【十物語】最終夜 消えない血痕

中編6
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【十物語】最終夜 消えない血痕

何年前になるのかなぁ?

かれこれ十数年前にはなるかな?

当時、付き合ってた彼女と結婚を前提に同棲することになってさ。

俺は神奈川、彼女は千葉。

家を探すのも、彼女は地元の千葉を出たくないらしくて、俺は職場がちょっと遠くなるけど千葉で家を探すことになって。

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彼女の実家から、あまり離れてないトコに条件のいい物件を見付けて申し込んだんだ。

間取りは2LDKで、マンションタイプ。

家賃は8万くらいだったかな。

二人で住むには十分な広さだったし、築30年ちょっとだけど綺麗だから彼女が気に入ってさ。

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でもまさか、住み始めて間もなく怖い思いをするとは、まだこの時は思ってなかった。

不動産屋の告知義務って、事故があった次に入居する人には告知しなきゃならないけど、その次の人からは聞かれない限りは告知する必要がない、っての、知ってた?

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それってさ、考えてみたらズルいよな。

事故物件でも知らないで入居する、ってことじゃん?

霊感バリある人を呼んで鑑定してもらわない限りは、霊感ゼロ人間じゃ見抜けないし。

俺と彼女が借りた部屋も、結局は事故物件だったって後で判明したんだ。

まぁ、判明するまでメッチャ怖い思いをしたけどね。

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事の発端は、二人で住み始めた初日に俺が風呂に入ったときのこと。

わりと広めの風呂場だったんだけど、シャワーのある壁の湯船があるのと反対の右隅に、赤い斑点っていうか、汚れを見付けたんだ。

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部屋を見学した時に気付かなかっただけかもしれないけど、指で擦ってみたらちょっと落ちにくい感じだったけど、風呂用洗剤使ってタワシで擦れば落ちそうだな、って思って洗ってみたら綺麗に落ちたから、その時は「あぁ、なんだ」って感じだった。

入居する前に部屋のクリーニングしてくれるだろ?

汚れの見落としかな、くらいにしか思わなかったんだよ。

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でも、翌日めちゃくちゃビビった。

仕事から帰宅して夕飯前に風呂に入ったら、昨日落としたはずのあの赤いシミっていうか、汚れが復活してて。

なんで?って思って、また洗剤使ったらすんなり落ちるんだよ。

なんか、気味悪くなってさー。

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そんなことが毎日続いて、彼女に話しても「水垢とかじゃないの?」って取り合ってくれなかった。

ある時、彼女が仕事からの帰りが遅くて俺一人で夕飯食べて風呂に入ったんだ。

その日は、スゲー疲れてて、つい湯船でウトウトし始めちゃったんだよね。

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そしたら、湯船から<ゴポゴポ…ッ>っていう、こう、お湯の中から気泡が浮いてきて弾けるような音?っての?

いや、俺が湯船でオナラしたわけじゃないよ?

けど、そんなような音でハッと目が覚めてみたら、湯船に張ってあるお湯が血みたいに真っ赤になってて。

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「えっ!?」て固まってたら、ゴポゴポ上がってくる気泡が激しくなってさ。

そしたら、真っ赤に染まったお湯の中から女の顔がスーッと浮いてきて、長い髪がお湯の中に広がってさ、顔が水面に出たと思ったらカッ!と目を見開いて俺を見たんだよ。

もう、パニックだよね。

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たぶん、スゲー悲鳴上げて湯船から上がったと思う。

「思う」ってのは、俺、途中で気絶したみたいで、仕事から帰ってきた彼女に介抱されて目を覚ましたからなんだ。

彼女の話だと、リビングで腰にタオル巻いたままの姿で倒れてたらしい。

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彼女に風呂で起こったことを話したんだけど、「寝惚けてただけだよ、きっと」って一蹴されちゃったよ。

現に、彼女と風呂場を覗いたら、お湯も普通に透明だったし、女の姿も当然なくて。

「あれー?」と思ったけど、そのまま何日かが過ぎた。

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復活する血痕みたいな汚れは相変わらずだったけど、落とせば気にならないし。

そんなこんなで、3ヶ月くらいが過ぎようとしてた時に事件は起こったんだ。

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同棲してた彼女、元々長風呂な方だったから、なかなか上がってこないのは気にならなかったんだけど、さすがにその日は2時間近く経っても上がってこなくて、「逆上せて倒れたりしてないだろうな?」と思って風呂場まで様子を見に行ったんだ。

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「おーい、あんまり長風呂しすぎると、ふやけちまうぞー」って声かけながら風呂場を覗こうとすると、けたたましい笑い声が急に聞こえてきてさ。

「キャハハハハッ!」

こう、まるではしゃぐような声だった。

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「なに?なに?」と思って風呂場を覗くと、服を着たままの彼女が風呂場にいて、彼女が眉の手入れに使ってたカミソリで自分の手首を何カ所も切って狂ったように笑ってんの。

もう、湯船のお湯は彼女の血で真っ赤。

慌ててカミソリ奪って、「しっかりしろ!」って頬を打っても、けたたましい笑いは止むことがなくて。

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タオルで止血して、携帯から救急車を呼んで彼女を病院に運んだよ。

幸い、出血は酷かったけど命は取り留めて、暴れるから鎮静剤打って眠らせたって医者から聞かされたんだ。

翌日、改めて様子を見に行ったら彼女、別人になってた。

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虚ろな表情で俺を見つめたかと思うと、いきなり「殺してやる!ぶっ殺してやるッ!」て暴れて、さすがの俺も腰抜かしたよ。

彼女、そんな言葉遣いする子じゃないのにさ。

呆然とする俺を見て、さも楽しそうに「キャハハハハッ!」て笑うんだ。

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結局、彼女の両親が彼女を同棲から引き上げさせることになって、そのまま彼女とは別れることになった。

彼女の両親から、別れるように頭下げられちゃったし。

そんな時に、借りた部屋に纏わる話を隣人からたまたま聞いたんだよ。

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病院から帰ってきた俺を見つけて「大変だったね」って気遣ってくれて、そのあと「あの部屋のこと知らないで入居したの?」って聞かれてさ。

俺が「知らないです」って答えたら、そのお隣のお兄さんが丁寧に教えてくれた。

俺と彼女が借りた部屋の忌まわしい過去を。

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俺と彼女が入居する、前の前の住人がやっぱりカップルだったらしい。

そのカップルの男は、ある時、他の女と浮気して部屋にあまり帰って来なくなった。

同棲してた女は浮気に気付いて、別れ話をしに帰ってきた男への当てつけで風呂場で首の横や手首を包丁で切って死んだそうだ。

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風呂場中が血の海になるほどに、壮絶だったらしい。

首や手首の切り傷も、何十カ所にも及んだって。

それを聞いて俺は、「あぁ、じゃぁ、あの壁の赤い斑点はその女から飛び散った血だったのか」と合点がいったよ。

なんか、薄ら寒くなったのを覚えてる。

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俺に何かを訴えたかったのか。

そう考えたけど、でも、それならどうして俺の彼女をあんな目に遭わせたんだ?

そんな疑問は、その後すぐ解けた。

俺の彼女もまた、俺に隠れて浮気をしてたと判ったんだよ。

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彼女の友達が、そう教えてくれた。

「二股かけられてたの、知らなかったの?」ってさ。

ショックだったけど、「バチが当たったんだ」とは思えなかった。

それに、疑問が一つある。

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「殺してやる」って俺を見て吐いた言葉は、誰に向けて言ったんだろう?

彼女自身に向けて、なのだろうか…?

それと、いくら浮気する人間を憎んでいるのであろうその女が、だからって俺の彼女を害していいわけでもないし。

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いずれ浮気が判っても、その時はお互いにいい大人なんだし、話して解決すればいいだけのことだ。

そう思ったよ。

その女は俺の彼女を罰したかったのか?

そんなこと俺には分からないけど、憎しみや恨みを抱いて死んだ人間が、その想いだけに取り憑かれて動くっての…、生きてる人間と大差ないんだなってのは感じた。

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…あの部屋?

さぁ…?

俺は、あの後すぐに退去したから…。

もしかしたら、今はまた誰かが住んでるんじゃない…?

<おわり>

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mami 様

コメントありがとうございます。

そうですよ、結婚披露宴の余興で新郎側の友人達が作成したものです。
新婦側にしてみれば、「なぜに怖い話?」みたいな雰囲気になってましたね(^_^;)
結局は、各々楽しんでたようですが(笑)

いえいえ、mami様のお話の書き方も引き込まれちゃうくらい読みやすくて私は好きです(*^^*)
お褒めのお言葉、ありがとうございますm(_ _)m
先輩方を見習いつつ精進します( ^ω^ )

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ゼロ様、10話お疲れ様でした。
とうとう最終話ですか…なんだか寂しいです…
が、これ、確か結婚のお祝いビデオの始まりでしたよね…?
結婚のお祝いにこのお話し…
新婦側に思うと、尚更怖いです…

今更ですが…自分が何作か書くようになったから、思うんですけど…
お話しがスゴくお上手ですよね…
同じ部屋で聞いている気分になりました。

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まりか 様

コメントありがとうございます。

お久しぶりですね(=゚ω゚)ノ
早くUPしないと夏が〜…ってことで、多忙の合間の隙を見てUPしまつた( ^ω^ )
お楽しみいただけたなら、何よりですm(_ _)m

案外、「両方」っていうのもアリかもしれませんね。
男性には理解できない「女心」って、複雑怪奇にできてますから(笑)

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ロビン 様

コメントありがとうございます。

うーん、可能性はゼロじゃないかもしれませんね(笑)
私も来月、引っ越しあるんで物件の見学に行った時、「玄関前」と「室内全部」を霊視して旦那さんにOK出しました( ^ω^ )

お褒めのお言葉ありがとうございますm(_ _)m

百物語、いいですねd(^_^o)
また何か企画がある時には、ぜひ誘っていただけたら嬉しいです(*^^*)
時間ある時にしか参加できませんが(^_^;)

最後まで読んでいただきまして、ありがとうございました。

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ゼロお姉様、僕が初めて一人暮らしをしたハイツも恐らく今思えば事故物件だったと思います。

当時、付き合っていた彼女が霊感持ちで、トイレと寝室には何が何でも入ってくれませんでした。赤ん坊を抱いた女がベッド脇に立っている夢を何度も見ましたが、ま、まさか!

十物語お疲れ様でした!まさに最後を締めくくるに相応しい怖話でした。

つ、続いて百物語へのご参加などはいかがでしょうか?…ひひ…

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ラグト 様

コメントありがとうございます。

私も書くネタ集めに友人や知人の話を、よく聞きに行ってます(^_^;)
いくら、シックスセンスのコール並みに幽霊見えちゃう体質でも、怖い体験を毎日するわけじゃないですしね(笑)
読んでいただき、ありがとうございました。

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私も次のお話を書く気力がなくなりはしないか怯えながらいつも書いています。
十物語お疲れ様でした。

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