中編4
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しせん

最近おかしい。

寝ようと部屋の電気を消し横になると視線を感じる。振り返ってもなにもない。

眠れないことはないがどうにも落ち着かない。

正直霊感なんて全くない。

不思議な体験などもしたことがない。

いや、あったのかもしれないが少なくとも記憶に残るようなことはない。気にしたこともない。

だからこそ、

最近はやはりおかしい。ほぼ毎日だ。この部屋には長いこと住んでいるがこんなことは初めてだ。

幸い今のところ実害はない。

多少睡眠時間が減っているがきちんと寝れる。

仕事にも影響していない。それが救いだ。

一体何なのだろう、さすがに良い気分ではない。

今夜も同じだろうか?

そんな日が続いたある日ふと気づいた。

普段の生活の中で視線を感じることがない。

あれだけ人混みの中にいるにもかかわらず、人と目を合わすことがあるにもかかわらず、だ。

なんだか不思議な気分だ。

毎晩のように感じている「視線」なのに、訳がわからない。

ずっと見られることなんてありえないが全く感じないのもおかしな話だ。

そう思ったとき妙な考えが頭に浮かんだ。

「視線とはどういったものか?」

まさかの気分だ。

今まで視線なんぞ感じたことがあっただろうか?

そもそもどんなものだ?

わからない。

他人に見られることなんて数えきれない程あっただろう。

なのに、視線というものがわからない。

変なことを考えてしまった。軽く混乱してきた。

同僚や友人に聞いてみた。

皆変な顔をしていた。「疲れてんのか?」と。

視線なんか何度も感じてきたと思っていた。気にもしなかった。わかっている気になっていた。

いや、違う。やはり自覚がないだけで疲弊しているのだ。視線なんぞ感じなくてもなにも害はない。

そう思うと少し落ち着いた。今の生活の中で必要なものではない。何を考えていたのか。

明日は休みだし、今夜は酒でも飲みながら見たかった映画を見よう。気分転換だ。さっさと仕事を終わらせよう。

久々にくつろいだ。酒が旨い。映画も面白い。ほどよく酔いが回りうとうととしてきた。最高の気分で眠りについた。

熟睡した。こんなに寝たのはいつ以来かと思うほど爽快な気分だ。一体何時間寝たのだろう?

窓を見るとまだ外は真っ暗だ。そんなに時間はたっていないようだ。余程深い睡眠だったのだろう。

なんだか得したような気がする、このまま余韻を楽しもう。

突然それはきた。

背筋に冷たいものが走った。

何だ?と思うと同時に体が反応した。心臓が高鳴った。

見られている。間違いなく、見られている。

あれだけ考えてもわからなかったものを、今、確かに感じている。

変な汗が出てきた。

突き刺さるような、とはよく言ったものだ。

嫌でも「視線」を理解せずにはいられない。

この視線はどこからくるのか?

視線があるということはそこには目があるはず。

そこに何かが存在するはず。

泥棒か?いや、どうみても財産を持つ者が住むような建物ではないと一目でわかるはず。

ならばなんだ?

怖い。頭の整理がつかない。訳がわからない。

なのに変なことを思った。

見てみたい。振り返って後ろを確認したい。そうしないと後悔するような気がする。

なぜこんな考えになるのか。

体が反応した。

長いようであっという間の時間。

一気に振り返った。

出入口のドアも、その先の廊下もない。

そこには本棚があった。その隣にタンスがある。視線を右に移すとTVや小さいテーブルもある。ありきたりの、見覚えのない部屋がある。

なんなんだこれは?

視線を左に移していく。

その部屋の隅になにかがある。

人のようだ。二十代ぐらいの男性だ。

隅に座り込み壁を背にしながらこちらを見ている。

目を見開き口を半開きにしてこちらを凝視している。

頭が真っ白になる。体も全く動かない。動かし方がわからない。

何もできないままその男を見ていた。

そのとき気づいた。

男は小刻みに震えている。

体を震わせ表情を強張らせながらこちらを見ている

何が何だかわからない。

そのまま互いに見つめあっていた。

その次の瞬間視界は天井を映していた。

部屋はうっすらと明るくなっている。

起き上がり見回すといつも通りの部屋だった。

つい先程までのことが一気に脳内で再生される。

夢にしてはあまりに生々しく、現実にしてはあまりにありえない出来事だ。

あれがなんだったのか今だにわからない。今は

夢だと思っている。あれ以来あんな夢はみていない。

現在は通常の生活を送っている。

通常ではあるが今でも視線を感じる。

振り返ることなくやりすごしている。

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深いですな( ー̀ωー́ )

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どこか別の部屋と繋がったのかしら。

だから相手の男性も同じように恐れおののいている、とか。

私だったらよう振り向かへんなぁ。と思いました。

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