中編3
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【13話】信仰【店長】

季節は夏に差し掛かり始め、蒸し暑くなって来た時の話。

私はクーラーの効いた店長の部屋で学校の課題をこなしていた。

黙々と課題に頭を捻らせている中、家主の店長は少し前からこの家に現れるようになった女の子の幽霊?と遊んでいる。

ランドセルに書かれた名前からその子が「坂神 千里」と言う名なのはわかるけど、それ以外の事は一切不明。

店長もどうにかしてあげたいみたいだけど、それだけの情報じゃどうにもできないみたい。

私は課題と一緒に千里ちゃんの事にも頭を捻らせるのでした。

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ぷすぷす---と自分の頭から湯気が立ってきそう。

勿論立つはずもないのだけど、長い間頭を使い過ぎて爆発しそう。

息抜きをかねて、千里ちゃんがどこかに遊びに?行ってしまい、手持ち無沙汰になって読書をしている店長に話を振ってみる。

「てんちょー?神様っていると思いますか?」

「いるんじゃねぇのか?」

パタン、と本を閉じた店長が興味無さ気に言う。

「疑問形なんですか?」

「見た事ねぇから居る、とは言えないだろう。」

それでも、居ないと言わない辺り店長らしい。

「見た事ないなら居ないのかもしれないですよ?」

そもそも私達はこの世の者じゃないモノが視えるんだから神様だって居てもおかしくないのだけど、そんな意地悪な事を聞いてみた。

「しかしなぁ、居ない事を証明する事はできねぇだろ?

視る事が出来れば居る事は証明できるんだし、居るって考えた方がめんどくさくねぇ。」

正論だ、一理ある。

ソレが無い事を証明する事は出来ない、視えないのは力が無いから、技術が足りないから。

でも、在る、と言う事は見る事で証明できる。

「しかし、なんでイキナリそんな事を?」

「んー、私疑問に思うんですけど---」

ずっと不思議に思っていた事を店長にぶつけてみる。

日本でホラー、怖い話、と言えばやっぱり人間の怨念や無念。

どれも元は生きていた事のある人間の話である。

しかし、世界のホラーを紐解いてみると・・・

洋画のホラーは怪人やゾンビ、果ては悪魔憑き。

古今東西色々な話があるけれど、神様って聞かないよね?

それに、日本では悪魔・・・なんて言うのも聞かない。

そういったものをずっと不思議に思っていた。

そんな話を店長にしてみたんだけど。

「そりゃ倉科、観測できるかどうか・・・だろ?」

ちんぷんかんぷんな答えが返ってきました。

「日本でホラーや怖い話は怨念や無念って言ったけどな。

例えば、だ。沖田総司の幽霊見たって聞いた事あるか?」

「菊一文字!!!」

「お、おう・・・まぁ、沖田は菊一文字を実際には使って無かったと思われるんだが。」

「じゃあ加州清光!」

「加州清光だろうが大和守安定でもどっちでもいいわ、で?あるのか?」

いけないいけない、変な所に食い付いてしまった。

「ない・・・ですよ?」

そんな話はネットでもどこでも聞いた事は無いし、沖田どころか新撰組の幽霊なんて聞いた事はない。

「沖田総司の無念・・・どれ程なんだろうな?」

若くして剣術の天才、猛者の剣と言われ。

結核にかかり新撰組を離脱。

今際の際まで局長の身を案じ続け、剣が振れないことを嘆き続けた男。

その無念、俺達が察するに余りある。

「それ程の無念を持つのに、目撃情報等が一切ない、噂にもならない。何故か?

俺達に観測できないからだよ。いや、観測できないんだ。」

店長、わけわかりません。

「眼を瞑ってみろ。」

店長に言われるままにする。

「沖田総司の見た目を想像してみ?」

出来ない、だって見た目が分からないから。

「まぁ、そう言う事だ。」

店長が言うには、想像できないから観測できない。

いや、視えてはいても脳がソレを処理しないのではないのか?だから知覚出来ない。

結局信じて来た物次第である。

向こうでは悪魔が信じられているから悪魔憑きに合うし、悪魔祓いも出来る。

此方では怨念や幽霊。

簡単に言っちまえば半信半疑だから見えないって感じだよ。

店長はそう言って会話を終わらせた。

「なら!信じてれば視えるって事ですか!悪魔も神様も!」

「さぁ?どうだろうな?」

そう言った店長の視線は、私の左後ろを見つめていた。

私には何も視えない。

けれど、彼には何かが視えているのだろうか---

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言い得て妙と言いますか、中々に深いお話ですな。