中編3
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真っ黒

私が大学2年生の夏休み、皆でボウリングに行った。

仲の良いグループから、特によく一緒にいたメンバーだった。

女友達のまちこ、まゆみ。男友達の横山、山田。

そこに私。

先にまちこ、まゆみ、横山と駅に着き、ボウリング場に向かう。「あれ?山田は?」と聞くと、横山が「遅れてくるって!」

あまり気にすることなく、バイトかな?くらいに思っていた。

1ゲーム目が始まり、少し経った頃。

「山田、駅についたってー!」と横山。そういや、山田場所わかるの?と聞くと、「迎えに行くって言ってたけど、俺めんどくさくなっちゃった~」

こんにゃろ。山田かわいそうやんけ。私が迎えに行くことにした。

でも、この時今にして思えば自分の行動が不思議だった。山田とはLINEしたりするほど仲が良かった訳でもなく、二人だとそこまで話すこともない。なのに、私より仲の良い友達が行くのを止めてまで私が!と思っていた。

駅の方に向かって歩いていく。5分程歩くと駅が見えてきた。

………あれ?なーんか人混みに混じって、真っ黒いものが見える??んん???

徐々にこちらに向かってくる。

まさか…

「おー!良かった会えた~」とのほほんとした話し方。山田だったよ…。

見るからに真っ黒です。うっわ…やだな~と思いながらボウリング場に向かう。

「なーんかこないだからiPodの調子悪くてさ~」

でしょうね。真っ黒ですもの。

思わず聞いてしまった。

「山田。最近心霊スポット行かなかった?」

「え?俺言ったっけ?」ちなみに前回山田と会ったのは、夏休みに入る前。1ヶ月以上連絡もとってなかった。だから、私は山田がどうしていたか全く知らない。

「どこ行ったの?」と聞くと、

「地元の友達と流れで、神奈川の有名なとこ(場所の名前は忘れた。)に行った。特になにもなかったんだけど、帰ってきてから変なことが友達にも起きてて…」

「でしょうね。真っ黒だもん。」

「ええ!?プリン見えるの!?え!?こわっ!だから心霊スポット行ったのわかったの!?」

そういや、大学では見えること言ってなかったな…とか考えながら、「とりあえず私のパワー分けるから、それでダメだったら私のお母さんに会うかお祓いしかない。ちなみに山田のは、私がどうにかできるかもしれないけど、友達のことまではどうにもできない。事故に気を付けるように言っといて。はい、私の手を握って。」

祓うことなんか私にはできないから、黒いものをもらうことにした。家に帰ればお母さんの力でたいてい居なくなるしいっか。

スーっと冷たくなっていく手に、山田は驚いていた。「え?え?」と後ろを振り返ったりしている。徐々に黒いものが消えていき、山田の顔を認識できた。

「あ、もう大丈夫。でも、遊び半分で行くのはもう止めな。友達にもそう伝えた方がいいよ。これでたぶん大丈夫だから。」

山田は興奮しながら、「プリンすごい!!あ、iPod直った!!すごい!!すごい!!」と連呼してた。

あー体が寒い。まあ今日は予定ないし早く帰ろう…。

そのあとは楽しくボウリングをした。山田はこの話をまちこ達にはしなかった。

何事もなく実家に帰り、階段を登り始めたくらいには黒いものがいなくなった気配がした。

終わり

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