長編27
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サイレンズネイム

今回のお話は知り合いの藍さんから聞いたお話です。

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「すまん、藍、やっぱりあの百万円返してくれ」

喫茶店で会った叔父はいきなり私に頭を下げました。

叔父の言う百万というのは私の父の借金のことでした。

私の両親は三年前事業に失敗し、高校卒業を控えた私を残して夜逃げをしました。

残された私は訳も分からないまま、債権者に詰め寄られたのですが、連帯保証人だった叔父や同じく債権者だった今の勤め先の社長が間に入って何とか事態を治めてくれました。

そして、その時から私は夜のホステスをして叔父や他の債権者に父の借金を返してきました。

先日、叔父へ返すお金が残り百万になったとき、叔父は残りの百万は返さなくてもいいと私に言いました。

私が理由を尋ねると、藍の誠意はもう十分に伝わったから、早く普通の仕事についてほしいと叔父は言いました。

そしてこの百万はいつか兄、つまり私の父が帰って来た時に今まで迷惑をかけたことを怒るついでに請求してやりたいから、あえて残しておいてほしいと頼まれました。

私は叔父の優しい申し出に大いに感動しました。

程なくして私は夜の仕事をやめ、今の職場で事務員として働き始めました。

しかし、今日の朝、叔父から突然会ってほしいと連絡があり、百万の返済をお願いされたのでした。

よくよく話を聞いてみると、叔父は麻雀が趣味なのですが、仲間内ではそこそこ腕の立つ方で勝っているうちに高レートの麻雀に誘われ、そこでも最初は勝っていたのですが、徐々に負けが込みだし、気が付いた時には二百万の負けになっていたということでした。

財布や貯金に関しては奥さんにすべて握られていて、自分の自由に使えるお金がほとんどない叔父は仕事場にまで乗り込んできそうな勢いの借金取り達を恐れ、なんと取り敢えずの返済に会社の運転資金を一部使ってしまったということでした。

もちろん奥さんが管理している貯金があるので、正直に麻雀の負けのことを奥さんに話せば貯金の解約などで対応できたはずのですが・・・・

「二百万の借金なんて・・・あいつにばれたら俺は間違いなく離婚だよ。

実を言うと兄貴の連帯保証の件でも相当やばかったんだ」

叔父の言う通り、父の夜逃げの際も最終的には叔父が説得してくれましたが、叔母さんは怒りのあまり離婚も切り出していたのは知っていました。

「それにしても、真面目なおじさんが麻雀で借金なんて・・・」

「俺も最初は勝ってたんだよ、それで周りがもっとレートをあげようというからな、でも気が付いたら引き返せないところまで焦げ付いてたんだ」

苛立ちが声に出ないように努力しようという気さえ起きませんでした。

「おじさん、それ多分詐欺だよ、最初に甘く勝たせてお金を渡して、レートアップを断りづらくしてから本人がやばいと気付く前に一気に殺してしまうやり方・・・

よくある手、おじさんはカモにされたんだよ」

「そ、そうなのか、今になって考えてみればそういうこともあったかもしれないが」

叔父の話は二百万のうち半分は他のルートで何とかなりそうなのですが、どうしてもあと百万足りないということで父の残りの借金百万の話を出してきたのでした。

とはいえ、叔父には自分の家庭の不和まで抑えて私を助けてくれた恩があったので、何とかして助けてあげたいとは思いました。

「・・・分かりました、私のできる限りのことはさせてもらいます、だから少しだけ待ってくれませんか」

「やってくれるか、ありがとう、藍」

「・・・いえ元々は私の家族の借金ですし、ただ一つだけ心配なことがあるんですが」

「・・・なんだ?」

「もし、父が本当に帰ってきたら、おばさんは父に残りの百万の請求をしますよね、でも私が今回払ってしまえばもう請求することはできないですから結局ばれますよね」

私の問いかけに叔父はあからさまにぎくりとした顔になりました。

「・・・兄貴は、もう帰ってこないよ」

叔父はうつむきながら吐き捨てるように言い放ちました。

しかし、すぐに自分が言った言葉の意味に気が付いたのか、慌てて否定しました。

「・・・あ、いや、ごめんな、藍、そんなつもりで言ったんじゃ」

「いえ、別に、気にしてませんから」

私は愛想笑いをしながら気にしていないと返しましたが、先ほどの叔父の言葉には納得のできないものを少々感じてしまいました。

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叔父と別れてアパートに戻り、とりあえず今日の日記をパソコンに書き始めました。

ブログなどで公開しているわけではありませんでしたが、日記を書いているとその日の悩み事が整理されていくような感覚がありました。

今日の悩みはもちろん叔父への返済です。

さっそくいろいろな案を頭の中で並べてみました。

「消費者金融で借りる。

・・・私、年収低いしなあ、いくらまで貸してくれるんだろ」

一番手っ取り早そうでしたが、利息は加算されるし、使ったことがないのでよくわかりません。

「うちの社長から給料を前借りする。

・・・だめだなあ、社長に話しちゃうとおじさんのところに怒鳴り込んでいきそうだわ」

一度は債権を免除してくれるといった叔父の手前、払う必要はないのかもしれませんでしたが、お世話になった恩は返したいと思いました。

「ああ、嫌だなあ、借金のことを考えてると本当に暗い気持ちになっちゃう」

三年前から苦しめられてきた借金生活からようやく解放されると思っていたのに、まさかこんなことになるとは思ってもいませんでした。

「何か、いいお金を工面する方法はないかなあ」

もやもやとした思いを抱えながら漫然といつもの流れでメールを確認すると知らない相手先から一通のメールが届いていました。

『今抱えている悩みを解決する「力」が欲しいあなたへ』

ウィルスメールとも感じましたが、その表題を見て少しだけ中身を見てみたい衝動にかられました。

丁寧な挨拶文とメールの要旨を説明する文章が並んでいましたが、私は一つの箇所が気になりました。

『我々サイレンの館がご提供する力は主に三つ、お金、暴力、情報です。簡単な審査によりあなたの望む力をご提供できるかもしれません』

いかにも胡散臭いのですが、なぜか私はぼんやりとまあやってみようかとメールの中のアンケート事項に今困っている百万のことを記入しました。

そして、アンケートを返信し終えると急に強烈な眠気に襲われ、そのままパソコンテーブルに突っ伏して寝てしまいました。

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私が目覚めたのは自分の部屋ではなく暗く広いお庭の中でした。

すこし湿った冷たい空気が頬にあたり、庭を照らす月明かりが今は夜だということを物語っていました。

「え、ここは・・・うん、夢だよね」

しばらくして意識的にこれは夢の中だということに気が付きました。

私は立ち上がり、ゆっくりと辺りを見回しました。

大きな洋風のお屋敷・・・その裏手にある庭園の中にいるようでした。

その庭園は淡く紫色に光る大きな花畑でした、私の人生の中でこんなに幻想的な光景を見たことがありませんでした。

まだ、意識はぼんやりとしていましたが、もう一度辺りを見回しました

そのとき、紫の花園の中にひときわ大きな紅い花が見えました。

近づいてみると、それは本物の花ではなく花のような豪奢なドレスを着た一人の女の子でした。

「あなた、なに?」

女の子の姿を確認した私は声をあげました。

「なにとは、ずいぶんご挨拶ね」

そう答えた女の子は私の予想よりもさらに幼い感じでした。

歳のころは十四ぐらいでしょうか、背丈もかなり小さく、細身でした。

金色の髪と人形の服のような仕立てのよさそうな紅いドレス、その整った顔立ちには高貴さが溢れ、物腰も優雅でした。

そして、彼女の足元には可愛らしい黒猫が控えていました。

「ようこそ、サイレンの館へ、ここはあなたを悩ませるすべてのものから解放する場所よ」

歌うような声で少女は告げました。

「えっ、サイレンの館って・・・あのメールの?」

「そう、ここで私と取引をすればあなたは望みの力を手に入れることができる」

その言葉に私の体は固まりました。

「その・・・力って・・・お金ってこと?」

「ああ、あなたの希望はお金だったわね、もちろんそれだけでなく、お望みであれば、暴力でも、情報でも」

少女の片目が赤く光ったような気がしました。

いえ、よく見ると彼女の眼は片方が赤色、そしてもう片方の眼は緑色でした。

「じゃ、じゃあ、さっそくそのお金のための取引とやらについて教えてよ」

その風貌からまるでおとぎ話に出てくる悪魔か邪悪な妖精との取引にも感じましたが、どうせ夢のことだからと私は少々強気でした。

「嬉しいわ、こんなにスムーズに交渉を始めることができるなんてね」

少女は小さく笑いました。

「まあ、でも、百万円ぽっちの取引だったら、ねえ、どうしようかしら」

「な、なによ、別にいいでしょ」

「ええ、まあ、それじゃあ、私の名前をあなたが言い当てるというのはどうかしら」

「え、あなたの名前?」

「そうよ、チャンスはそうねえ、今夜を含めて三夜でどうかしら」

「あなたの名前って、もし私が三日間で答えられなかったらどうなるの?」

取引というからには言い当てることができなかった時の条件があるはずでした。

「ええ、私が要求するものはただ一つだけ、あなたの魂よ」

「えっ、魂って、命ってこと?」

「そうよ、実はこの庭園のお花達は人間の魂を吸って成長するお花達なの、それで私はたくさんの人の魂が必要なのよ」

少女の声に呼応するかのように足元から音が聞こえてきました、それも複数の・・・

音はどんどん大きくなり、やがて私の足元の地面から黒い何本もの手と顔が浮かび上がってきました。

「ひっ!」

無数の顔は何かを探しているようにも見えましたが、程なくまた地面に消えていきました。

くすくすと笑う少女に対して、私はただ沈黙していました。

「あなた馬鹿じゃないの、名前なんて無数にあって当てられるわけないでしょ、そんなことに命を賭けれないわよ」

私は言い返しましたが、ふっと少女は口の端で笑いました。

「うん、もちろん百万程度の取引だから、ものすごく簡単にしてあげるわよ」

少女はまるで私の言葉を聞いていないかのように続けました。

「え、簡単にって」

「まず、言い当てるのは私のファーストネームだけでいいわ」

「えっ、それって私でいったら藍っていう下の名前だけでいいってこと?」

「そうよ、それと私のファーストネームは日本語でいうカタカナ表記で四文字、それと小文字や伸ばす文字、ンの文字、濁音、半濁音は入らないわ」

「・・・ということはアンジェリーナみたいな複雑な名前じゃなくて、アメリアみたいな名前ってこと?」

「そう、なかなか理解が早いじゃない」

私はかなり条件が絞られたことに少し考え込みました。

「それと、これは破格の条件だけど、百万円は明日さっそく先払いしてあげる」

少女は余裕に満ちた表情を浮かべました。

「??・・・先払いって、もし私が答えられなかったら、没収ってこと?」

私のその問いに少女は勝ち誇るかのように微笑みました。

「返す必要なんてないわよ、あなたが私の名前を言い当てられなくても、百万円はあなたにあげる、どう、悪くない話でしょう」

私はその条件にしばらく考え込んで、そして顔をあげました。

「いいわ、その条件でやりましょう」

私の言葉に少女は満足したように小さくうなずきました。

命を懸けた勝負ということはわかっていましたが、どうせここは夢の中というお遊び的な感じはずっと私の中にありました。

その晩、私は夢の中で東の空が白むまで考え付く限りの四文字の名前をあげましたが、彼女の名前を言い当てることはできませんでした。

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再び目が覚めたのは私のアパートの部屋のパソコンデスクの前でした。

どうやらパソコンをしながら突っ伏して寝てしまったようでした。

顔をあげて、意識が覚醒してくると慌ててメールボックスを確認しましたが、サイレンの館からというメールは存在していませんでした。

「えっ、メールもない、どこからが夢だったんだろう、変な夢だったなあ」

そこで私はインターネットでサイレンの館を調べてみましたが、そんなものは検索で出てきませんでした。

「あれ、おかしいな」

なんだか以前心霊スポットのサイトでサイレンの館というスポットを見かけたような気がしていたのでおかしいなと感じました。

「記憶違いだったかな」

私は不可解な思いを残しながらもしょせん夢の中のことと気にせずそのまま着替えて出勤しました。

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お昼休みに私は近くの銀行にいました。

叔父に返済する百万を工面するためにとりあえず自分の手元のお金は全部引き出しておこうと考えたからでした。

「確か三千円ぐらいは残ってたと思うけど」

私はATMで通帳を記入してみました。

「えっ!」

最初は見間違いかと思いました。

しかし、確かに残高で1,003,387と出ています。

通帳には今日付で百万が振り込まれていました。

振込元はサイレンズハウスと印字されていました。

私はすぐに窓口に行き、係の女性職員に振込のことについて問いかけました。

「こちらに関しましては身に覚えのない振込ということでしょうか?」

いまいち要領を得ていない様子の窓口の女性は逆に私に尋ねてきました。

「・・・いえ、そういうわけでは、ないんですけど」

「では、何が問題なのでしょう?」

まさか夢の中の話をするわけにはいかず、少しの間考え込みましたが、次の瞬間、私は今からこのお金引き出せますかと窓口の女性に言葉を発していました。

まるで夢の中にいるように窓口で百万の束を手にした私は午後体調が悪くなったと嘘をついて会社を休み、その足で叔父に連絡を取りました。

会ってお金を差し出すと叔父はしきりにお礼を言いながらもどうやって工面したのかを尋ねてきましたが、私自身もよく事態が分かっていませんでした。

また、とにかくこの嫌な借金を早く片付けたいという思いもあったので何も事情は説明せずお金を叔父に渡しました、もちろん領収書は切ってもらいました。

その日の午後私はネットで少女の言った条件に合う外国人の女の子の名前を調べまくりました。

そうこうしているうちに二日目の夜になり、私はまたパソコンデスクでいつのまにか眠りについていました。

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「さあ、今夜もがんばってね」

昨夜と同じ紫の園の中で私は身を起こしました。

少女は私のそばに立っていました。

「やっぱり夢じゃなかったんだ」

「いえ、ここは夢の世界・・・サイレンの館よ」

少女の物言いに私は自嘲気味な笑みを浮かべました。

しかし、私は今の状況に少し慌てました。

今日の午後に必死で調べた名前をコピーしたファイルを見ることができません。

そもそも夢の中なので、自分の身一つしか持ち込むことはできないことは少し考えればわかることでした。

仕方なく私は覚えている名前を答えようとしましたが、その時あることに気が付きました。

「ちょっと待って、この取引よく考えたら、仮に私があなたの名前を言い当ててもあなたがそれを認めないこともできるじゃない」

何でこんな簡単なことを最初に考えておかなかったのか悔やまれるほどの失態でした。

「私が嘘をつくってこと?」

「そうよ」

少女はぞっとするような視線で私をにらみました。

その心まで貫通するような視線に耐えられなくなって、私は目をそらしました。

「この私がそんな汚い取引をするはずがないでしょう!」

氷のような声が響き、私の背中を悪寒が駆け上がりました。

少女がそう叫んだ一瞬、その表情に怒りが見えました。

「ご、ごめんなさい・・・ごめんなさい」

私は何回も何回もごめんなさいと謝りました。

いつもの私はこんなふうに許しを請うことなんてしません。

しかし、私はそのとき目の前のこの愛らしい少女が怖くて仕方がありませんでした。

その恐怖の根源はどこからかと言えば、言動や姿などというものではなく、その存在そのものが恐怖に感じるようになっていました。

もはや本能的に私はこの少女を怒らせないためだったらどんなことでもできそうな気がしていました。

そんな私の様子を見て少女はにやりと笑うと再び元の表情に戻りました。

「そういうあなたこそ、さっそく私の振り込んだお金は使ってしまったみたいじゃない」

その言葉は私の思いをさらに複雑にしました。

「もちろん私は汚い真似なんてしないけど、あなたはもうこのゲームを全力でやり切ることしか残っていないのよ」

私はしばらく逡巡していましたが、ここ何年か人を接待する仕事をしてきた目から見ても先ほどの少女の怒りは本物だと感じました。

どのみちもう彼女を信頼する前提で答えるしかないのでした。

私は再び頭に残っていた四文字の名前を答え続けました。

しかし、再び東の空が白むまでに彼女の名前を当てることは出来ませんでした。

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三日目のお昼休み、私はある人に相談しました。

うちの取引先の営業のお姉さんである黒川さんです。

彼女はいわゆる霊感の強い人で以前も私が軽い考えで心霊スポットに接触して取り込まれそうになったところを助けてくれたことがありました。

私は彼女行きつけの喫茶店でランチを食べながらこれまでの夢の取引と叔父への借金のことを話しました。

「瑞季さん、どうでしょうか、やっぱりただの夢のお話でしょうか」

少しの間、瑞季さんは考えていましたが、やがてぼそりと呟きました。

「う~ん、今のところ勘だけど、多分ホンモノ・・・かな」

私にとっては夢の話なんか気にしなくていいわよと答えてほしかったのですが、彼女も本物と感じているようでした。

「それにしても簡単な詐欺に引っかかったわね」

呆れたように彼女は詐欺という言葉を出しました。

「えっ、詐欺って、少なくてもお金は振り込んでくれましたよ」

「最初に甘い条件で気前よくお金を渡して断りづらくしておいて、本人がやばいと気付く前に一気に殺してしまうやり方・・・

よくある手、あなたはカモにされたのよ」

あれ、どこかで聞いたことのある物言いでした。

瑞季さんはパソコンの中の日記なんかも覗かれて偶然を装って接触されたのかもと推測しているようでしたが、今となっては真相はどうでもいいことでした。

「まあ、とにかく話をまとめると、あなたは今夜まで・・・つまり約八時間以内にその夢の中の少女の名前を知っている人間を見つけないと死ぬ。

・・・これが今の現状よ」

「えっ、名前を知っている人間を見つける? 名前を言い当てればいいんですけど」

「・・・う~ん、これも勘だけど、その彼女があなたを嵌めようとして出した問題だったとしたらすぐに思いついたり調べたりできるような一般的な名前じゃないような気がするんだよね、となるとあてずっぽうで答えないといけないんだけど」

瑞季さんは携帯電話を取り出して電卓を起動させたようでした。

「わかりやすく説明しようか、あなたが眠りについて夜明けまで約九時間、仮に五秒で一つ名前を言い続けられたとして、夜明けまでに・・・

・・・大体六千回くらい答えられるわね」

「・・・はあ」

「そして、あなたの言ってた条件の四文字の名前が何通りあるかといえば、使える文字がカタカナで四十五文字だから、四文字ということはその四乗・・・

・・・大体四百万通りぐらいかしら」

「えっ、そんなに!」

「つまり確率にして六千割る四百万で・・・約0.15%・・・ほぼゼロよ。

だから問題の賭けとしては当て推量の線はほぼ詰んでる。

彼女の名前を知ってる人間を探す方がまだ目がある気がするわね」

彼女の話を聞いてようやく自分の置かれた状況が分かってきました。

冷たい汗が身体から噴き出してきます。

「とりあえず、知ってそうな人に片っ端からあたってみようか」

そういうと瑞季さんは携帯電話でどこかに電話をかけ始めました。

「・・・あっ真央姉ごめんね急に、実はね・・・」

瑞季さんは真央姉と呼んだ人としばらく話していましたが、瑞季さんの口調からどうもその人はサイレンの館については知らないようでした。

「えっ、橘さん・・・う~ん、たしかにあの人なら」

不意に橘さんという名前が出てきました。

しかし、その名前を口にした時から彼女の表情が曇ったような気がしました。

「・・・ああ、うん、あんまり気乗りはしないけど聞いてみるわ」

瑞季さんは電話を切りました。

「誰なんですか、橘さんって」

私は彼女の表情の変化も気になったので尋ねてみました。

「・・・心霊関係の事件屋」

一言だけ吐き捨てると瑞季さんは再び電話を掛け始めました。

「・・・もしもし、黒川です、久しぶり、ねえ、突然で悪いんだけど・・・」

真央さんの時と同じようにサイレンの館のことを聞こうと話し始めました。

「えっ、近くにいるからこの喫茶店に来るの?・・・わかったわ」

瑞季さんは電話を切りました。

「くそっ、久しぶりだから直接会いたいって、はぐらかしやがって」

忌々しそうに瑞季さんは叫びました。

「そんなに危ない人なんですか?」

「・・・普通心霊関係の仕事っていうのは表にはあまり出てこない裏の仕事なんだけど、あいつはその中でもさらに裏の仕事も請け負う人間、だから掃除屋なんて呼ばれたりすることもあるけど、あまりかかわりたくない部類の人間よ」

かかわり合いを持ちたくないとは言いつつも電話の相手の要望に従ったということはその人なら今回の悪夢のことを知っていなくても、何か手掛かりぐらいは聞き出せるという期待があることは様子からわかりました。

程なくして厚手のコートを身に着けた男の人が店に入ってきました。

その男性は瑞季さんの姿を確認すると私達の席に近づいてきました。

私は最初瑞季さんの口ぶりから気持ち悪い中年の男性を勝手に思い描いていましたが、その男性はぱっと見た感じでは渋い男前で私は驚きました。

しかし、間近で見るとそんな見た目の優美な顔立ちとは全く異なる雰囲気がすぐに伝わってきました。

初めて会う私を観察するような視線、その人はあまり健康そうには見えませんでした。

顔色がとても悪く、なにより目がひどく昏い色に沈んでいてとても不気味な感じがしました。

「お久しぶりです、珍しいですね、あなたの方から連絡をくれるなんて」

「・・・私は別に会いたくはないんだけどね」

露骨に嫌そうな顔をする瑞季さんにこの人の情報で命がかかっているかもしれない私は穏便に進めて欲しいと心の中で願いました。

そして、とりあえず橘さんも飲み物の注文をして落ち着いたところで私は彼に今回の夢の話を始めました。

特に表情を変えずに彼は私の話を聞いていたのですが、私の口からサイレンの館という言葉が出た途端、彼の表情が一瞬陰惨にゆがんだように感じました。

「えっ、あの、私何か変なこと言ったでしょうか・・・」

私はその顔を見てぞっとしてしまいすくみあがってしまいました。

その様子を見て瑞季さんの方が橘さんを睨みつけました。

「何か知ってるの?」

「ええ、知っていますよ、というより私も驚いているところです、その名前をあなたから聞けたことに」

この人は今回の悪夢のことについて何か知っている、私はその言葉に少し希望が開けた気がしました。

「あなたがサイレンの館と接触したのですか?」

橘さんは唐突に私に問いかけてきました。

「は、はい、パソコン・・・えっとインターネットのサイトやメールが送られてきたり・・・」

私の話を聞きながら彼は意味の取れない笑みを浮かべていました。

「波長の合う特定の人間に向けてインターネットの心霊サイトやメールで接触を図っているというのは噂で聞いていましたが、いやあ、あなたはレアな体験をしましたね、宝くじに当たったようなものですよ」

何が嬉しいのか、微笑みながら気分が高揚しているようでした。

「あの、そもそもの話で申し訳ないんですが、今回私が遭遇したサイレンの館というのはいったいなんなのでしょうか?」

私は少し状況を整理する意味も込めて橘さんに質問をしました。

「ふむ、そうですね、それじゃあ、簡単に説明しましょうか」

私の問いかけを受けて、橘さんは一拍、間を置きました。

「まず、サイレンというのは英語ですが、日本人にはセイレーンと言った方が分かりやすいかもしれませんね」

確かにセイレーンという単語は聞いたことがありました。

「多くの場合美しい歌声で人を惑わす半人半鳥もしくは半人半魚の妖怪として描かれますが、この場合は厳密に言うと半人半鳥の方を指します」

「鳥・・・ですか?」

「元々あの館はアメリカの将校の持ち物だったのですが・・・まあ、籠の中の雛鳥という意味でしょうか・・・」

そこまで言って橘さんは話を止めました。

「いや、やめておきましょう、あの館の背景に関する話についてあなたは聞かない方がいい、この話は彼女にとってあまりいい意味のものではありません」

そう言うと橘さんはあらためて私を値踏みするように見つめました。

「貴方は思ったことが素直に表に出てきそうだ、彼女の気分を害しそうな要因は一つでも除いておいた方がいいですね」

何だか馬鹿にされたような気もしましたが、橘さんはとても重大なことを口にしました。

「えっ、このサイレンの館というのは現実の世界に実在するんですか?」

「もちろんしますよ、そうでなければいったい何があなたの口座にお金を振り込んだりするんですか」

拍子抜けしたような顔をして橘さんは答えました。

「じゃ、じゃあその館の方に実際に行くこともできるわけですよね」

夢の中だけの出来事だと思っていたものに現実世界の手掛かりが現れ、私は少し明るい希望が出てきました。

しかし、反対に橘さんの方は表情を昏くしていました。

「・・・お勧めしません」

「えっ?」

不意の警告に私は一瞬橘さんが何を言っているのか理解できませんでした。

「全くお勧めしません」

とても強調したいことなのか、繰り返して同じことを忠告されました。

「私も以前現実世界の方のサイレンの館を二度探訪したことがあります」

行ったことがあるという言葉に驚きで叫びそうになるのをぐっと抑えました。

「そして、二度とも死にかけました」

彼は小さく呟きました。

「もちろん、私は探訪にあたり考え付く限りの用意と準備をしたつもりでした。

ですが、あの館の前では全く意味はありませんでした。

私が今こうして命があるのは全くの偶然というほかありません」

橘さんの話を私は食い入るように聞いていましたが、瑞季さんから制止が入りました。

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「その館が危ないというのはもう十分わかったわよ、それでその館の女の子の名前を知ってるの?」

瑞季さんの催促を受けて、橘さんは懐から手帳を取り出しました。

そしてパラパラとページをめくり、一枚のページを破り取ると裏返しにしてテーブルの上に置きました。

「どうぞ、ここに彼女の名前が書かれています」

「えっ、彼女の名前知ってるんですか、よかった」

置かれた紙の裏側に書かれているようなので、私はすぐに紙を受け取ろうとしましたが、彼の指は破られた紙の上から動きませんでした。

「五十万でいいですよ」

私は最初彼が何を言ったのかわかりませんでしたが、すぐにこの情報を渡す対価のことを言っているのだと気が付きました。

「ご、ごじゅうまん!」

「安いものでしょう、もちろんローンで構いませんよ、何回かに分けて払っていただければ」

私は助けを求めるかのように瑞季さんの方を見ましたが、彼女は黙っていました。

おそらくこの代金を支払ってもこの情報は妥当と感じているのだと思われました。

「・・・わかりました」

私は渋々了承しました。

また、借金が増えるのは嫌でしたが命には代えられません。

しかし、橘さんはまだ紙から手を放そうとはしませんでした。

「それと、一つだけお願いがあります」

「ま、まだなにかあるんですか?」

「もし、夢の中の彼女が誰から自分の名前を聞いたか尋ねてきても、私から聞いたことは教えないでいただきたいのです」

意味がよく分かりませんでしたが、私はその条件を了承しました。

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私は荒い息を整えながら、再び夢の世界に帰ってきたことを認識するとようやく立ち上がりました。

夢の中の少女の名前を教えてもらったとはいえ、眠りについてしまえばそのまま死んでしまうかもしれなかったので、私はおびえながら布団に入っていました。

私は再び庭園の中の少女の前に行きました。

「こんばんは、それじゃあ今夜も始めましょうか、分かってると思うけど、今夜私の名前を言い当てられなかったら、あなたの命をもらうわよ」

「わ、わかってるわよ」

声がうわずってしまいそうなのを懸命に抑えて私は言い返しました。

「あ、あなたの名前は・・・」

呼吸を整えると自然と身構えるような姿勢になっていました。

もし橘さんに教えてもらった少女の名前が間違っていたら私は死んでしまう。

凄まじい恐怖に涙が溢れました。

絶望的な死の恐怖でした。

私は覚悟を決めて橘さんの手帳に書いてあった目の前の彼女の名前を言い放ちました。

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「あなたの名前は・・・サミエナ、ね」

しかし、少女は全く動じたそぶりは見せませんでした。

そして、私の言葉に少し首をかしげました。

「えっ・・・なに・・・あなた、いまなんて言ったの?」

少女の反応があまりに鈍いので、私は魂を奪われる自分を想像してしまい思わず膝から崩れ落ちそうになりました。

「あ、いや、サミエナ・・・さん、と」

しかし、私が繰り返して告げた名前に少女は体を震わせました。

そして、その大きな目がさらに大きく見開いたような気がしました。

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「う、うそ・・・うそよ、あなたごときの人間が私の名前を言い当てるなんて」

少女は全く想像していなかったのか、私の答えた名前を正解とあっさり認めました。

「あ、あたり、よ、よかった」

私は少女の言葉を聞いて体から力が抜けそうになりましたが、今こそ逆に毅然とした態度で自分をしっかり保たないと思い奮い立たせました。

「さ、さあ、名前を当てることはできたんだから、勝負はこれで終わりね!」

私は鋭く彼女に言いきりました。

しかし、少女は何がおかしかったのか、面白そうな表情になって小さく笑いました。

「ふふっ、そうね、名前あてのゲームはこれで終わりね。

でも、一発で私の名前を言い当てたということは誰かから私の名前を教えてもらったのかしら?」

橘さんから口外しないでほしいと言われていたので、私は薄笑いを浮かべただけで彼女の問いをやり過ごしました。

「私の名前を知っていてまだこの世で生きている人間ねえ、ちょっと興味があるわね」

少女はどこかぞっとするような表情を浮かべました。

「そう言えば、あなた両親が行方知れずなのよね」

何でそのことをと驚きましたが、その少女の問いかけに私はさらにひどい悪寒がしました。

サミエナは間違いなく私から橘さんのことを聞き出そうとしている、そして、今彼女は私の失踪した両親のことを口にしました。

導き出される答えは一つしかありませんでした。

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「・・・確かに私の両親は失踪していて、私はその行方を捜しているけど、それはここでは何の意味もないことだわ」

自然と私はそう叫んでいました。

「うん? どういうことかしら」

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「だってあなたはフェアな取引を大事にする気高い人だと信じています。

私の両親の情報を仮にあなたが持っていたとしても、それをあなたの名前を教えてくれた命の恩人の情報と交換しようだなんて、そんな汚い取引を持ちかけてくるはずがないですから・・・」

サミエナは口元に笑いを張りつかせたままでした。

「・・・ふうん、なるほどねえ」

にやつきながら少女がゆっくりと近づいてきました。

私は反射的に一歩後ろに身を引きました。

「・・・それは確かに卑劣な取引ねえ」

私は震えていました、どうしようもないぐらいにガタガタと全身で震えていました。

「・・・そんな風に先に言われてしまうと仕方がないわね」

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整っている少女の顔の幼い唇がきゅっと引き締まりました。

「・・・勝負は貴方の勝ちよ」

少女の敗北を認める言葉に今度こそ力が身体から抜けていきました。

しかし、はっと我に返った瞬間、私の立っている場所は煌めく紫の花粉に包まれていました。

舞い降りる幻想的な光の中、視界が歪んでいきます。

庭園の紫の花園中からおやすみなさいと歌声が聞こえてきました。

目の前が真っ白でした、消えていく意識の隅でサミエナは最後に呟きました。

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「貴方とはまたどこかで会いたいわね、おやすみなさい、悪夢は終わりよ」

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少し体が熱をもっているような気がしました。

夢の中ではそれほどの時間は経っていなかったはずですが、部屋の窓からは朝日が差し込んで鳥のさえずりも聞こえていました。

布団の横の目覚まし時計を見るとちょうどいつも起きている時間でした。

私はゆっくりと布団から起き上がると、台所まで行きコップでお茶を飲みました。

「・・・危なかった、もう少しで私の命と橘さんの命が天秤にかかるところだった」

あの少女がもし橘さんのことを聞き出そうと前のめりになれば、その性格からしてもう引き返すことはできなかったはずでした。

「・・・橘さんはこうなることが分かってたんだ、それでも私に情報をくれたんだ」

夢の中に持っていくことはできないことはわかっていましたが、御守り代わりにとパジャマのポケットに入れていた手帳のページを取り出しました。

このメモをどうしようとも考えましたが、私はもうこんなことは早く忘れたいと感じ、流し台でメモに火をつけ燃やしました。

橘さんのメモが灰になったとき、不意に玄関のドアが叩かれました。

「おーい、生きてるか」

瑞季さんの声でした。

万が一、私の命が夢の中で持っていかれた時に部屋に残った私の死体を警察に届けてもらうようにお願いしていました。

私はすぐに返事をして玄関の扉を開けて外に出ました。

「ありがとうございます、瑞季さん、おかげさまで何とか生きてます」

「そう、よかったわ、それじゃこれ渡しておくわね」

瑞季さんは自分のカバンの中から封筒を取り出しました。

受け取って中身を確認してみると、一万円札が束で入っていました。

「えっ、瑞季さん、これ」

「五十万入ってるから、もうさっそくあいつに返しなさい、毎月少しずつ返してくれればいいから」

私は瑞季さんの好意の真意は感じ取れていました。

それでも一言だけは反論しておこうと思いました。

「瑞季さん、気持ちはわかりますが、橘さんってそんなに悪い人じゃないような気もするんですけど」

「・・・あなたがどう感じてるかは知らないけど、悪いことは言わないからあいつへの借りはお金で済んでいるうちに返しておきなさい。

そうじゃないとその借りがどんな形に化けるかもわからないんだから」

おそらく私なんかよりずっと彼のことを知っている瑞季さんの言うことなのだから私は素直に従うことにしました。

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橘さんに連絡を取ると早速その日のお昼休みに会うことができました。

私は彼に瑞季さんから借りたお金の封筒を差し出しました。

「・・・確かに」

そう言うと、彼は中身を確認せずに封筒を自分のカバンに入れました。

「えっ、あの」

余りの呆気ないやり取りに私の方が慌ててしまいそうでした。

「うん、ああ、領収書が必要でしたら切りますよ」

「あ、いえ、中身を確認しないのかなあと思って」

「ああ、なるほど、でもあなたがこうして返しに来たわけですから少なくとも五十万に近いお金は入っていますよね」

彼が何を言っているのかよくわかりませんでした。

「・・・もちろん私の生活と探究にはいささかお金が必要になりますから、お金そのものが必要ないというわけではないのですが、あまりお金そのものには興味がないんです」

彼の言葉の深い意味を理解することは私なんかには到底不可能でしたが、簡単に言うと自分はお金ではなくお化けにしか関心はありませんと言っているようでした。

一応領収書をもらった後、瑞季さんからはあまりかかわり合いを持つなと忠告はされていましたが、あらためてあの少女、サミエナのことを聞いてみました。

「あの少女はいったい何なんでしょう、人間なんですか、悪魔なんですか?」

私の問いに橘さんは本当に楽しそうな様子で頷きました。

「そうですね、こういう事象を説明するときに人はよく悪魔という表現を使いますね、でもそんな簡単なものではないんです・・・それらを探求することこそが私のライフワークですよ」

はぐらかすように橘さんは笑みを浮かべました。

「・・・ところで、彼女は僕のことを気付いていましたか?」

おそらく聞いてくるであろうと思っていたことを橘さんは尋ねました。

「そ、それなら大丈夫です、私に名前を教えた人物がいることまでは気付いていましたが、橘さんにはたどりつきませんでしたし、私もしゃべりませんでした」

ここは私が今回最も頑張ったところだったこともあり、橘さんも心配していたことだと思ったので特に強調して話しました。

しかし、得意げに話した私に対して彼が発した言葉は全くの予想外のセリフでした。

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「そうですか、気づきませんでしたか・・・残念だなあ」

彼は確かに残念と呟きました。

私があれだけ橘さんのことを隠そうと注力したのに、彼は残念と言ったのでした。

しかし、私にしゃべらないでくれと言ったということは彼も理性の上ではそれが自分の命にかかわる危険なことであるということはわかっていたはずでした。

それでも、出てきた残念という言葉は彼の奥底にたたずむ昏い闇から染み出してきた心の声のような気がしました。

この人は今日にでもサイレンの館へ三度目の探訪を行い、命を落としてしまうかもしれない、そんな恐ろしい予感さえ浮かんできました。

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この人は既に確実な死と一緒に生きている・・・それほどの危うさを感じるほどの言葉でした。

けれど、決して自分の希求をやめたりはしない、彼のしていることは世間的には多分異様なことなのだけど、私には彼の気持ちが少しだけわかってしまいました。

私はそんな彼を見ながら、身体の奥から冷たい恐怖と諦めの思いがせりあがってくるのを感じずにはいられませんでした。

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ゴルゴム様の心の声、実はこういうのが何気に嬉しいんです。

サミエナちゃんはむしろゴルゴム様の作品に出てきそうなダークファンタジー風のキャラクターですね。
ゴルゴム様の今冬予定のお話も楽しみにしています。

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ポチとか言ってて忘れるという・・健忘症な私を許してください(*・ω・)*_ _))ペコリン

あぁっ!ムチやピーーーーーだけは、ご勘弁を!!

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