短編2
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清掃

私の地元には自殺の名所と言われる場所がいくつも点在している。またそのせいなのか分からないが数多くの霊の目撃証言もある。

かくいう私も霊かどうかは分からないが、何度か心霊体験をした。

前置きが長くなったが、私の住んでいる街には、公営団地がいくつもあり、昔は子供たちで賑わっていたのだが、現在はお年寄りの限界集落と化している。

異臭による通報など日常茶飯事なのだ。今回はそのことに関しての心霊体験をお伝えしようと思う。

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これは私が高校生の時で、その時は学校から家に帰ってきてすぐに、録画しておいたテレビ番組を見ていたと思う。当時私は公営団地のB棟2階に住んでおり、ベランダからは正面にD棟が見えていた。

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私がテレビ番組に夢中になっていると、ピーポーピーポーと救急車の音が近づいてくるのが聞こえた。

そして家の近くで誰かが呼んだんだなと分かる程に音が聞こえると、すぐに野次馬根性丸出しでベランダに出た。どうやら正面のD棟の誰かが呼んだらしい。と、

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「臭い・・・」不意に鼻を突くような、どこか甘ったるい臭いが漂っていることに気づいた。

臭いの原因も分からなかったのだが、それよりも誰が運ばれるのか気になって気になって仕方なかった私は、部屋から双眼鏡をもってきて救急車の後方をずっと注目し続けた。

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すると、担架をもった救急隊員が要救助者を乗せて運んできた。

「うっ、、、」私は思わず声を上げてしまった。

顔見知りのお婆さんだったが、担架の上に首から下は毛布のようなものが掛けられており、首から上は出ており、その顔は白目を剥き、泡を吐いていた。

・・・・しかもなぜかこちらに顔を向けているかのように感じた。

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なんとも言えない背徳感と後味の悪さを感じながら。その日は夕飯も喉が通らず、寝てしまった。

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それから一月後、そのお婆さんは無事回復してもとの暮らしに戻ったようだった。私は多少罪悪感を感じていたので救われた気分になったが、それ以来野次馬は辞めようと心に誓った。

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と、ここまでならただの話なのだが、5年後に夕方のニュースを見ていたところ、当時住んでいた公営団地らしき場所(モザイクが入っていて確定はできない)が映し出され、特殊清掃人の特集を放送していた。

その清掃人が清掃した場所というのが、おそらくはそのお婆さんが住んでいた部屋であると私は妙に納得してしまった。

清掃-完-

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