短編2
  • 表示切替
  • 使い方

しんじくん

しんじくんには兄がいた。

兄弟がいる人なら分かると思うが兄弟というのは

両親や親戚、学校の友達からよく比較される。

しんじくんは容姿も頭もよく、運動もそこそこできたのだが兄には何一つ勝てなかった。

そんな兄だったがしんじくんがいろいろな人に兄と比べられても

しんじにはしんじのいいところがあるから…

といつもしんじくんのことを庇ってくれるとても弟思いの兄でもあったのでしんじくんは兄を尊敬し兄の存在を邪魔だと感じたことは一度もなかった。

しかし、しんじくんの彼女が実は兄目当てで自分に近づいて来ていたと知りしんじくんは激昂した。

自分の愛していた人、信頼していた人からも兄と比べられ自分は兄に近づくための道具として見られていた、今仲の良い女友達も実は兄目当てでおれとつるんでいるのではないか、実は兄自身も心の中では自分のことを馬鹿にしていて、自分を引き止める道具として見ているのではないかとしんじくんは人間不信になってしまった。

兄さえいなければ…

そうして、しんじくんは唯一兄にはない自分の長所を理解してくれていた兄を殺めてしまう。

それからしんじくんの生活は一転した。

今まで自分のことを兄と比べ失敗作だと見下していた両親や親戚が兄に近づくための道具として自分とつるんでいた女子が兄の面影をしんじくんに求め、しんじくんは今まで味わったことのなかった優越感にひたりながら毎日を過ごしていたが、ある日学校からの帰り道で突然兄の声で

「しんじ……まえ!」

と聞こえたのでえっ?と思いながら前を見ると目の前には自動車が自分に向かって猛スピードで突っ込んできてたのであった。

しんじくんはとっさに受け身を取り、全治2週間の怪我だけで済み命に別状はなかった。

しんじくんは自分が殺してしまったのに自分を助けてくれた兄に感謝の気持ちを伝えたくなり兄の大好きだったもみじ饅頭をたくさん買い兄の墓参りに行った。

墓は丁寧に掃除されており、みずみずしいいろいろな種類の花が添えてある。

改めて自分が兄を殺してしたという罪悪感で申し訳なさが胸から込み上げてきて墓に向かって何度も何度も ごめん…ごめんと謝った。

するとまた兄の声で

「しんじ…まえ!」

と聞こえた。

前を見ると これでもかというほど大きく目を見開き眉間に何重ものしわをよせた男がいた。

これはもしかして兄なのか?としんじくんが考える間もなく目の前の男は確かに兄の声で

shake

死んじまえ!死んじまえ!死んじまえ!」

Normal
コメント怖い
40
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信
表示
ネタバレ注意
返信