中編3
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美肌

「うちの嫁がさ、狂っちまってさ」

なんだよ藪から棒に。

「美肌ってやつだよ、若い頃からそうだったけど、四十超えてからやたら気にしだしてな」

どこの嫁だってそうだろ、うちだってやれサプリメントだの酵母がどうだのやってるぜ。

「そんなの可愛いもんさ、うちも最初はそうだった。でもだんだんエスカレートしてな、よくわからん高級な健康食品やら化粧品なんだかに手を出し始めてな」

「うちは子供もいないし、裕福な方ではないけど、そのくらいならと目をつぶっていたんだ」

「それでも女ってのは歯止めが効かないんだな、そのうち食事までおかしくなっていったよ、糖分や脂肪分は肌を酸化させるとかいって米や肉が極端に減った」

なるほど、最近お前が痩せたのはそのせいか、良い嫁さんじゃないか。おかげでこの前の健康診断の結果、良かったんだろ。

「茶化すなよ、それから寝不足が一番肌に悪いとかで、俺が遅く帰る頃にはもうさっさと寝ちまってるしな」

あらら、それは徹底してるな。それで、効果はあったのか?

「本人は中々変わらないって嘆いてたけどな。そりゃそうさ、そんな劇的に変わるもんじゃないだろう」

でもその程度で狂っちまったは可哀想だろ、女性なら何歳になったって綺麗になりたいって思ってるもんさ。

「そりゃ俺だってこの程度じゃ狂ってるなんて思わないさ」

何かあったのか?

「ある日家に帰ると嫁が電気も付けずに泣いてるんだ、何があったのか聞くと買い物に行こうと自転車に乗っていたら子供が飛び出してきて、避けようとした拍子に転んじまったらしい」

「幸い子供も嫁も大きな怪我はなかったんだけどな、転んだ時に顔を擦りむいちまったらしくて、右頬に目立つ擦り傷があったよ」

……そりゃ災難だな、奥さん落ち込んだだろ。

「ああ、暫くは外に出られないなんて言ってな、買い物も目深い帽子を被りながら行ってたよ」

「それから一週間くらい経ってからかな、やたら上機嫌だからどうしたのか聞いたら、頬の傷が瘡蓋になってて、それが剥がれだしたらツルツルの肌になってるって言うんだ」

そういえば子供の頃、転んだ後にできた瘡蓋剥がしたらやたら綺麗になってたっけな。

おいまさか、それでわざと瘡蓋作ってるって言うんじゃないだろうな。

「そのまさかだよ、家に帰ると傷だらけでな、聞くと瘡蓋を作るためにわざと転んだって言うんだ、さすがに怒鳴りつけたよ。でも美肌を手に入れるためだって言って聞きやしない」

それは……さすがに病的だな。

「ああ、いつ大怪我になるかわからない、精神科に見せる事も考えたよ。でも遅かった、考えてるんじゃなくてすぐに連れて行けば良かったよ。ついに本当に狂っちまった」

……なんだよ、それ

「昨日家に帰るとな、台所に血だらけの脱脂綿が積んであったよ、その横で嫁がニコニコしながら顔に包帯巻いていた」

「お前料理するか?ほら、人参とかの皮を向くピーラーってあるだろ。それでな、顔をザーっと……」

……

「転ぶとムラができて綺麗に瘡蓋ができないって言ってな。あの顔が頭から離れないんだよ」

「なあ、どこか良い医者知らないか?」

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皆様、ご感想ありがとうございます。
拙作ですが、少しでも怖いな、嫌な話だなと思っていただけたら幸いです。
今後とも精進いたしますので、よろしくお願いいたします。

痛々しい…
(゚Д゚;

ムリっす(||゚Д゚)ヒィィィ!

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ネタバレ注意

すごく文章がうまくて、こころ掴まれました。
怖かったです。次も拝読しに行きます!

読んでくださった方、ありがとうございます。