短編2
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げんきのこ

その日、東海地区の村で奇怪な出来事が起きた。

空は雲一つない青空だというのに、雨が一日中降り続いた。

村の人々は雨を見ながら、どこか神妙な気持ちになっていた。

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この村は少子高齢化の波にさらされ、今や10世帯ほどがひっそりと暮らす集落と化していた。

唯一の若者は25歳の美優であった。

美優は一度は村を出て東京で働いたものの、都会の喧騒に疲れ果て村に帰ってきた。

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美優は村に帰ってくると、今までは嫌いだった東京が懐かしくなり、戻ることを考え始めた。

やはり25歳という若さでは、娯楽も何もない村は退屈で仕方がなかった。

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村人たちは美優の突然の帰郷に喜んでいたので、

再び村を出ていくことに一種の嫉妬や憎しみを抱いた。

事実、美優の家族でさえ美優に憎悪を向けた。

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家族は美優が逃げないように家の中に閉じ込めた。いわゆる監禁というものだ。

そんな折に天気雨が降った。

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しかしこの雨、一日中降り続いたことで地盤を緩ませてしまい、

土砂崩れを引き起こしてしまった。

この土砂崩れで巻き込まれてしまったのは、

悲しいかな美優の家であった。

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美優の家族は運よく家を空けていたが、

美優は監禁されていたのでそのまま巻き込まれてしまった。

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美優は自衛隊の捜索で発見されたが、その遺体はもはや人のソレではなかった。

美優の皮膚は白く粉を吹き、

眼は盛り上がった皮膚で隠れてしまう寸前であった。

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遺体は司法解剖に回された。

そこで驚くべきことが判明した。

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キノコである。

美優は限りなくキノコになってしまっていたのである。

正確には土に埋もれているときに、キノコ菌が美優を媒体にし繁殖したのだ。

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それだけではない、土壌から高濃度の核物質が観測されたのだ。

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どうやら、一日中降り続いた雨は何らかの兵器であった可能性が高まった。

美優の家族は人を媒体にしたキノコに名前を付ける権利をもらった。

村は今ではこう呼ばれている、人茸村と。

げんきのこ-完-

Concrete
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