長編9
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~手鏡~

いつも沙羅宅に変な物を持って来やg・・

いえ。珍しい物を持って来る叔母関連の話。

2km程離れた場所にある父の実家へ行った時、

その日の事を今日はお話しましょうか・・・。

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叔母が、突然私の前に立ち塞がった。

沙羅?ちょっと、くるって回って?

当然、訳が判らないが、くるりと回ってみた。

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・・ふん。。買い物に行きましょう。

唐突過ぎる叔母の申し出に戸惑いながらも、

叔母の言ってる事だし、父も文句は無いだろうと付いていった。

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過去作を読んで下さってる方はご存知だが、沙羅家は父が働かなかったため、超貧乏だった。

で、兄のお下がり服ばかりを着ていた私。

ご近所のお姉さんのお古もよく頂いていた。

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流石に、これは・・。ってものは作り直す。

小学高学年の頃にはリメイクが得意になってましたよ私。

・・って話が逸れましたねぇ。

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その時は、確か兄貴のTシャツに、チェックの緑色のスカートという組み合わせだった。

どこにでもいる、平凡な少女のハズ。

だが、叔母には気に入らなかったようだ。

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叔母が買い与えてくれたのは、薄い水色のワンピースで、パフスリーブにヒラヒラのフリルが目一杯付いてるものだった。

ウエストの後ろで大きなリボンを結ぶ。

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私、何かの発表会にでも出るの?

そんな感じで、街中を歩くには浮いてる。

しかも日焼けした肌には色味が全く合わないパステルカラー・・。

ちょっと恥ずかしかったが、叔母は満足したようだった。

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服に合わせて、靴やバッグも買ってくれた。

(なんか、すっごくイヤな予感~~)

そんな予感は、当たるものだ。

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叔母は自分で自分の事をキヨちゃんと呼ぶ。

「沙羅?今からキヨちゃんの友達のお宅へ行くから、行儀よくしてよ?」

黙って頷くと、見たこともないような屋敷に連れて行かれた。

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というか、ずっとソコは工場か何かだと思っていたのだ。

駅から少し離れた場所の一角に高い塀で囲まれた場所。

頑丈そうでレトロな鉄製の門扉の前に立つと、自然と緊張する。

叔母も、ちょっと姿勢を正しブザーを鳴らした。

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少しの間があって、重たそうに門扉が勝手に開いた。

当時としては珍しかったろう・・。

『沙羅。キョロキョロしないでっ!』

門の中は、別世界のようだった。

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綺麗に刈り込まれた緑の植木。

薔薇のむせ返るような豊かな香り。

それらを通り過ぎると、これまた大きな玄関がある。

ライオンの口から出てる金輪をコンコン鳴らす。

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出てきたのは、白髪の上品なお爺さんだった。

「いらっしゃいませ。聖恵様。どうぞこちらへ」

にこやかに挨拶をしながら、エントランスのソファーへ誘導される。

(え~玄関にソファって、変なの~)

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キヨエ様と呼ばれた叔母は、静々と当たり前のように座った。

反して私は調度品の数々に目を奪われながら、足をブラブラしていたようだ。

叔母からキッチリ叱られた。

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どの位待たされたろうか。

屋敷内には、所謂メイドさんが忙しそうに、

だが、ゆったりとした所作で行き来している。

(うはぁ~~~・・すげー・・)

私達の前を通り過ぎる時に、「ようこそ。聖恵様。」とふんわりと挨拶していく。

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暫く待つと、先程のお爺さんが呼びに来た。

後に続いて長い廊下を進むと、映画に出てくるような長いテーブルに燭台・・。

そんな部屋に案内された。

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年配女性が叔母に微笑みかけながら言った。

「聖恵さん。お待ちしてましたわ」と・・

そして私の方に視線を持ってきた。

「おばさま?お久しぶりです。この子はワタクシの姪ですの。沙羅?ご挨拶を」

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私は、内心とんでもなく焦りながら、スカートの両端を少し持ち上げて

「初めまして、沙羅と申します」と言ってみた。

偽物のお嬢様を演じるのは、気まずい事この上なかった。。

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しばし、叔母とその女性<友達のお母さん>が話し込んでから、二階の部屋へと案内された。そこが<友達>の部屋らしい。

だが、肝心の友達の姿が見当たらない。

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室内はヒンヤリとしていて、日当たりの良さとは裏腹で違和感を感じた。

既に帰りたくなっていた私だが、叔母を見ると目頭を押さえている。

(何々?なんで泣いてんの?まさかー!)

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その、まさか。だったんです。

お母さんが、クローゼットの中の引き出しから何か持ってきた。

そして叔母に手渡す。

「これが、聖恵さんへ遺したプレゼントよ」

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それは、鈍色をした手鏡だった。

凝った細工がしてあり、手鏡としても置き鏡としても使えるもの。

鏡の背面の細工は、アラベスク模様のような感じで凹凸があり、本物か偽物か分からないが、真ん中に真っ赤なルビーのような石が埋め込まれている。

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叔母は、両手で受け取ると胸に抱いて泣き出してしまった。

そんな叔母をみて、お母さんは申し訳無さそうに言った。

「少し、ここで偲んでやって下さる?」と。

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自分は出かけなきゃいけないから、後で送ってくれる人をよこすので、それまでこの部屋にいろと・・。

叔母は、泣きながら何度も頷いていた。

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お母さんと入れ違いに、メイドさんが、お茶と焼き菓子を運んできた。

私は場違いな所に連れて来られた気がして、窓辺に寄り外を眺めながら、ふと足元を見た。

サイドテーブルの下に、何か紙切れのような物の端を見つけた。

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叔母は、ベッドに腰掛けてお茶を啜っている。

私は反対側にいる。今のうちに・・。

紙切れを引っ張り出すと、目を疑うような言葉が並んでた。

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キヨエのくせに!憎たらしい!

あぁ本当に憎たらしい!こんな書いてるだけじゃ治まらない。どうしてやろう。

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叔母に対しての、ほぼ呪いのような言葉が並んでいた。

「沙羅?何してんの?」

ドキッとして反射的に紙をベッドの下に隠す。

「ううん。何も?ふかふかしてるね!」

誤魔化す私を疑うでもなく、叔母はまた泣きそうになる。

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ずっとね、入院してたの。

何度行っても会えない位、重い病気でね。

(・・違うと思うな・・)

今回は、おば様が呼んでくれたから来たんだよ。この部屋のもの何でも持ち帰ってって。

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あのオバサン。。何か知っててキヨエちゃんを呼んだんだ。

何となく、そう思った。

「何を持って行ってもいいって?」聞き返すと、叔母は力なくコクンと頷いた。

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これで物色出来る!!

子供心に何か勝利の予感がしたのを覚えてる。

さっきのクローゼットを覗く。

(確か・・奥の方から出したんだよね)

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本物のお嬢様は、こんな服を毎日着てるのか。

いくら小学生でも、綿と絹の差くらい分かる。

絹のワンピースやドレスなどが掛かってる。

(もっと奥・・奥に何かあるハズ・・)

服を掻き分けても何もない。

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そんな筈はない。

あのオバサン、しゃがんだりしないで取り出したんだから。。

クローゼットの内側を撫でていくと、変な凹みがあった。

(ん??)

へこみを更に押し込むと、カタリと音がして引き出しが出てきた。

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・・ここから取り出したんだ?他には?

小さな箱と、ノートが数冊。

小さな箱には、色の褪せた和紙で包んだ何かが入っていた。

ノートには、思い出が書き連ねてあった。

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その中に、誰に何を渡して欲しいのかも書いてあった。

何故、わざわざ隠してあるのか判らないが。

そもそも隠すための引き出しではないのかもしれない。

隠すなら親が知らない場所に隠すはずだ。

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お嬢様なら、自ら掃除なんてしない筈。

(もし私が、本物の令嬢だったら?)

キヨエちゃんが、呪われちゃう。

早く見つけないと!そんな焦りも出てきた。

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ふと、さっきの紙切れを思い出した。

そうだ!!ベッドの下!!

私が部屋中をガサゴソしてる間、叔母は焼き菓子に手を伸ばしながら「素敵な部屋だね」

なんて呑気に言ってる。

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私は、ベッドスカートを捲るとベッドの下に潜り込む。

さながら殺人鬼から隠れるかのような格好だ。

(・・・ん~~~っと・・・)

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さっきの紙切れは、この際ポッケだ。

下から枠を見上げる形で、何かないか探す。

(ベッドの上で書いて、隠す。。隠す。。)

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とうとう、私は見つけた。

花柄の入った小さなメモ帳。細いペンが螺旋になったメモ帳の背に入れてある。

(・・・これだ・・・)

ベッドマット?と枠の間に差し込んであった。

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急いでメモ帳を開く。

そこには、一言だけ。。。。

「へぇ。見つけたの。やるじゃない」

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そう書いてあった。

たったそれだけの言葉に、どうしようもないほど禍々しくも悲しい気持ちがした。

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ベッド下から這い出してくると、叔母は数着のワンピース、ブラウス、スカート等をベッドの上に出していた。

頂いて帰るつもりなんだろう。

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「沙羅?あんたも何か記念に頂けば?」

どこまでも呑気な叔母だ。憎まれていたのに。

ううん。私はいらない。

丁度そこに、車で送ってくれるという若い男性が、お爺さんに連れられてきた。

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叔母は、出した衣類をメイドさんに託し袋に入れてもらって帰ることにした。

さすがに自宅までは送って欲しくなかったようで、途中で下ろしてもらった。

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叔母に買ってもらった服のお礼を言って帰宅した私は・・。

しばし悩んだ末、父に相談した。

ポケットから例の紙を取り出して父に見せた。そして、メモ帳も。

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父は、すぐに叔母を呼びつけた。

そして、あの屋敷から持って来た物を全部処分するように言っていた。

・・が、言うことを聞かない。

最終的に、沙羅宅で兄妹喧嘩が勃発。

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叔母はヒステリックに持ち帰ってきた袋ごと父に投げつけ、飛び出すように帰っていった。

衣類は問題なく、ゴミ袋に。

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あの鏡は・・・

帰り際、叔母が私に押し付けてきた。

「これ、あんたにあげる!」

そう言い残していった。

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子供の私には、とても重く感じた鏡。

背面の模様が綺麗で、叔母は託されたことを嬉しく思ったに違いない。

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父にその鏡を渡そうとしたが、まだ妹との喧嘩を後悔してるのか元気がない。

そんな父に渡しそびれて、私が持っていた。

(これ、どうしようかなぁ・・)

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幾度となく父に渡そうとして、毎回タイミングが悪く渡せずにいた鏡。

そんなある日、学校から帰宅すると父が<鏡>を持って待ち構えていた。

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「沙羅!なんだコレは!!」

既に怒りモードMAXだ。

盗んできたとでも思ったんだろうか?

鏡をテーブルに置いて事情を話し始めた時。

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パキン!!と音がした。

私も父も、そんな音は日常的に聞いてるので、気にもせず話していた。

話し終えると、父はかなり不満気に鏡を手に取ろうとした。

・・が、父の手が捕らえた物は、鏡部分の割れた残骸だった。

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「なんだ?今、割れたのか?」

慎重に割れた鏡の部分を、外し始める父。

(また随分キレイな割れ方したなぁ・・)

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真ん中から放射状に割れている。

全ての欠片を取り外すと、他の小さな破片が残ってないか新聞紙の上でトントンと丹念に叩く父。

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「・・ほれ。鏡も取ったし、これだけなら持ってていいぞ」

そう言われても・・。何にしろと?

とりあえず受け取り、割れた鏡を処分しようと外に持っていった。

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・・私は一体、何を考えてたんだろう?

外で、パズルのピースを組み立てるように、新聞紙の上で鏡を元の形に戻していた。

小さな欠片のなかったソレは、原型に戻った。

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原型に戻しても使うこともないのに。

私は何を思うでも考えるでもなく、ソレを覗き込んだ。

当然、私の顔が映りひび割れている。

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私が、自分の顔を認識して・・

(・・えっ・・)咄嗟に振り返った。

私の後ろから鏡を覗き込む別の顔があった。

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勿論、私の後ろには誰も居るはずがない。

見間違いかと思った。

(だよね。あんなの見たからさぁ・・)

しゃがんだまま、後ろの壁に寄りかかる。

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キヨエちゃんの事、あんな風に思ってた人がいたんだ。。

ま。私も好きじゃないし。

でも、あそこまでは思ってないもんな。

一体何があったんだか知らないけどさ~。

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少しだけ物思いに耽って、腰を上げた。

新聞紙の上の鏡をもう一度見る。

ひび割れた私の顔。。。

そして・・・

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『あんた、誰』

直接、頭の中に声が聞こえたのと同時に、また顔が見えた。

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めちゃめちゃ急いで新聞紙を丸めながら

(私は、ワタシ!あんたこそ誰?てか、消えて!!お化けなんて嫌い!)

心の中で叫び、ガムテープでぐるぐる巻きにした。

ついでに部屋から、あの素敵な装飾の枠も持ってきてグルグル巻いた。

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~~

ゴミの日なんかじゃ無かったけど、そのまま捨てに行った。

夜中になってたけど。。

朝になって、学校への道すがらゴミ捨て場をチラ見した。

・・・無くなっていた。

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~~

なんかね、変な不思議な話でしょ?

未だに鮮明に覚えてるんですよね。

・・あの時、私の後ろに映った顔。

でも、まだ叔母にも話せずにいるんですよね。

~~~~~

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修行者さん♪
いつもありがとですぅ(*^^*)

黙って音信不通になんて、出来ないですよぉぉぉお!
だって、構ってちゃんだもんwヾ(・ω・;)カマッテ・・

自分でも最近感じるんですよねぇ~
(・・う。キヨエちゃんに顔・似てる~~凹 ってww)

沙羅さん、いつも素晴らしい作品ありがとうございます!
あのメモ帳、まるで沙羅さんが見つけるのをわかっていたとでも言うような書き記しでしたね(゚o゚;;
私ならその場で投げ捨て即帰宅…でしょうか(笑)

鏡も昔から、自身の生後はもちろんの事、生前、霊、あらゆるものを映すと聞きます。
総合的に怖く、不思議なお話で満足しています(^^)
私も沙羅さんのような作品を書ければ… と思う日々です。

9月に入ったので私もそろそろ次の作品に取り掛かります(^^)

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紫音たんww
いつもありまちゅ(^^

早く、飛び出した目ん玉拾ってハメなされwww

あの人、ちょいちょい居なくなるから、あんまり心配してないんだけど
独身の一人暮らし。しかも誰にも住所を教えないという。。。
他の兄弟も、彼女の住んでるトコ知らないんだってよ?

変わり者は、父だけじゃなく父方全員がそーゆー人種なんですね~ε-(‐ω‐;)

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