短編2
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バニシングツイン

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バニシングツインって聞いたことがある?

Aちゃんはそう、切り出した。

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事の起こりは、年子のお兄さんの体験。

高校生の頃、夜部屋で寝ていると時々、

Aちゃんに呼びかけられるのだそうです。

「お兄ちゃん、起きて…」と。

しかし、覚醒して起き上がれど彼女はいない。

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不審がったお兄さんはAちゃんに深夜、

自分の部屋に来たか問いました。

やんちゃ盛りで活発だったAちゃんは

「行くわけないじゃん、キモい」と一刀両断。

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しかし、その問いをかけた後も度々、

決まって深夜Aちゃんに起こされたと言います。

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ほんのりとお兄さんもわかっていました。

自分を毛嫌いしているのに自分の部屋に来るはずがない、それも深夜に。

そうは思いますが、

実際起こっていることゆえに聞かずにはいられず、

何度と繰り返し質問しては喧嘩に発展してしまうこともあったとか。

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「あんた(A)はね、双子だったんだよ。」

そんなやりとりをしている兄妹に

重い口を開いたのはお母さんでした。

理由については明記を避けますが、

片割れはお腹の中で亡くなり、

Aちゃんは育って生まれたのだと。

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その際、

片割れを吸収しただろう…

とも言っていたそうでした。

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お兄さんは勿論Aちゃんも寝耳に水。

とてもショックが大きく、

それまで活発だったのに、塞ぎがちになりました。

思春期も相まって周りも手を出しづらかったのでしょう。

彼女の言葉を借りれば

「傷物に触るように、接された。或いは気にかけられなかった」

と言っていました。

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時期を少しすぎた頃、Aちゃんは少し気持ちの整理ができたそうです。

前と違うとすれば、おっとりしたかなぁと微笑んでいました。

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そんな時です。

彼女も寝ていると声を聞くようになりました。

「返して、私の体、返してよ!」

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苛立ったような、怒った様な、そんな声でした。

彼女は

「ごめんなさい、私が代わりに生きるからゆっくり眠って」

と、聞こえる度に心の中で伝えたと言います。

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……

………

さて、ここからは私の想像です。

邪推なのかもしれませんが、

彼女の性格が変わってしまった後から聞こえた声…

お兄さんを起こす声と比べ強い様に思え、

些か違和感を感じました。

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もしかして…

心が弱り、

本当は気持ちに整理などつけられなかった彼女は、

今の彼女に吸収されてしまったのでは?

それ故に語気の荒い声を発してまで返却を求めたのでは?

口が裂けても言えませんけどね…

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