中編5
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むかしむかし 的な

 むかしむかし、あるところに老夫婦が山で自給自足の生活をしていました。

 ある日、どこかの山から追い出された若い娘がこの老夫婦のところへ流れてきました。

「追われているの、たすけてください」

 それを見かねたおじいさんはその若さと美しさにひと目で惚れてしまい、「あっしにまかせろ!」と自分の胸をたたいて見栄をはりました。

 家に連れて帰り、扉の隙間からのぞかせると、婆さんはまだ川から戻ってきていないようでおじいさんはその娘を家に入れ、このあとのことを考えました。

「婆さんにどう説明したらいいんじゃろうか・・・」

 悩み悩み、結局考えが浮かぶままおじいさんは寝てしまいました。

 娘さんはおじいさんを寝たのかどうかを確認を終えると、おばあさんを探しに外へ出ていきました。

 絹を裂くような声がしました。

 おじいさんはその叫び声に驚きその場へ駆け出します。

 声の方角はどうやら川で、おばあさんがよく川で選択しているところでした。

 川には赤い血が上流から流れて来ていました。

 おばあさんが危ないと悟ったおじいさんはおばあさんを探しに歩き出しますが、ふと娘さんのことも気になりました。

 目が覚めたとき、部屋には娘さんの姿はなかった。

 逃げてきたといっていた。

 だれかの叫び声が聞こえてきた。

 それを察したおじいさんはおばあさんの行方を捜しました。

 けれども、日が落ちてもおばあさんの姿は見当たりません。

 見知っている山とはいえ、日が落ちてしまった山はとても危険です。

 もしかしたら戻っているかもしれないと思い、家に戻りました。

 家に帰ると、そこには娘さんだけが料理をして待っていてくれていました。

「おや、まあ、食事を作ってくれるなんてすまないね」

「いえ、きえたおばあさんの代わりです」

「すまないね」

 出された食事はお味噌汁、米の泡、わずかな漬物、細く小さな魚。

 娘さんが微笑みながらその食事をいただき、味わっていただく。

 そのとき、扉からドンドンと音がした。

 娘さんは顔が青ざめていくのが見えました。

 おじいさんは娘さんが追っ手がここに来てしまったのだと思い、奥の部屋へ隠れているように促しました。娘さんはそのまま家の奥へいき隠れました。

 おじいさんは扉を開けました。

 そこにいたのはびしょ濡れたおばあさんの姿がありました。

 おばあさんは部屋に入るなりこう言いました。

「あの娘はどこだい?」

 おじいさんは答えました。

「どんな子だい?」

 おばあさんは詳しくその姿を説明しました。

 奥の部屋にかくまっている娘さんそのものの姿と同じだと悟りました。

 しかし、あれだけの美しさだ。

 おばあさんに教えてもらったら娘さんは殺されてしまうか、それとも追い出すのか、それとも追っ手を招くのか、嫌な予感が湧きます。

 回答に答えられないおじいさんを見かねたおばあさんは大所にあった包丁を持ち、おじいさんに向けながらこう言いました。

「白状しなさい! さもなければ殺すわよ!」

「ひぃぃぃぃぃ」

 おじいさんは渋々答えました。

 包丁をもったおばあさんは奥の部屋にはいかず、おじいさんを脅しながら家の外へと連れ出しました。

 包丁をおじいさんの背中に向けながら「速く走れ!」と、急かしながら家から遠ざかっていきました。

 薄暗い森の中でおばあさんは包丁を川に捨てるなりおじいさんに謝りました。

「なぜこんなことをしたんだ? それに、いままでどこにいっておったのじゃ?」

 おばあさんは涙を流しこぼれ落ちる声をゆっくりと口を開き、教えました。

 ”あの娘に殺されそうになった”

 と。

 そんな馬鹿なとおばあさんを否定しました。

 けれども、長年付き添ってきたおばあさんがそんな嘘を言うはずはありません。ならば、あの流れものの娘さんがおばあさんを殺そうとしたのかと恐怖に包まれていきました。

 遠く光る家を見つめながらおばあさんは静かに吐くようにいいました。

「先月、山に降りるときがあったの。そのとき、聞いたの」

”山に住むモノノ怪が人を騙し、人を喰い、人を積む。残されたのは人が作ってきたものを根こそぎ奪っていく”

と、その内容がもし、本当であったのであれば、あの娘さんがモノノ怪なのかもしれない。

 冷静にそう考えながらいると、「みつけましたよ」と、林のどこからか声がしました。

 ビクっとなってその声をたどると、そこにいたのは恨めしそうに見つめながら包丁をもった娘さんの姿がありました。

「探しましたよ。気づけばおばあさんもおじいさんの声もしないし、いないし、どこに行ったのかと探しましたよ。まさか、私の正体に気が付くとは思いませんでしたが、ここで片付ければ全て良しですわ」

 と、まるで先ほどまでの美しさはどこにもありませんでした。

 口から牙をむき出し、長い舌を腰の高さまで下ろし、帯のようにクネクネと腕を振り回しながら包丁を握った手でもう逃がさないという気でおじいさん達に向かってきました。

 おじいさんは目をつむります。

 そこにおばあさんがおじいさんの代わりにかばいました。

「あらあら、夫婦仲は満点ですこと、しかしながらかばっても逃げても私の手からは逃れませんは」

 と、おばあさんの背中から包丁が飛び出し、後ろに居たおじいさんに貫きました。

 ちヘドロを吐きながらおじいさんはその場に倒れました。

 おじいさんは悔しそうに涙を流しながら倒れていました。

 どうやら、突き刺さった部分が悪かったようで、すこし悔しそうに娘さんは笑っていました。

 おばあさんは後悔しました。

 包丁を川に投げ捨てなければ、いま、ここで娘・・・いや、モノノ怪にも返り討ちできたのかもしれなかった。

 おばあさんは口元で笑いながら娘さんに睨みつかせながらこう言い放ちました。

「私には大事なものがある。あなたにはない。なくて、モノノ怪になった。私たちは大事なものがありながら終わるが、あなたは大事なものでさえ触れることなく終わる。それは、あなたの――――」

 最後のところで、娘さんは貫いたおじいさんから包丁を回収し、後ろからさらにおばあさんの胸に貫いていました。

 どういうこと? あの2ヒトは大事なものをもって死んだ。 私はなにも得ずに終わる?

 娘さんはわからないまま、老夫婦が暮らしていた家を後にして再び山の中へと姿を隠しました。

 老夫婦が発見されたのは翌週のことでした。

 おばあさんの友達が約束の日になっても現れないとに心配し、山へ来ていたのでした。

 家は蛻の殻であるのは、手紙のようなものだけが書き残されているだけでした。

 その手紙にはこう書かれていました。

「再び姿を現すときは、この手紙を手にとったあなたに会いましょう」

 と、その友達はその手紙をそこに置いたまま家から飛び出しました。

 その途中で老夫婦の遺体を発見したのです。

 つづき?

 その友達も食われたのでした。

 これで、よろしいかな。

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