中編2
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笑う顔

 高校二年生の秋のことだ。

そのとき仲良くしていた二つ上の卒業生の先輩が、ある人を紹介してきた。歳は僕より一つ上、同じ高校に通う女子生徒だった。その人を仮にUさんとする。

「見てほしいものがあるんだけど」

彼女はそう言って、僕に1枚の写真を見せてきた。

それは僕らが通う高校の旧校舎を撮影した写真だった。

「同じクラスの男子が撮って、それで、ここなんだけどね...」

Uさんの指す場所をよく見てみると、そこには人らしいものの姿が写っていた。

「心霊写真ですか?」

僕がそう訊くと、Uさんは頷いた。

当時、僕はよくオカルト関連の相談を人に頼まれることが時々あった。特別霊感が強い訳でもなく、大して詳しい訳でもない。それなのに、何故かそういう相談を持ち込まれていたのだ。

今回は、写真に写っているこの霊(?)が、悪いものなのかどうなのかを知りたいというものだった。

僕が相談を受ける1週間前、Uさんのクラスメイトの男子生徒二人が部活終わりに歩いていると、旧校舎の二回の窓からガタンというような音が聞こえたのでそちらに目を向けると、見慣れないジャージを着た人が、窓からこちらをニヤニヤと笑いながら見ていたのだそうだ。

しかし、その人には違和感があった。

大きさがおかしいのだ。窓から覗く顔は自分たちの三倍程あり、肩幅もかなり広い。普通に考えたら有り得ない程大きかったらしい。それを男子生徒の一人がたまたま手に持っていたスマートフォンで撮影し、急いでその場から立ち去ったのだそうだ。

「そしたら、それがちゃんと撮れてたんだよ」

Uさんが真剣な面持ちで言った。

「なるほど、でも僕は写真見ただけじゃ何もわかりませんよ。そういうのに詳しい知人もいませんし」

そう言って、その件は断ったのだった。

   ○

それから数日が経ったある日のことだった。

部活動の片付けでたまたま帰りが遅くなり、外はもう薄暗くなっていた。

いつものように旧校舎の前を通り掛かったそのときだった。

ガタン...

不意にそんな音が聞こえたので、そちらを見ると、旧校舎の二階の窓...写真に写っていたあの場所と同じだ。

しかし、そこには誰も居ない。

あんな話を聞いたから、聞こえた気がしただけだったのだろう。それっきり何も無かったので、その日はそれで帰路に着いた。

しかし、後日聞いた話によると、旧校舎に霊が出るという噂は、僕らよりもっと前に卒業した生徒たちの間では、密かに有名だったらしい。

Concrete
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