中編3
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わたしだけ

わたしは昔、病院跡に作られたと噂の団地に住んでいた。

また小さい頃から不思議な子として有名だった。

独り言が多く、あまり泣かない静かな子だった。

不思議ながら5歳以下の記憶はなく自分でもないのでそうなのかな?と時々疑わしくも思う。

なんせ今はムードメーカー並みに煩いと言われるほどであるからだ。

母から聞いた話をそのまま話そうと思う。

団地に住んでいた頃、わたしは一人遊びをよくしていた子だった。

一人遊びというよりかはまるで誰かと遊んでいるかのようだったと母は言う。

母と話す時も目は合わず、母の斜め上をずっと見ていたり、団地の子供にはいない子の名前を話したりしていたという。

わたしは3姉妹の真ん中っ子でもともと人にあまり覚えてもらえなかった経験があった。

過去の話はここまで、

ここからは最近考えた自分の考察である。

母方の祖父が亡くなった。

親戚や家族がたくさん集まった。

わたしの家族はお悔やみを貰う受付の係だった。

姉は「社会人になったのよねもう、早いわね。」

と声をかけてもらえる。

それはそうだ、母の一番初めの娘なのだから

親戚の記憶も濃いはずだ。

妹も「もう高校生?!この間まで赤ちゃんだったのにね。」

と声をかけてもらえる。

母方の祖母が亡くなった時、小さかった妹は

それはそれは親戚から可愛がられていた。

そしてわたしは何も言われず親戚は葬式会場へと

向かった。

それほど気にしていなかった。

なにせわたしも親戚を覚えてはいないし、

お礼をわたすことに専念していたからだ。

でもある疑問がうまれた。

わたしが覚えていない小さい頃の記憶を

親戚が知っているはずはない。

けれどわたしは小さい頃、ちゃんと

存在していたのか

変な話ではあるがわたしは小さい頃の

記憶はない。なぜそこまで自分の存在を疑ったのかも自分でもわからないが、たまらなく不安になったのだ。

祖父、祖母がいなくなったため、帰省する意味を

なさなくなった実家は、母の兄夫婦の家となるため

不要なものを片付ける作業があった。

「懐かしい〜」

母は姉がうまれた時の写真を眺めて微笑んでいた。

初めてのお風呂、初めての離乳食。

初めてのことで初々しく、また喜ばしく

綴られた母の字は嬉しさをにじませていた。

次に見つけたのは妹のアルバム

これまた丁寧にまた姉の時とは違って

手慣れた感じはあった。また枚数は少し

少なかったと思う。

「ないわね」

わたしのアルバムだけ見つからなかった。

見たかったなぁ

という思いよりは

何でないんだ

という不安を増幅させていった。

多分その時の顔が凄まじく、

めんどくさがりの母は珍しく

探そうと提案してくれた。

二階建ての広い実家をくまなく探し続けた。

母がアルバムを見つけた。しかしアルバムの中は

光で褪せて白くなってしまった写真以外は入っていなかった。

ところどころ亡くなった写真の捜索もした。

しかし見つかったのは神様を祀るためにあった

ちいさな仏壇の裏側だった。

わたしの顔だけ色褪せてて何も見えなかった。

そして

わたしの写真にはきまって

端の方に何かで焼けた跡があった。

その中には

人の顔を思わせるような

不気味な笑顔を浮かべた子供の顔のような

焦げた跡もあった。

わたしは、小さい頃の記憶を

ないものでよかったのかもしれないと

そう思った。

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