中編4
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金縛り

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私には、歳が六つ離れた兄と、四つ離れた姉がいます。周りからよく似ていると言われ、実際に奇妙な共通点が何個かあります。

その一つとして、高校に入学した頃より、金縛りが頻繁に起きるようになるというのがあります。

兄が高校3年生、姉が高校1年生の時に、お互い金縛りが頻繁に起きており、二人がその話をしているのを、何気なく聞いていました。

そして私も無事高校に入学でき、高校生活にも馴染んできた頃・・・・。

夜中にふっと目が覚めてしまい、今何時なのか確かめようと体を動かそうとするが、どれだけ力を入れるもピクリとも体が動かない。

兄と姉の話を聞いていたので、すぐに金縛りと分かりましたが、どうする事も出来ず、

頑張って声を出そうとしていると、

スッ・・・・ スっ・・・・ と布団が少しずつ足の方に引かれていく感覚がし、そのうち、首や胸あたりに寒気を感じた為、

このままではマズイ!!と思い、何とか上体を起こそうと力を入れていると、少し体が軽くなるのを感じたので、ちょっとずつ頭を上げていくと、上体を起こす事ができました。

しかし布団は腰の辺りまで下がっていました。

きっと寝返り等でずれてしまったのだろうと考えましたが、先ほどまでの恐怖を拭う事が出来ず、その日は寝る事が出来ませんでした。

朝になり、兄姉が居間に来たと同時に、金縛りについて尋ねると、

「やっぱりお前もなったか」と言い、金縛りの様子や金縛りから抜ける方法等を教えてくれました。その時はあまり気にならなかったのですが、姉だけは凄く嫌な顔をしながら金縛りの話をしていました。

金縛りの抜け方として教えてもらったのは、金縛りになっても、どこか一か所だけ少し動かせる所があるらしく、そこを少しずつ動かしていくと、次第にその周りも動かせるようになり、ある程度動かせるようになったら、勢いよく体を動かすと抜けられるというものでした。

兄姉共に動かせた場所が右手の小指だったので、多分お前もそうだろうと言われ、話が終わりました。

その話を聞いた夜に早速金縛りが起きました。今度は明らかに枕元に誰かが立っているような感じがし、少しずつですが視界に顔らしきものが見え始めたので、怖い気持ちを抑え、右手の小指を動かしていくと

言われた通り少し動いたので、無心で動かしていると、ふっと体が軽くなり、金縛りも解けていました。

私は感動したと共に、金縛りはテレビ等でも言われているように脳と体の影響(レム睡眠・ノンレム睡眠)なのではないかと少し興ざめしました。

しかし金縛り中はそんな事を考える余裕が無くなるほど恐怖を感じるので、一生懸命小指を動かしていました。

金縛りとの付き合いは、高校の卒業式ぐらいまで続き、その頃には金縛りにもかなり慣れ、金縛りになる前兆も解るほどでした。

その日も「あ、またきた」といつもの様に小指に力をいれていました。

そしてふと心の中で「あ~あ、はやく終わんないかな」とつぶやくと、

耳元で

「これで終わりだよ」

と言う声が聞こえ、急に金縛りが解けました。

そしてそれ以降金縛りになる事はなくなったのです。

兄姉に金縛りが何時終わったのか尋ねると

兄も高校3年生の頃で、

もう金縛りになれた兄は、「怖くねぇよ!」と右手で顔の近くを払うと

ヌルっとした何かに触れたと同時に

「速達です」と遠くの方で聞こえたというのです。

姉にも尋ねましたが、あまり話したくないような様子で、代わりに兄が話してくれました。

姉の金縛りは、兄と私以上に強いもので、しばらくの間、母親と一緒に寝て、姉の様子がおかしいと母親が起こしていたそうです。

姉も小指を少しずつ動かし、金縛りから抜ける日もあったらしいのですが、時折さらに強い力で抑えつけられ、少し動いていたところも再び動かなくなってしまう事もあったそうです。

そして金縛り最後の日は、母がまだ床についておらず、姉一人で寝ていた時におき、いつも以上に強い力だったので、

「助けて!助けて!」と声を出そうとしていると

耳元で

「誰も来ないよ」

と言われたそうです。

しかし、うめき声をあげているのを母親が気づき、すぐに起こされると

再び耳元で

「ちっ・・・。次に行くか」

と言われ、その後金縛りはなくなったそうです。

金縛りが終わった時期は兄は高校3年の中旬ぐらいと早く、その為、「速達」という言葉が使われたのではないか

そして姉の「次に行くか」というのは、私の事をさしていたのではないかと思っています。

私は末っ子の為「もう終わり」になったのではないか。

そして母がいなければ、姉がどうなっていたのか・・・。姉があまり話したくないのも納得でした。

金縛りは脳と体のメカニズムだけではないと、今は思っています。

皆様も金縛りにはお気を付け下さい。

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最後まで読んでいただきありがとうございます。
もう金縛りがなくなって、随分経ちますが未だにあの時の怖さは覚えています。

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