがなくてさ。どうしよう?

連絡は、私が取るよ。高校時代の友人と職場の友人は任せて。

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力なく頷く隆治さんに、学校や保育園関連はお願いした。

~~

そして、何故おゆみが・・こんな事になったのかを聞けた。

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倒れた日。

こないだ言ってたように、家族揃って東京タワーを見に行ったらしい。

車は持ってなくて、隆治さんと二人で子供達を世話しながら電車や徒歩で移動したんだって。

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結構、夜遅くに帰宅。

疲れてた隆治さんは、子供達とシャワーで風呂を済ませた。

でも、おゆみは・・・。

『疲れた時こそ湯船でゆっくりしないと』

そう言って、入浴したんだそうだ。

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弓子が入浴して、俺が煙草を吸い終わった頃。

物凄い叫び声が風呂場から聞こえたんだ。

「ぎゃぁぁぁぁぁぁぁ~~~!!!」って。

俺、あんな叫び声、産まれて初めて聞いたよ。

族に居た時だって聞いた事ない叫び声だった。

で、風呂場のドアは施錠されてたけど、蹴破って駆け付けたんだ。

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そん時には、あいつ。もう息してなかった。

とにかく、浴槽から抱き上げて救急車呼んでさ人工呼吸とか出来る限りのことしたんだよ。

119で指示されながら、その通りやったんだよ。

でも、いくらなんでも弓子の裸、見られたくなくてバスタオル掛けたけど。

到着するなりタオル取りやがって、結局見られちまった。ハハハ・・・。

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色んな事を、思いつくまま話してるんだろう。

乾いた笑いで頭を抱えたまま、壁に沿ってズリズリと座り込む。

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なぁ沙羅。理不尽じゃね?

同じ、クモ膜下でも助かるやつだって、スゲーいるじゃんよ?

なのに、なんで弓子は助かんねぇの?

あんなメッチャ細い血管1本で、死ぬん?

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隆治さんの声を聴いてたけど。。

『死ぬん?』の単語に反応してしまった。

俯いて座り込んだままの彼の胸倉掴んでね・・

死んでねぇし!訳判んねーし!!

って、グーパンで何度も殴り倒したんだよね。

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唇の端に滲む血を腕で拭いながら、まだ言うんだよ。

・・助からねぇって医者がさ。って。

嘘だ!嘘だっ!おゆみは死んだりしない!

私のグーパンも平手打ちも、よける素振りさえ見せずに殴られるままの彼。

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その姿に・・私は。。

本当に居なくなってしまう事を信じるしかなかった。

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その日から、私は毎日のように片道3時間かけ、

何本も電車を乗り継いで病院に通った。

なぁ?おゆみ。逝くなよ?まだやり残した事あるよね?

上の子の入学式は見れたけど、下の子は来年だぞ?

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日参しては話し掛け続け、髪を洗ったり体を拭いたりしてたんだ。

実の母親さえ、おゆみの世話しなくてさ。

一通り清潔にしてから時間が許す限り、手を握っておゆみに話しかけてた。

時々、おゆみが手を握り返すこともあった。

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意識のないまま握り返すのは、別に意識が戻ってきた訳でもないらしかった。

およそ2週間ほど通っただろうか。

おゆみの母親から電話があった。

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沙羅さん。さっき静かに弓子が・・随分頑張ったんでしょうけど・・亡くなりました。

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・・何も言えず切ってしまった電話。。

私ね、この時まで自分に特殊なアンテナがあるんだと思ってたの。

大切な人に、何事かがあれば察知できるようなアンテナがね。

でも、何も察知出来なかった。

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ホントは、私にアンテナなんて無かったんだ。

今までは、偶然だったんだ。きっと。全部。

もうね、そっから頭の中グチャグチャ。

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おゆみ母の言葉、亡くなりました。とかさ、隆治さんの、理不尽じゃね?とかさ。

グルングルンに頭の中で駆け巡るの。

高校時代の事や、最近の事もゴチャ混ぜに。

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そして通夜の晩。

おゆみ母、兄弟、隆治さん。みんなに頼まれ、

家族でもない私が最後の化粧をした。

おゆみが好きだった、私の口紅の色で。

おゆみも欲しがっていた、私の安物の指輪。

そして通夜の線香守りもした。

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翌日の葬儀は、見たことが無いほど質素だったなぁ。

まだ、亡くなったことが実感できずにいた。

荼毘に付されるとき、初めて我に返った。

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棺が乗せられたカートを、重々しく窯に入れられようとした時に、初めて泣いた。

やめてっ!!ヤダっ!おゆみっ!おゆみ!!

死んでなんかない!焼かないで!おゆみっ!

手すりから身を乗り出し、手を伸ばし叫んだ。

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両サイドに居た高校時代の友人が、崩れ落ちる私を支えてくれた。

絶叫と一緒に溢れ返る涙。

どれほど泣いたのか判らない位泣いた。

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その後、誰に話しかけられても反応すらできず。

誰かが私に手を貸してくれ、集合場所へ行ったりする。

その日から私は、もぬけの殻だった。

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夜な夜な、来る筈のない電話を待って、キャビネットに寄りかかり体育座りしてる。

パパの仕事の電話が入って、がっかりする。

(・・は。。来る筈ないもんな・・)

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体育座りしながら思い出すのは、最後の言葉だ。

『すぐは無理だけど、ちゃんと病院行くよ~。沙羅と約束したら、破れないもんねぇ』

~~

~~

ん。GW終わらないうちに逝っちまったもんな。

約束破ってないよね。ねぇ?おゆみ・・。

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なんで一人で逝っちゃったんだろ。

どうして、何も報せず逝っちゃったんだろ。

ねぇ?おゆみ。なんで私を連れてかなかった?

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ブツブツと毎晩のように、電話の脇で独りごちる。

虚無感と、脱力感と、ほんの少しの怒り。

なんで?どうして?なんで?どうして?

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そして一周忌がやってきた。

高校時代の仲良しグループの一人と二人で出掛けて行った。

まだ私は、悲しみから抜け出すことも出来ずにいたっけ。

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金銭的に余裕がないということで、ご住職がアパートまで来てくれて法要をしてくれた。

私は、そのお坊さんに聞きたかった。

悲しみから抜け出すには?と。

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ご住職のしてくれた話は、こうだ。

人ってのはね、生まれてくる時に、宿題を持って生まれてくるんですよ。

その宿題が終われば、『死』がくるんです。

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宿題とはね、魂の宿題であって現実世界で、やり残した事ではないんです。

貴女が言うように、小さい子供を遺してってのは、現実世界でのこと。

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あまり悲しみに囚われてはなりませんよ?

ご親友を失くされた事は、確かに残念でしょうけれど、親友ならば尚の事、笑顔で送って差し上げてください。

『宿題、終わって良かったね』と寧ろ喜んで送ってあげたら良いのです。

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私は自分も一緒に逝きたいと願ったと話した。

ご住職は、この上なく優しく慈悲深い瞳をし、

貴女は、まだ宿題が残ってます。だから死はやって来ません。

途中で投げ出してはなりませんよ?と言った。

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その言葉に、少なからず救われた気がした。

来ない筈の電話を待つ事もしなくなった。

おゆみが安心して次のステップに進めるよう、願うようにもなった。

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けど・・潜在意識の中で、私はやはり引き留めようとしてる事にも気付いたんだよね。

しょっちゅう夢を見る。

おゆみを抱えて、病院のガラス戸を叩いてる。

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おゆみ!しっかりしろ!今、助けるから!

誰か!お願いです!ここを開けて!助けて!

死ぬな!おゆみ!まだダメだかんねっ!

・・なのに、彼女を毎回助けられない。

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そんな夢を・・・見てしまう。

シチュエーションは違えど、毎回助けられない結末を迎える。

彼女の名を叫んで、泣きながら飛び起きる。

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追悼の意味を込め高校時代の友人達と、カラオケに行ったことがある。

おゆみの好きだった曲を歌うため。

その時、私以外の全員に言われた。

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おゆみと沙羅って、ウチらと少し違ってさぁ~

何か怖かったんだよね。って。

キャーキャー遊んでるのを、沙羅たち二人は笑顔で見ててくれるんだけど、何ていうのかな?

クールっていうか、どこか大人びて見えて怖かったと。

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だから、おゆみの葬儀の時ね、沙羅の取り乱す姿、予想もつかなかったよ。

意外と熱いんだなぁ~って思ったって。

でさ。おゆみも同じで、ちゃんと夢枕に立ってくれたんだよね。

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一同が、うんうんと頷く。

みんな同じように、笑顔で手を振る姿の夢を見ていたらしい。

私一人・・・・頷けなかった。

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(私が、ちゃんと自分の中で認められないからかな?だから夢も悪夢なんだ)

そんな事を思うようになった。

とんでもなく、寂しかった。

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そんな日々の中、珍しく隆治さんから電話が来た。

最近、色々悩み事があるという。

愚痴から、相談まで、毎回内容は結構深刻。

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下の子の入学を控えて、仕事しながら学校の準備がとんでもなく大変だという。

で、私思い出したんだよね。

(あ。二人で積み立ててたヤツあるよね)

おゆみがキツイって言ってから、私が一人で積み立ててたんだけど、きっと喉から手が出るほど欲しいはずだ。

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すごい勢いで遠慮する隆治さんだったが、何が何でも送金するって言い張って受け取ってもらったの。

入金確認後、下の子のランドセル買えたって報告があって嬉しかった。

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いつだったか、再婚を考えてる。って内容の時、私は私じゃないような感覚で話していた。

「隆治さん?子供達の為に幸せになってよね。ずっと見守ってるから」

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弓子、怒ったりしないかなぁ?と聞いてきた隆治さんに・・

お~っこる訳ないじゃ~~ん?なぁ~んで私が怒ると思うかなぁ~もぅ!

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隆治さんと二人同時に「「え?」」ってなった。

彼は少し焦ったように言った。

な、なんか今の話し方、弓子っぽかった。

私も、何故『私が怒ると・・』って言ったのか解からなかった。

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結局、おゆみも子供や隆治さんを心配してんだよ~って話を締めくくったんだけど。

そこからどの位経ってからかな?ウチに葉書が届いた。

私達、結婚しました。って写真入りの葉書。

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二人の子供を挟んで、隆治さんと、知らない女性が座ってる。

・・・そっか。再婚したんだね。

一抹の淋しさがあったけど、これで少しは安心すんのかな?

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その葉書が届いてしばらくしてから。。

夜遅くに電話が鳴った。

私は、もう電話を取る気にもなれなかった。

旦那に促され、渋々受話器を持ち上げた。

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「・・・はい。」

『ジ…ジジ…ジ沙っ羅~?約束守ってくれたね。センキュ~…ジ…ジジジ』

古いラジオから聞こえるような雑音に交じり、あの跳ねる様に私の名を呼ぶ声。

・・そして無音になり、切れた電話。

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もう、何の音もしなくなった受話器に「うん」

と返事をした。

旦那は、誰から?って聞いてきたが無視した。

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その夜だったかな?夢を見た。

~~

私は、坂の上に立ってた。

天気は眩しいほどの良い天気だった。

ふと、坂の下に人影を見つけたんだよ。

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スカイブルーのブラウスに、黒いスカート。

そして、黒いパンプス。

・・おゆみの棺に私が入れたものだ。

まだ、値札も外してない新品。

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「パパはねぇ、スリムな女の人が好みだから、ダイエットしてんの♪痩せたら着るんだ」

私が泊りに行った時に、そう言って買った服。

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坂の下の人影は、正にその服を着て私に大きく手を振った。

私も、思い切り大きく両手を振った。

人影の指に反射した光が、キラッと光った。

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******

ねぇ、おゆみ?

私が約束を果たすの見届けたんだね?

旦那と子供、ヨロシクしたよ。

誉めてよね。

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ともすけさん(@@;
こちらまで来ていただいて!!!

本当に、ともすけさんの優しさが身に染みてきます。
私なんぞ、コメ返が前後したり、なかなか出来ずにいたり
あっちゃこっちゃで書いてるので、見習わないと~~(^^;

私も、頑張って生きていかないと!!
いつも、ありがとうございます(*^^*)

さえちゃ~~ん♡

コメありまチュッ(*'ε`*)チゥ
そうだといいな~って思ってます(^^)
再婚を機に、隆治さんとは連絡も取ってないんですが、
下の子も、もうとっくに20代半ばですね。

もしかしたら、既にお嫁に行ってるかも♪

沙羅さん、こんばんは!
すみません。感想を言いたいのですが… 涙、涙、涙しかありません。
人間の持つべき心、友情、愛、信頼、怒り、悲しみ、笑い、助け合い… 改めて思い知らされました。
おゆみさん、きっと天国で幸せに暮らせています!
だって沙羅さんが今こうして、おゆみさんの分まで生きていらっしゃるのだから!
そして、おゆみさんのご冥福を心よりお祈りします。
悲しくも、温かな話をありがとうございましたm(_ _)m

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まりかちゃん♪
朝からブルーにさせてしまって、申し訳ないm(__)m

しばらく前にね、ある人から指摘されたの。
『沙羅っちは、感情を表に出さずに淡々と事実だけ書いてるよね』と。
それで、何か納得したのよね。

ずっとずっと生きてきて、感情出さないようになったのは、すごく昔。
だから、同級生にまで『クール』とか言われてんのww

で、今回は出来るだけ話し言葉で書こうと思ってね。
いつもと文章が違うことに気付いた方々もたくさんいるかな?
リアで話す時も、私前置き長いんだけど、やっぱその癖が抜けないわ。

グダグダにいつも付き合ってくれてありがとね。

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沙羅さんいつも楽しく読ませて頂いてます。
私も若くに亡くなった友達が夢でもいいから会いに来てくれないかなっていつも思っています。
でも出てきてくれないんですよねー。
沙羅さんのお話を読ませて頂いて涙が止まりません。
沙羅さんのお話しが大好きででも読めばお父様の暴力など色々心が傷む話しが多いです。それに親友が亡くなった話しを読んで生きる事を諦めない沙羅さんが大好きです!
私も今夜あたり親友が夢に出て来てくれたらいいなって思いながら読ませてもらいました。
沙羅さんは心が強い方なのか弱い方なのか…色々考えてしまいます。
でも強いんですよね。
お子さんもいらっしゃるし、強くいられるんですよね。
よく分からないのにずらずらと勝手な事ばかり書いて申し訳ありません。
ただ、私も親に見離されたり親友を亡くしたりしましたが沙羅さんの様には出来ませんでした。
長くなってすいません。

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紫音ちゃん。
泣かしてごめんよ。

そんなことがあったんだね。。。
苦しいよね。
でも、今もLINEで連絡取り合ってる姿、きっと見てるよ。
お父さんも、お姉さんも、次の宿題に取り掛かる前の小休止をしてんじゃないかな(^^

頑張ってきたから、少しゆっくり休んでもらおうよ。
いつか会える日が、また来るからさ。

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うちの父親が急性心筋梗塞で倒れ大学病院のICUに入院してる時に急性クモ膜下出血で倒れて、うちの父親が亡くなる数日前に亡くなった従姉妹の姉ちゃんの事を思い出して・・・泣いた。

姉ちゃんとはたまに電話したりLINEで連絡先を取り合ってたんよ。

今でもそのLINEの個チャで、姉ちゃんの旦那さんとお互いの事を報告したりしてるよ。

ねえ、沙羅ねえ・・・姉ちゃんは、うちの父親はちゃんと上にいけたかな?

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