短編2
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あの子

これは、私が中学生だったときの話です。

私の学校は地元に何十年前から建っている学校でした。マンモス校という訳でもなく。

普通の田舎の中学校といった雰囲気でした。

そこで、私は仲の良い友人と住所分けで入学する事になった中学校で奇妙な体験をする事になります。

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学校の授業が終わり、掃除も終わり、部活動に向かう時に視聴覚室の前をよく通ったのを覚えています。

その長い廊下を走って、向かっている時。

木曜日の決まった時間にその子はいました。

私の学校の制服を着た、長い髪の女子生徒で、

泣き張らしたような、さっきまで泣いていたような目をした女子生徒と度々、その長い廊下で擦れ違っていました。

彼女は私の傍をいつも歩いて通り過ぎました。

ただでさえ、長い廊下。

隅に寄って歩けば、そこまで近づいて通り過ぎなくても良いのではないのかと感じる程に、

その子は、私の肩が触れるような距離で擦れ違っていきました。

私が卒業するまで、いつも泣き張らした目の彼女とその時間にその場所で擦れ違い続けました。

彼女と擦れ違う度に、

私はとても不思議に思っていました。

彼女は三年間、私と廊下で擦れ違い続けていたのですから。

制服に学年別の名札をつけていないまま。

彼女は今も、あの視聴覚室の前で、誰かと擦れ違い続けているのでしょうか?

それとも、私だけがその子と擦れ違い続けていたのでしょうか?

同窓会に出席した時に、その中学校を退職した先生に聞きました。

現在、あの廊下は生徒立ち入り禁止になっているようです。

理由は聞かせてくれませんでした。

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