中編5
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輝かない未来

あの出来事は。。私が短大の時だ。

私の計画では高校3年間で保育士の免許を取り、つつがなく保育園に就職し家を出る。

当たり前のように、そう出来る筈だった。

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だが、現実は・・・・。

私は歌が下手なのだ。

コールユーブンゲンが、大の苦手。

高校2年。Dr.ストップが掛かって、陸上からも新体操からも身を引いた私は我に返った。

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・・・しまったぁ~!!

運動部に籍を置いてる場合じゃなかった!!

私は、歌を勉強しなきゃいけなかったんだ!

なぜに合唱部へ入らなかったんだろう!

私の、、ばか!バカ!馬鹿~!!!

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私の通う高校には、当時全国コンクールに毎年出るような優秀な合唱部があったんだ。

そして、クラスの半分は合唱部に所属。

(・・あぁ・・みんな考えてたんだろうな)

自分のバカさ加減にうんざりしながら、落ちて当然の保母試験を受けに行った。

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筆記試験は、全部一回でパス。

けど、歌が・・歌が・・・歌だけがぁぁぁあ!

覚悟はしていたが、見事に落ちた。

腹を括っていても、やはり落胆はするもんだ。

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で、仕方なく地元の短大へと進学。

だがこの時、既にもう一つの計画があった。

短大の2年間で、幼児教育科を卒業すれば。

高校で落ちた声楽も受かり、幼稚園教員としての資格も取得!

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保育士1級免許に幼稚園教諭2級免許取得。

あぁ。なんて輝かしくも素晴しい未来が!

二年後には、私は晴れて大手を振って家を後にできるんだ。

それが、私の第二の計画。

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それなのに、またしても邪魔が入る。

それが父の存在。。。

短大へ進み、バイトも決めて、己の道を突き進もうとする私にとって、父は邪魔で仕方がない

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バイトを終え帰宅すると・・。

「短大なんか辞めちまえ」

顔を合わすたびに言われるのだ。

朝だろうが夜だろうが、休日だろうが・・。

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そして私は家に寄り付かなくなった。

友人宅を転々としてみたり、行きつけのプールバーに泊まり込んでみたり。

学校のピアノ室の合鍵で個室に泊まったり。

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短大でのピアノ室は校舎内には無い。

校舎の外に、10室ほど個室があった。

個室の鍵は教員から借りなければならないが、

ちゃんと合鍵を作ってある私。

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狭い個室だが見つかったらマズい。

なので、内側から覗き窓にもドアの隙間にも

目張りをして光が漏れないようにする。

そして気が済むまで練習したら、突っ伏して寝る。

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私の睡眠時間は、僅かなものだった。

個室での睡眠と休み時間だけなんだから。。

そして、あの日。。。

思い出したくもない、あの日。。

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テストも近かったので、ピアノ室に泊まり込むつもりでいた。

散々練習をし、バイトの疲れの残る体を壁にもたれさせ、ウトウトしてたんだ。

勿論、寝る時には個室の電気も消す。

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どの位の時間が立ったんだろう?

低い物音で目が覚めた。

ゴンゴン・・ゴンゴン・・

遠くから聞こえてくる。

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(・・・んぁ?なんの音?)

ポケットからZIPPOを出し、火をつける。

腕時計の時間を見るついでに煙草にも・・。

時刻は、午前3時を回ったところだ。

(まだ、こんな時間じゃんよ・・誰だよ)

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自分が勝手に個室に泊ってるくせにボヤく。

・・ゴンゴン・・ゴンゴン・・

(あれ?近づいてきてる??マジ、誰?)

・・ゴンゴン!・・ゴンゴン!!

(うそ!隣の個室のドア、ノックしてる!?)

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私は、息を詰めて身を固めた。

次は、このドアがノックされるのだから。

ゴンゴン!!ゴンゴンゴン!!!

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ドアでは無かった。。

隣の部屋からこちら側の壁をノックしてる。

私の頭の中は、妙に冷静だった。

(練習、やめて大分時間経ってるし、電気を消してからも大分経ってる。)

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しかも、ピアノ室なので防音室でもある。

微かな音漏れはするけど、騒音ではない。

私は、そっと2本目の煙草に火を点けた。

音を立てないように。。。

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きぃぃぃぃいいいいいえぇぇぇえええ!!!

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私の咥えた煙草がポロリと唇から落ちた。

男の声だ。

(なっ!!!なんでっ!?)

この学校に侵入出来る時間帯は決まってる。

それに、フラリと入ってこれる場所じゃない。

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ゴンゴンゴンゴン!!!!

「う”ぇぁぁぁぁああああ”あ”~~っ!」

ゴンゴンゴンゴン!!!!

壁を殴りながら男が叫び声を上げる。

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(・・まず、どうやって敷地内に入った?)

(でもって、何故、個室に入れた?)

(で?なんで私がこの部屋に居るのが判る?)

出した答えは。。

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あぁ。。仲間の悪戯か・・。なぁ~んだ。

あいつらなら、私がいつも使う部屋知ってるもんな。

でなきゃ、納得のいく説明がつかなかった。

で、私はドアの内側に貼った黒いガムテープを剥がしに掛かった。

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テープを剥がし始めたら、その声はもっと大きくなった。

(・・うっせ~~し。)

仲間の悪戯だと決めつけた私は、こっちから壁を殴った。

ゴンゴンゴン!!!うるせーんだよっ!

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そして外に出ると、隣の個室のドアを開けようとした。

が。鍵が掛かっていて開かない。

「ごらぁ!いつまで騒いでんだよっ!」

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・・・・・・シーーーーーーーン・・・・・

突然、周りから音が消え去った。

(え?・・あれ?・・)

余りの静けさに、ちょっと腰が引ける。

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が。気を取り直して、もう一度声をかけた。

「ねぇ。。悪戯すんのやめてくんねぇ?」

返事は無い。

「ちょっと!私の睡眠時間削んないでよね」

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・・が、辺りは静まり返っている。

私のブツクサ言う声だけが、私に纏わりつく。

「もうさぁ、私、寝るから。静かにしてよ?」

そう言って、元の個室に戻った。

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今度は、朝日が入るように覗き窓も目張りを剥がしてドアをロックした。

・・ガリガリガリ・・・

(・・今度はなんだよっ!)

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暗闇の中では、あまり見えないし電気をつけた。

・・ガリガリガリ・・・

ドアを再度開けようと思って足元を見て凍り付いてしまった。

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2mmあるかどうかの、ドアの下の隙間。

汚い爪でその隙間を引っ掻いてる指。

指が差し込めるほどの隙間なんてないのに。

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深く深呼吸してロックを解除。と同時にドアを開けた。

そして私は個室を飛び出した。。

どうせ荷物は教本が入る程度のバッグ一つだ。

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振り返っても誰も居ないのなんて解ってる。

頭の中で理解してる。

個室の鍵は閉めずに飛び出したんだ。

防犯カメラの位置やアラームが鳴る場所をよけ、私は逃げた。

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短大の敷地から大通りへ向かった。

背後から聞こえたのは・・・。

う”ぉぉぉ~~れの”ぉぉぅ”ぅ”ぅ”~~!!

(・・俺の?俺の何なんだよっ!)

バクバクいう心臓を持て余してファミレスで夜を明かした。

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翌朝、気になって個室を見に行った。

昨夜の話を聞いた友人も興味津々で一緒に付いてきた。

私の入った個室のドアの下。

コンクリートなのに、爪が削れたような跡が残ってた。

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以来、私は学校にも行かず、デキ婚で地元を離れる結果になった。

アレは一体何者で、何の目的が?

勿論、友人の悪戯なんかじゃなかった事だけは確かだ。

二度と、あんな場所に近づくもんか。。

~~~~~~

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沙羅さん怖すぎます‼︎
でもああいう空間にいるからこそ変に冷静になるのもわかりますf^_^;
ただ、最後の爪はシャレになりませんね(゚o゚;;
私だったら踏んづけてから逃げるかもしれません(笑)