長編14
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棄てられた道…

私とシノブは、私が高校三年の頃からの友人です。

出会った頃は、お兄さんだったシノブが、

オネエ言葉で話す様になってからも、私達の関係は変わることはなく、今でも仲良しです。

私が20歳そこそこだった頃は、毎日と言っていいほど、シノブとつるんで飲んでいました。

そんなある日の事…、

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居酒屋で、なんだかんだ話しながら飲んでいると、

シノブの携帯が鳴りました。

相手は、私も顔は知ってる、シノブの友達からで、

これからドライブに行こうと誘いの電話でした。

そのお友達G君と彼女のiさん、そして私達で

夜景を見に行こうと。

私は、さほど夜景に興味はなく、寒い時期だったので、

「このまま、飲んでるよ。シノブ、行っておいでよ。」と言うと、

「何が楽しくて、今更あの2人のいちゃつく様を見に行く必要がある?俺も行かない。」と私に言い、

G君にも、

「行かなぁい。」と返事して、シノブは電話を切りました。

ところが、半時間もした頃、

「探したってぇ。」

そう言って、G君とiさんが、私達の飲んでいる居酒屋に現れたのです。

聞けば、私とシノブのよく行く居酒屋を、一軒ずつ、私達を探して回って来たと言います。

どうぞと声をかける間も無く、私達の座る席に、

シノブの横にG君がドカッと、私の横にiさんがサッ!と座りました。

私は、G君とiさんを見知ってはいましたが、

それまで話をしたこともなく、何だか馴れ馴れしい2人をとても疎ましく思ったのですが、

シノブは、

「なんだよ。わざわざ来んなよ。来たなら、まぁ、飲めよ。」と2人に水割りを作ろうとしました。

すると、G君が、

「良い大人の男女が、向かい合って焼酎なんて飲んでないでさぁ。

夜景、見に行こうってぇ。」と言い出しました。

何だか、私とシノブを、いい仲、だと思っている様で、

その感覚にも、私はまた、

「なんだこの人。ゲスい人だな。」と、思いました。

シノブはそんな私に気づいたのでしょう。

「にゃにゃみ、寒がりだからね。行かないよ。」と言うと、

iさんが私に向かって、

「平気だよぉ〜。車の中からみればいいんだからぁ。

ねぇ、行こう?私、にゃにゃみちゃんと一回、話してみたかったの。」と、笑いかけて来ました。

私は、

「私、そんなに夜景は興味ないし。」と、

素っ気なく断りましたが、

iさんは、

「そんなこと言わずに、行こう?

ドライブしようよぉ〜。」と私の腕に絡んで来て、

私にもたれかかって来ました。

G君はG君で、

「シノブ、付き合い悪いぞ。

ドライブ行こうぜ。車、俺の出すからさぁ。」と、

しつこい…。

何でしょう、とてもタチの悪いこの2人…。

ニコリともしない私に、iさんは顔を近づけて、

「夜景、見に行こうってぇ。」と、

なぜか甘えた声でベタベタくっついてくる。

無性に、気持ち悪い…。

大嫌いなタイプだと思ったその時、

シノブが、

「わかったよ、にゃにゃみ、行こう。」と言いました。

私は、えっ?と顔をしかめ、

「嫌だってば。寒いし、絶対、行きたくない。」

と言いました。

「さっと行って、さっと帰ってこよう。

こいつら、マジでしつこいわ。」と言い、

シノブは立ち上がります。

G君とiさんは、

「ヤッタァー!」と声をあげ、

「来るまで待ってるなぁ。」と言うと、サッサと店を出て行きました。

私はシノブに、

「私も行くの?嫌だよ私。何なの、あの人達。

私、あーいう人達、嫌いなんだけどな。」と言うと、

「俺も好きじゃないよ。あいつら、すげームカつく。」

そう言うシノブの顔は、怒っていました。

「ムカつくなら、行く事ないじゃない。」

そう言う私に、

付き合いを切るために行くんだよ

シノブはそう言いました。

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私とシノブは、G君の車の後部座席に乗り込みました。

私は、シノブにも少し苛立っていたので、窓の外をずっと見ていました。

シノブも、G君に話しかけられても、

「ウンウン。」ぐらいの相づち程度の返事しかしません。

私に至っては、話しかけられても、返事もしませんでした。

最初は、私達に話しかけて来た前席の2人も、

私達そっちのけで、2人で話し出し、

そんな私達を乗せて、車はズンズン、山道を上がって行きました。

私は何しに、一緒にいるとなぜか気分が悪いこの人達の車に乗って、見たくもない夜景なんぞ見なくてはいけないのか。

シノブもシノブだよ。

はっきりと断れば良いのに。

何が、付き合いを切るためによッ。

だいたい、いつになったら、夜景は見えてくるのよ。

どこまで山を上がるのよ。

そこで、ふと、私は冷静に辺りを見回し、車の前方に目を向けました。

車のライトに照らされて見えるのは、

漆黒の闇。

両側には鬱蒼と木々が覆い茂り、車一台が通れるほどの道幅…。

どんなに走っても、街頭の1つもありはしない、そんな暗闇の中の山道を、ズンズン、ズンズン、走って行きます。

何、この道?

本当に、この先、夜景が見えるとかなんかに着くわけ?

普通、夜景が見えるとこって、もう少し車通りがあったりしないか?

私は、目だけ動かす様な感じで、キョロキョロと辺りを確認するのですが、

全く、見当もつかない山道。

前席の2人は、

「スッゲーな、この道。真っ暗だよ。」とか

「怖いね〜。雰囲気あるわぁ。」とか言って、

何だか楽しげです。

「こんな所で事故ったら、シャレになんねーな。」と言い、それを聞いて大声で笑う前席の2人に、心底嫌気がさしながら、

シノブの方をチラッと見ました。

シノブはその私の視線に気づいたのか、私にチラッと目をやり、そして私の手を握ってきました。

そして、声には出さず、

「てを、はなすな。

ぜったい、はなすな。」

と、口だけ動かしました。

私は、軽くうなづいて、また、前を見ました。

車はどんどん、真っ暗闇と細い細い道を走っていきます。

道…と呼ぶのは、

ライトに照らされ、苔むした、ボロボロのアスファルトが見えるから…。

それも次第に、道を挟んで左右から、大きなシダの葉や、草が伸びてきて、覆い隠す様になって行きます…。

その中を、スピードこそ出ないものの、止まることなく、

どんどん、どんどん、走っていく車…。

さっきまで、バカ笑いをしていた前の2人も、

G君は黙々と前だけ見て運転をしていて、

iさんも、おとなしく前を向いて座っています。

帰り…、バックで帰るの?

どこかで、切り返せるのかしら…。

えらい、荒れた道だなぁ。

これはもう、夜景とか、本気でどうでもいい。

ちゃんと家に帰れるかしら。

電波も繋がらないじゃない…。

何なの、ここ。

どこなの、ここ。

何すんのよ、こんな真っ暗ん中で。

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「なぁ、シノブ…。」

不意に、G君がシノブを呼びました。

私はその声に、少し驚き、とっさにバックミラーを見たのですが、

G君は、ミラー越しにシノブに目をやるでもなく、

ただ前を見て、運転をしています。

シノブが、

「あ?」と不機嫌に返事すると、

G君は、

「お化け、いる?お化けッ!」

と、

小馬鹿にした様な言い方で聞いてきました。

「シノブ君がサァ、視える人だって聞いてぇ〜。

ここ、誰も近寄らなくなった道でサァ、

前に、違うメンバーと来た時も、霊感のある女の子が取り憑かれちゃって大変で〜、

でもその子、どこか信じられないっていうか、

嘘っぽくてぇ〜。

シノブ君なら、ちゃんと視えるって聞いたから、何がいるのか、教えて欲しくテェ〜。」

「なぁ、シノブ、マジで、この辺どうなの?

いるの?いないの?

つーか、お前も本気で視えてんの?

妄想とか幻覚じゃねぇの?」

そう言うと、G君はまた、バカみたいに大声で笑い、

iさんは、「ヤァダァ〜、そう言うのホント気持ち悪いからぁ〜」と言いながら、

あんたの方が気持ち悪いよと感じる、甲高い声で笑いました。

「ここで、降ろして?」

シノブは静かにそう言いました。

そう言うシノブに、G君は、

「えっ!なになに?お前、もしかしてマジ、視えてんの?

除霊とかすんの?」

iさんも

「すごぉい、本当に?!

何、どこ?怖い〜!すぐそばに居るの?ドコォ?

除霊って何、何すんの?呪文とかお経とか読むの!?」

と、興奮しだしました。

私は、驚き、

シノブの顔を見ましたが、シノブは表情1つ変えず、

「早く。止めて?」

そう言って、足を上げて、G君の座る運転席をドンドンと蹴りました。

「わかったよ!

つーか、降りる時、変なもん、入ってこないだろうな!」

G君は笑いながらそう言い、車を停めました。

「ヤダヤダ、マジで怖いんだけどッ!

何すんの?どうするのッ?シノブ君ッ!」

iさんは、ずっと興奮して、キーキー声です…。

車が停まった瞬間に、シノブは私の耳元で、

「おいで。帰ろう。」と言い、手を引きました。

私は手を引かれるがまま、

驚いたまま、訳が分からないまま、

車から降りました。

車から降りた途端、来た道を、今度はドンドン歩いて降りていく私とシノブに、G君とiさんは、少しの間があった後、驚いた様に車から飛び降りて来て、私たちを追いかけて来ました。

「待てよっ!おいっ!シノブッ!待てよっッ!

何だよっ!何やってんだよッ!、おいっ!」

後ろから走って来たG君は、シノブの服を後ろから掴み、グイッと自分の方に引っ張りました。

少し遅れて走って来たiさんは、

「何?何で?除霊は?

どうしたの?にゃにゃみちゃん、どうなってるの?」と息を切らしながら聞いて来ました。

どうなってるのもこうなってるのも、

私にもわかりません。

何も答えずいると、

G君がシノブに、

「お前よぉ〜!ここまで来たんだから、視えてんなら、根性据えて、なんかしろよぉ〜ッ!

女、連れてんだからサァ、良いとこ見せろよぉ!」と

さらに訳のわからないことを言い、シノブの胸ぐらを掴み上げました。

私は流石に腹が立ち、

「あんた達が勝手に連れて来たんじゃない。

行きたくないって言ったのに、夜景見るなんて嘘ついて、

こんな真っ暗なだけんとこ、連れて来たの、あんたじゃないッ!」と言いました。

すると今度はiさんが、

「そんな言い方ないんじゃない?仲良くしようって思ったのにさ。何?その言い方?」と

私を突き飛ばして来ました。

私もいよいよ腹が立ち、

「仲良くなんかしたくないんだよッ!バカか?

気づけよッ!」と言い返し、

さらに私を突き飛ばそうとするiさんを、草むら目掛けて、

突き倒してやりました。そして、

「汚い手で触るな、これ以上したら、本当に許さないよ。」と睨み付けると、iさんは、

「ひどいよぉー。イタァイ〜。」と泣き出しました。

草むらにひっくり返ったまま泣くiさんをそのままに

シノブ達の方を見ると、

シノブは、

胸ぐらを掴まれたまま、ものすごく怒った顔で、G君を見ています。

「お前ここ、どんなとこか知ってるの?」と

シノブは静かに聞きました。

G君は

「はぁ?知るかッ!気味が悪いとこだから連れて来たんだよッ!

お前、視えんだろッ!肝試しだよッ!

早く、視ろよっ!」と

大声で怒鳴りました。

「肝試しなんて、ここで出来ないよ。

ここは、何にもいないよ。

何にも、無い。

気持ち悪いくらい、何にもいないよ。」と言いました。

G君は

「おまえ、視えないからって適当なこと言うなよ。

だいたい、本当に、視えんの?おまえ。」と、

またバカにしたような声で聞いて来ました。

シノブは、

「だから、お前みたいな、茶化した奴に、信じてもらいたいと思ってないし、

俺が視えようが視えなかろうが、信じて無いなら、どっちでも良いよね?

俺とにゃにゃみは、このまま歩いて帰るから。

こんな、気持ちの悪いところにはいたくない。

これ以上先にも行きたくない。

これ以上先に進んだら、

お前の言うお化けだとかより酷いことになる。

こんなとこ、何で知ってんだよ。

こんな、誰も、何も無いところ、

その方が怖いし気持ち悪いわ。」

と言い、

胸ぐらを掴むG君の手を払いのけ、

また私の手を引いて、

「無理なら、おぶって連れて帰ってやるから。

おいでッ!」と言いました。

私はシノブに手を引かれ、また来た道を歩いて降りて行きました。

「ふざけんなよ、おまえッ!

絶対乗せてやらねぇからなッ!」

G君はそう私達に向かって怒鳴り、まだ、ひっくり返って泣いてたiさんに、

「いつまで泣いてんだよ、バカヤロウッ!

早く車に乗れッ!」と怒鳴って、車に戻って行きました。

私は、

「シノブ、本当に歩くの?」と言うと、

「疲れたら言って?おぶってあげるから。」と言い、

「ここは、『いる』から危ないとこじゃ無い。

何にも『いない』から危ないとこなんだよ。

本当に、何にもいない…。

普通な、『いる』んだわ、見てくる奴とか、話しかけてくる奴とか、ついてくる奴とか…。

ここは、全く『いない』。

こんなとこ、初めて来た。

あのまま、どんどん奥に行ったら、

なんか、大事なもん、落っことして、忘れて帰ってしまいそうで、怖くて怖くて仕方ない。

少しでも、『いる』ところへ行こう。

とにかくこの道以外の道を歩こうッ!」

そう言いました。

何、それ。

普通、逆じゃ無い?

そう聞く私に、

「普通はね。

でも、この道は普通じゃ無いからッ!

こんな道、おかしいからッ!

どんなに「いなくなれッ」って思ったって、「あっち行け」って望んだって、

何処にでも、『視える』し、『いる』し、『着いて来る』し、『話しかけて来る』のに、

全く、何にも無い。

気配もない。

初めてだわ、こんなの。『いない』のが、気持ち悪く感じるなんて、初めて。

なんて言うのかな。

ここには、近づかない感じがする。

フラフラしてる奴らはさ、何処にだって行くし、

勝手にそこに居ついたりするんだけど、

そいつらすら、いない。そいつらすら近寄らない。

ここは、本当に気持ち悪いッ!」

そう言いました。

普段、視えてて、

怖い思いをしたり、不気味な思いをしたりする存在なのに、

それが全くいないことに恐怖する…

私には、分からない感覚でした。

ただ、シノブの言いたいことは分かりました。

とにかくこの道を、一刻も早く出よう。

やがて、草が覆い隠していた、苔むしたアスファルトが見えた時、ふと後ろを振り返ると、

街灯もなく、真っ暗な暗闇なのにも関わらず、

なぜか後方の道の方が、闇が濃く感じました。

前方の闇が、霧のような細かい黒の集まりだとすれば、

後方の闇は、ボッテリと重みのある隙間のない黒…。

「真っ暗の中にいるのに、後ろの方が、暗く感じるよ。」

私が言うとシノブは、

「あまり、見ない方がいい。」と言い、

「前を見て、ちゃんと手を握って歩きな?」と言います。

かなり歩いても、降りて来るだろうと思っていたG君達の車が降りて来ることはなく、

「あの子達、どうしてんだろ?」と言うと、

シノブが、

「知らない。俺は、ここは危ないって言ったし、

その上であいつらがどうなってもいい。

この道じゃ、バックは絶対無理だし、

行くとこまで行って、Uターンでも出来れば降りて来るんじゃない?」

と言いました。

Uターン出来なかったら?

そう聞く私に、

「『あん時、あいつらと引き返せば良かった』って、思うんじゃない?

悪いけど、そんなの、付き合ってられない。

『あの時…』じゃなくて、今こうやって降りて無いと、

俺が多分、ダメだったと思う。」

私は、それ以上は何も言わず、

黙って、闇の中を、シノブと歩きました。

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どれくらい歩いたのでしょう…、

目の前の暗闇の中に、小さく小さく、チラチラと、

赤やら緑やら、明かりが見えて来ました。

「なんか、明かりが見えて来たよ。

それに視界が開けて来た感じ。主道に出れるかな?」

私がそう言うと、

シノブは、

「そうだね。

もう少し歩いたら、大丈夫だから。」と言いました。

歩いて行くと、主道が、暗闇ながらも見えて来て、

その奥には山の下にある街の灯りがたくさん見えて来て、

主道に出ると、

今まで覆っていた木々がないのと、街の灯りの反射で、

とても明るく感じられ、

私はシノブに

「明るいねぇ、変なのぉ〜。街灯もないのにね。不思議だねぇ。」と笑いました。

シノブは、少し辺りを見回して、ハァーっと息を吐いた後、携帯を取り出し、

私に向かって笑いながら、

「あんた、呑気だね。

ここでも、まだ、山の上だよ?もう少し降りていかないと。おぶってやるから、おいで?」と言いました。

私が歩けると言うと、

じゃあ、少し待って、と言い、少しウロウロして、

電話をし始め、

繋がった友達に居場所を伝え、迎えに来てくれるよう、頼んでくれました。

私とシノブは、少しでも歩いて下に降りようと、

街の灯りを見ながら、

「綺麗だね〜。」

「真っ暗の中にいたから、目が痛いくらい。」

「夜景見るのってこんなに疲れるもんだったかな。」

「いや、これは本当、災難でしょ。」

「夜景って言われたら、今日の事、思い出しそう。」

そんな事を話しながら、少しひらけた、休憩場のような所まで降りて来ました。

シノブは、友達の車が来たら、分かってもらえるように、道の側に立っていたのですが、

私は、足が痛くて、ベンチに座りに行こうと、休憩場の方に向かって歩いて行きました。

すると、シノブが、

「にゃにゃみッ!

離れないでって言っただろっ!」と言いながら、

こっちに向かって来ます。

ただ…、私を見ながらではなく、

私の少し離れたところにある、自販機を、

睨みつけるようにして…。

私の目の前に立ったシノブは、

「ここ、タチの悪そうなのがいるから、ウロウロしないで…。」と言いました。

途端、ゾワァっと鳥肌が立ち、

「嫌だっ!怖いッ!」と

私は、古ぼけた倉庫のような建物に向かって走り出しました。

「ちょっと!!待てッ!そっち、ヤバイからッ!!」

またシノブに止められ、

「どこにいれば良いの?!」と半べその私に、

「大人しくして、俺の側にいたら大丈夫だから。

っていうか、あんた本当、『何ともない子』なんだね〜。

あっちもあんたが見えてないみたいだよね?」と言いました。

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あの日、私達と別れた後、G君とiさんは結局、車を先に進め、どこでもUターンを切れず、

仕方なくバックであの道を降りてきたのだとか…。

やっと山を降りた頃には、夜明けを迎え、

アチコチぶつけ、車はボコボコ…。

G君はそれを、iさんがあんな所があると言い出したからだとiさんを責め、

iさんはiさんで、運転が下手くそな自分のせいだと罵り、

それが元で不仲となり、結婚間近だったにも関わらず、

別れてしまったと聞きました。

シノブはG君との付き合いをあの日以来断ち切り、

顔を合わすことがあっても、言葉を交わすことはなくなったと言いました。

「あの日、良かったことと言ったら、

Gとの付き合いを切れたことと、にゃにゃみの面白いもん見せてもらった事だわ。」

私って、面白いんですか?

そう質問した私にシノブは、

「あんたは鈍感なだけじゃなくて、あっちに気づかれてない。

何だろうな、見えない=いない、が、成立してるんだな。」と言いました。

存在は認める。でも、見えない、だから、いない。

それがうまく、成立して、通用してるんだと…。

「にゃにゃみって、不思議だな。

もし聞こえたり見えたりしたら、あんた、どうなるんだろうね?」

そう言って、何やら楽しそうに笑ってシノブは言いました。

暗闇の中に、本来『いて』てもおかしくないモノ達が、

『全く、存在しない。』あの道は、

シノブが言うには、

『棄てられた道』なんだとか。

使う者がいるから、無事や安全を祈り、加護を求める。

使う者がいなくなり、忘れられ、消された道…。

棄てられた、と言う事実だけの残るあの道は、

あちら側のモノ達も寄り付かないんだろうっと言いました。

「そんなとこに長くいてたら、

憑かれるよりも酷いことになる。」

私たちの住んでた街から、そう遠くない山の中に、

忘れられて、消されて、棄てられた道があった…。

今はどうなっているでしょう…。

道…、とすら、呼べなくなっているかもしれません。

そんな場所への立ち入りは、

皆さんも、お気をつけくださいね…。

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にゃにゃみさん、ご無沙汰しております。
これは怖いはもちろんのこと、不気味さの極みですね。。
【棄てられた】←存在せぬ道、いや、道とも呼べぬ【無】と言うべきでしょうか。
読みながら頭の中でリアルに想像出来ました!
素晴らしいです!

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いやいやいやいや・・・絶対に近寄りたくない、そんな道

想像しただけで全身全霊で拒否反応起こしてるわ(((;°Д°;)))カタカタカタ

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