短編2
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誰かに信じてほしい話

大学二年の時の話だ。

今日は、いつもの話とは少し違うというか…。

俺が、本気で誰かに信じてほしい話だ。

ある日のバイト帰りだった。

バイト先から自宅に帰るまでの道のりで、俺はいつも池の前を通っていた。

周りをぐるっと木の柵で覆っていて、ぽつぽつと屋根付きのベンチがあり、池の中に二か所ほど、申し訳程度の噴水が設置されている。

昼間にはお年寄りなんかが散歩していたりするが、夜になると全く人がいない。

その日はバイトが夜で上がりで、深夜1時頃だったと思う。俺は池の横を自転車で走っていた。

 

 

ぱしゃ

ぱしゃ 

 

「…?」

 

ふと、池の方から水音が聞こえた。

魚でも跳ねたのだろうか?

そう思って何となく池の方を見た。

 

ぱしゃ

ぱしゃ

 

「……。」

 

水の音。

波紋が見える。

その中心に目をやる。

 

ぱしゃ

ぱしゃ 

 

「……!?」

 

水の音。

その波紋の中心に

 

人影の様なもの。

 

黒い影が、池の真ん中に見えた。

一瞬、人が溺れているのかと思った。

でも、瞬時にそうではないと気が付く。

 

 

その人影の様なものは

腰から上まで、水面から出ていた。

 

 

溺れているなら、こんなに体が水から出ているわけがない。

それだけじゃない。

この池の水かさは、決して浅くないのだ。

あんな位置に人がいるなんて…おかしい。 

 

腰から上まで水面から出た人影は、

ぱしゃ

ぱしゃ、と

両手を交互に水面に叩きつけている。

まるで、踊っているように…

 

 

次の瞬間、俺は猛スピードで自転車をこいだ。

ヤバい。

逃げないと。

そう思ったから。

ある事に、気が付いたから。

 

幸いそこから家まで一直線、さらには夜中で車通りもなく、あっという間に家に着いた。

でも全く安心できず、慌てて鍵を開けて家の中に逃げ込んだ。

家に入ってからも…もしかしたら、あれが追ってきているんじゃないか。

そう思うと、本当に怖かった。

 

俺は気が付いたんだ。

あれは…

あれはきっと… 

 

「か…河童だ…!」

 

絶対河童だ!

河童だった!

どうしよう!あの道夜よく通るのに!

水に引き込まれたらあいつのホームグラウンドだ!絶対勝てない!

 

俺は今後の不安で恐怖したが…結局、それから奴に合うことは無かった。

そしてその後何より悲しかったことは

友人、知人、家族…誰もこの話を信じてくれないことである。

Concrete
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