中編4
  • 表示切替
  • 使い方

手首の傷

第三者から見ると、そんなに怖くないのかもしれません。

ですが、私にとってはとても怖く、とても悲しい出来事でした…。

私は4人兄姉の末っ子で、上3人とは結構歳が離れていました。

そのためか、兄姉喧嘩などもしたことがなくとても可愛がられていました。

なかでも1番上の姉とは特に仲が良く、よく姉の家へ泊まりに行ったり、ふたりで買い物に行ったりしていました。

その日も、いつものように姉の家へ泊まりに行っていました。

姉は私が小さい頃から、私の手の感触が好きらしく、よく私の手を握ってくれていました。

手のひらのマッサージと称して、その感触を堪能していたようでした。

私もそれが気持ちよくて、よくマッサージをせがんでいました。

その日もいつものように、寝る前のマッサージをしてもらっていました。

手を触られながら眠りに落ちる、その感覚が私には心地よく、ウトウト……。

姉は、なにか話しながらマッサージをしてくれているのですが、すでに睡魔のせいで意識がはっきりとしない私には、姉が何を話しているのかわかりませんでした。

「……は、………かなぁ?……」

薄れ行く意識の中で、何か質問をされていることは分かったのですが、それが何なのか分からず、私はそのまま眠りに落ちてしまいました。

その眠りで、私は夢を見ました。

いつものように、姉と買い物に行き、お互いの相談事や他愛ない話をしながら姉の家へ帰る夢。

寝る前のマッサージをしてもらいながら、笑い話をする。

その時、ふと姉の顔がなんとも言えない、悲しそうな表情になりました。

「もし私が死んじゃったら、あんたは私のこと…忘れちゃうのかなぁ?」

「何、変なこと言ってるの?(笑)忘れるわけないじゃん」

寝ぼけまなこの私がそう答えると、姉はただ微笑んでマッサージを続けるだけで、その時の夢はそこで終わりでした。

その数ヶ月後、私が高校1年の頃です。

姉が自殺しました。

自宅マンションからの飛び降りでした。

なんで?どうして?

突然いなくなった姉に、私はただただ疑問ばかりでした。

あんなに仲が良く、何でも話すような仲だったのに。

なんで何も言わず死んじゃったの?

頭がついていかず、葬儀中のこともあまりよく覚えていません。

それからしばらくは、何をするにもやる気が起きませんでした。

ですがいつまでも落ち込んでるわけにもいきません。

気持ちを切り替えたり、考え方を変えたりと姉のことを考えないように、明るく振る舞って家族に心配をさせないようにしていました。

だいぶ気持ち的にも楽になり、姉の死を思い出さなくなってきたある日、自室で寝ていると夢を見ました。

その夢には、ひとりの女性が出てきました。顔がはっきりとはわからないのですが、その人はとても恐ろしい形相をしていることはわかりました。

その恐ろしい形相で、私に何かを訴えかけているのです。

「…どうして?どうしてなの!?なんで忘れようとするの!?」

その人からはすごく怒りの感情が伝わってきました。

私は汗でびっしょりになりながら目が覚めます。

その時、私の右手首に冷たい何かが触れたような気がしました。

不思議に思った私は、何が触れたのか確かめようとしたのですが、体が動きませんでした。

同時にとてつもない恐怖と、右手首にえぐられるような痛みが走りました。

生暖かい何かが手のひらに伝って、錆びくさい臭いがしました。

私は必死に右を向こうと、体を動かそうとしたときに耳元ではっきりと、亡くなった姉の声が聞こえてきました。

「うそつき」

その声は低く、とても恨めしそうな声ではっきりとそう言ったのです。

私はそこで気を失ってしまったようで、気づくと朝になっていました。

私は全て夢だったのだと思い、体を起こそうと手をついたとき、右手首に痛みを感じました。

見てみると右手首が血で濡れていました。

私はあわてて洗面所に行き、血で濡れた右手首を洗うと、そこにはぱっくりと裂けたような傷があったのです。

私は夢じゃなかったんだと思いました。

私が姉のことを忘れようとしたから、姉は私に怒ってるんだと思いました。

右手首の傷は意外にも深かったようで、今でも跡が残っています。

話はこれで終わりです。

まとまりがなくて申し訳ないですが、家族に話しても信じてもらえません。

ただ私は、この右手首の傷跡を見るたびに姉のことを思い出します。

きっと姉は私に忘れられてしまうことが嫌で、傷をつけたのだと思っています。

長文、失礼しました。

Normal
閲覧数コメント怖い
9966
21
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意