百物語【第十九話~二十一話】

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百物語【第十九話~二十一話】

ラグト様の黒川先輩シリーズ、しかもエピソードゼロというか、過去のお話まで、こういう機会に拝聴できるなんて、何か非常に得したような気分になりました。

とか言って聴きいってるうちに、自分の番になってしまって少々慌てておりますが、えー、小生のような者にまでお声掛けを頂きまして有難うございます。話の内容も平凡ですし、そもそもあまり人前でお話するのは得意ではないのですが、まあ、オリンピックじゃないですが、参加することに意義があると言う事で、えー、お許し頂ければと思います。一応三つですが、短いですから、すぐ終わります。

あと、当年とってうん十歳、昭和ど真ん中オヤジでございますので、実体験に基づくお話となりますと、背景とか、お若い方には馴染みが薄い部分もあるかもしれませんが、えー、なるべく分かりやすくお話したいと思いますので、宜しくお付き合い下さい。

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【十九話目】

私の幼い頃は、幹線道路はともかく、まだ家の近所は未舗装の道が大部分で、常にでこぼこ道が土埃を上げていました。雨が降ると、当然、ぬかるんだり、至る所に水たまりができたりしましたが、子供の頃はそれはそれで楽しみだったりしたものです。わざと水たまりに踏み込んだりしてね。後でこっぴどく叱られるんですよね(^ ^)。

ある日、親戚の家まで一人で遊びに行った私は、夕方一人で家に向かって歩いていました。夕立の降った後で、丁度人通りが途絶えていて、何となく不安な気持ちを抱えながらも、家路を急いでおりました。

その時、私の後ろから、もうひとつの足音が、ぺたぺた、ぺたぺた、とついてくるのに気付きました。

驚いて立ち止まって見ると、足音も止まります。

思い切って振り返ってみました。が、誰も見当たりません。

急ぎ足で歩きだすと、ぺたぺたぺたぺたぺたぺた、足音が付いてきます。

周りには誰もいない、自分は、その場にたった一人…。大人も子供も通りません。

少々厳しい状況でしたが、当時、既に多くの日本の子供たちが、水木しげる先生の薫陶を受けていました。殆どパニックになりながらも、真っ先に自分の頭に閃いたのは、「これは、水木しげるが描いていた ”べとべとさん” だ!」という直感でした。

現金なもので、本で読んだ妖怪に実際に遭遇したということに興奮し、恐怖心は、完全に飛んでいました。

早速覚えたての対処法を実践してみます。道路わきによけて、道を譲りながら「べとべとさん、先へおこし」と、大きな声で言ってみました。

足音は、ピタリと止みました。辺りは、しーんと静まりかえっています。

やった!本の通りだ!成功体験に興奮しながら、歩き出そうと一歩踏み出した時。

前方にある水たまりに、ちゃぽん、と音をたてて、小さな波紋が広がりました…。と、その次の水たまりにもちゃぽん…。そのまた次にも…。水切りを後ろから見てるような気分でした。

”あれって、本当にべとべとさんだったのかな…?” 私は、念の為そこで百まで数えてから、可能な限りゆっくりと歩き出しました…。

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【二十話目】

小学生の頃の話です。

大体、放課後になると、近所の子供と連れ立って、遊びに出かけるわけですが、近所に比較的大きなお寺が有りまして、とても広い敷地を有していました。昔は、色んな意味でおおらかなもので、敷地内の藪とか、草地とか池なんかも、殆ど放置に近い状態で、まず大人は誰も来ないので、そこが、我々の遊び場になるわけです。

ある時、遊び仲間数人で、草地の中をうろついていたら、一人が妙な物を見つけました。15センチくらいの長さで、色は薄い黄色と肌色の中間ぐらい。少し透明感のある色合い。プラスチックのような感触で、形状は、何というか、チクワを縦に半分に割ったような形と言えばいいのでしょうか。

「これ何だろう。」

みんなでガヤガヤ言ってるうちに、一人が言いました。

「これ、屍蝋化した死体の一部じゃないか?」

怪奇、怪談系の知識をひけらかしたい年頃ですし、もう一つ背景があったのは、当時、とあるバラバラ殺人事件の話が、世間を騒がせており、各々子供心にも、その悍ましいイメージが浸透していたわけです。実際、死体の一部が見つかってないという報道もあり、その失われた一部が、実はこの近所にあるとか、それを探して殺された人の霊が未だに彷徨っているというような噂が、子供達の間では広まっていました。

確かに、言われてみれば、その物体は、骨から剥ぎ取られた肉が、固まって屍蝋化したもののようにも見えてきます。

と、それを矯めつ眇めつしていた奴が、いきなりそれを鼻のところに持っていくと

「死体の匂いだ!」

と叫んで放り出しました。それを見て、みんな蜘蛛の子を散らすように逃げてしまい、その日は自然と散開しました。

勿論、それは小学生の子供じみた冗談でした。そもそも小学生が、本物の死体の臭いを知っている可能性は低いわけで、実際、その声を上げた奴も含めて、その場に居合わせた者全員、死体の臭いなんて知らなかったのです。騒いだ奴も、要は普段から目立ちたがりで、注目を集める為に、すぐばれるような嘘を吐くような子供でした。クラスに一人や二人、必ずいましたよね、そういうの。勿論、死体の臭いなんて嘘であるということで、翌日には、すっかりけりがついて、それきりになりました…。

じゃあ、結局あの物体は何だったのでしょうか。何故あんな場所にあったのでしょうか。残念ながら、それは今になってもよく分かりません…。

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【二十一話目】

最後は、一番短いものになってしまうのですが、やはりこれも小学生の頃の話です。どうも、実体験の話となると、自分のようなゼロ感は、大人になってからの経験が無いので、どうしても子供時代の話になってしまいますね。やはり、子供の方が、比較的そういう話に近い所にいるのでしょうか。

当時、私の住んでいた所は、関東地方の東京湾岸に比較的近い所にあって、子供部屋から、遠景に京浜工業地帯の工場群が見えました。夜になると、溶鉱炉の炎が夜空の中に躍る様が遠目に見えて、最初は、少し怖かったのですが、慣れてしまうと、綺麗だなぁとか思って眺めておりました。

ところが、ある日、その夜空の炎が、妙に激しいというか、異常に多いような気がしました。遠景に見える夜空が、殆ど真昼のように見えるくらいです。コンビナートで、大規模事故でも発生したのか?私は母親の所に走ると、事情を話すと子供部屋まで手を引いて連れてきました。

「どこ…?」

「どこって、あそこだよ。向こうの空全部!」

「いつもどおりじゃないの。」どうやら、母親の目には見えないらしいのです。

「そんなことないよ!あんなに燃えてるじゃん!」

と、何気なくカレンダーに目をやった母親は、何か気づいたようで、私に言いました。

「手を合わせなさい。」

そう言って自分も手を合わせました。

3月10日、東京大空襲の日でした…。

以上です。どうもご退屈様でした。

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