中編3
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泣き声

こいつは今年の夏にあったことなのだが・・・・・・。

俺は昔から霊感が強く、家のすぐ近く(約五十メートル)に墓地があるせいか、しょっちゅう金縛りにあう。

それで金縛りにあうと毎回霊が見えるのだが、その夜は違った。

夜中携帯でホラー小説を書き、2時頃になってようやく睡魔が襲ってきたので寝ることに。

まー霊感が強いとなんとなくわかるのだが、人間どうやら普段は霊を感じる感覚をoffにしているのだが、怖い物を見ると次第にその感覚がonになる。

つまりそんなことしてたから、その日も霊が来たわけだ。

始めまたきたなーって感じで、目を開けず息を殺してやり過ごそうとしたんだ。いつも霊探知器である耳鳴りがしている間は、霊が近くにいるから気をつけているのだが。

その日は違った。

耳鳴りが酷く、全くの無音状態に陥った。

これはヤバイな〜。そんなこと考えてるとどこからかと泣き声が聞こえてきたんだ。女の啜り泣く声が。自分の部屋から。

クスン、クス、クス

当然部屋には俺しかいない。

泣き声は次第に近くなり俺の耳元までやってきた。

クス、クス、クス!

耳鳴りで何も聞こえないはずなのに、はっきりと聞こえた。

しかもそれは泣き声ではなかった。

耳元で聞いたそれは狂った笑い声だった。

クックククク!

そして同時に体の上に何かが乗る。ずっしりと重い。その時になってようやくいつもの金縛りとレベルが違うことに気がついた。

ヤバイッ!

そう思った時目の前でハアッ、ハアッと息遣いが聞こえてきた。目を開ければすぐそこにいる。

だから俺は必死に目をつぶった。今までのレベルとは違う、「それ」を見たらどうなるか。

普通霊を見る時二つのパターンがある。

俺を見る霊。

俺に後ろを向ける霊。

この今俺の目の前にいる奴は明らかに後者だ。後者の方はたちが悪い。

前者はこちらに殺意はない。淋しさ故に現れる。

しかし、後者は殺意がある。好奇心に満ちている。

だから、見るわけにはいかなかった。見たら最期。逃げられない。

しばらく俺の前にいたそいつはずっと笑っていたが、突然黙り込んだ。

去ったか?

そう思った瞬間金縛り状態の俺の体の中にそいつが入ってきた。

一瞬気を失いそうになった。そいつは俺の中に入り、俺の口を使って不気味に笑い続けた。それでも俺は死に物狂いで金縛りとそいつに抗った。

多分何か言ってたと思う。

そいつはその言葉を聞いた途端、すっと俺の体からでていった。

いったい何を言ったかわからないが、はっきり覚えていることがある。

大声で叫んでいたこと。

そして、それは名前だった。

ただなんて名前かはわからない。きっとそいつの名前なんだろうが。

これが俺が金縛りにあった中で1番疲れた話である。もし霊感がなくとりつかれてたら、果たして俺はそいつを自分の体から追い払うことができただろうか?

霊感に感謝したのはその時が初めてだった。

怖い話投稿:ホラーテラー ヨシモさん  

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