長編8
  • 表示切替
  • 使い方

部屋に巣食うモノ

つい最近。2月に入ってからの事。

私は少し遠出して友人宅に滞在を決め込んだ。

滞在期間は決めておらず、私の病院通いの隙間に行ってきた。

まぁ、最低でもバレンタイン位までの1週間か、次のリンパ腫の経過観察までの10日が最長だったろうと思う。

nextpage

初めて、その友人宅へ行ったのは1月の半ば。

1Kで男の独り住まいには丁度いいんだろう。

散らかり具合も居心地が良い程度。

nextpage

ただ、無性に不安感が時折纏わりついてくるのが不快。

1泊で帰ってきたけど、また来ようと思った。

また来ようと思ったのには実は理由がある。

電車やバス。まして人混みなんて寿命が縮むだけの私には車しか移動手段がない。

どんなに近距離でも車を使わずにいられない。

nextpage

そしてその時も車で行ったのだが、帰りのドライブで自宅アパートまで100km位かな?って辺りで車が後ろに引っ張られるような感覚・・

ん~サイドブレーキかけながら走ってる感じ?

nextpage

ハザードを挙げながら、路肩をノロノロと走り、JAFのお世話に。

結局、エンジンの中の3つある部品の一つが、壊れていた。

そこまでは、快適に走れたのに、突然の事にかなり驚いた。

即日修理をしてもらい、心当たりのある和歌山の彼の部屋に何としても近々行きたかった。

nextpage

彼は年中無休、24時間体制の警備職に勤務していて、休みは定かじゃない。

その日によって、休憩だったり仮眠だったりで帰宅する程度だった。

私は、留守の間にちょっとした片付けをしたり洗濯する位。

体力の続かず、引きこもりな私には丁度いい。

nextpage

一緒にお昼寝したり、元カノの匂いのするものを処分したり。問い詰めたり何だかんだで楽しかった。

ただ・・・

一人で眠っている時には違和感があった。

nextpage

二人で眠る時は、全く感じないのだけど。

一人の時は・・怖い夢ばかりを見る。

殆どは、目が覚めれば忘れる普通の夢。

でも・・・。

nextpage

数日後に見た夢は恐ろしかった。

彼の帰りを待ちわびた。それほど怖かった。

nextpage

あの日・・。いつものように彼が帰宅するまで一人で眠っていた。

普段は眠剤がないと全く眠れない私だが、彼の部屋では眠剤を使わずに眠れた。

その位、安心という名の元にぐっすり眠れた。

nextpage

昼間。休憩仮眠のために彼が帰宅した。

僅かなフローリングに蹲って咳込んでいる。

私は、彼に背を向け壁の方を向いたまま「大丈夫?」って寝ぼけ眼で声をかけた。

彼は小さく「うん」と言ったきり黙ってる。

「お薬飲んでね?」そういう私に返事がない。

nextpage

彼の動く気配がしない。

というか、今しがた咳込んで蹲っていた彼の気配もろとも消えた。

(あれ?私、部屋の鍵・・開けてない)

スペアキーの無い彼の部屋。ドアホンを取って開錠しないと部屋に入れない。

けど、私は開けてないんだ。。

nextpage

(え??)私はガバ起きした。

つい、たった今まで彼の蹲っていた場所を見るも居ない。薬の瓶も動いてない。

WCも風呂場にも居ない。

・・・部屋には私しか・・・

nextpage

それが、始まりだった。

彼が蹲っていたのは、昼間だった。

ちゃんとドアホンで開錠をして帰宅してから、咳込んでいた彼の話をした。「何それ!怖いじゃん!」と笑いながら言う彼の表情に恐怖の色は微塵もない。

nextpage

夕方、次のシフトに入るため、彼は私を起こさないように気を遣いながら部屋を後にした。

気を遣うと言っても、別にコソコソしてる訳じゃない。

ガバッと起きてササッと着替えてドドドって部屋を出て行く。

「行ってくるね」とか声を掛けない。ってのが彼の気配り。

nextpage

私は、大きく捲れたままの掛け布団を自分にかけ直して、もう一眠り。

(起きたら、ゴミ捨ててこなくちゃ・・)

そんな事を考えながら眠りに落ちた。

nextpage

どの位眠っただろう?

窓を閉めても入ってくるエゲツない程の冷気。

ロングカーテンの裾から、目が覚めるほど冷たい空気が入ってくる。

(・・これさえ無きゃ、いいのになぁ)

でも、まだ少し眠たい。首まで布団を被って睡眠を貪ろうとした。

nextpage

ウトウトと睡魔がやってきて、コトリと睡眠に落ちた。

やや暫くすると、誰か私の足元から布団に潜り込んでくる。

(あ。ミッキーだ。もう帰ってきたんだ?)

布団の足元方面には、ドアで仕切られた小さなキッチンと風呂場しかない。

nextpage

ドア前の半間もないようなフローリングからゴソゴソと布団に入ってきて、私の脚を撫でている。

「んもぅ~。光輝、悪戯してないで着替えておいで」

そんな私の文句に耳を貸さず、光輝は足首からふくらはぎ、太股へと手を伸ばしてくる。

かなりエロティックな撫で方だ。

nextpage

脚を撫で回す手が、ショーツに伸びそうになった時に、私は布団を捲り上げた。

(違う!コレ、光輝じゃないっ!私、鍵開けてないもん!!)

(ヤダッ!光輝!光輝!!助けてっ!)

ソレの右腕は、鶏の足のような鱗が無数にあった。髪色は明るいオレンジだった。

nextpage

恐怖でパニクった私は、足をバタつかせ、助けを求めた。

すると突然ソレは「ぐぇ」っと小さな呻き声を出して仰け反った。

私の足からも手を離し、後ろに引き摺られて行く。

nextpage

上半身を起こし見ていると、初老の男性がソレの髪を引っ張り、床に叩きつけては、また髪を掴み、床に叩きつけて、キッチン奥の壁の向こう側までソレを引き摺っていった。

壁は突き当りだが、その奥へと延びる暗い通路が出来ていた。

nextpage

最終的には、壁の奥を曲がった処に捨てるようにペイッと投げ捨て、埃でも払うように両手をパンパンと叩きながら戻ってきた。

nextpage

初老の男性は、昼間彼が蹲っていた僅かなフローリングにトスンと胡座をかいて座った。

私は、といえば、男性が戻ってくるまでの間に身支度を整え、成り行きを見届けていた。

nextpage

「あのぅ・・助けていただいて、本当にありがとうございました」

そう頭を下げる私にニコヤカに男性はイヤイヤと手を振った。

『あーいう、角の生えたようなヤツはロクでもない。質が悪いんだ』

nextpage

・・・・角???

よくよく思い返すと、オレンジの髪の隙間から、長さ2cm程度だろうか小さな勾玉のような形の捻れた黒い角があったのを思い出した。

nextpage

「あぁ。。。そうなんですね・・・」

『うん。あんなのは、足で首をグリッと捻ってやったらいいんだよ』

ニコヤカな表情とは裏腹に、随分と乱暴な事を言う。

nextpage

私は、正座し直して聞いた。

「助けて頂いておいて、こんな事お聞きするのも失礼ですが、貴方様と光輝さんは、どういったご関係なんでしょうか?」

『俺?光輝の父親の弟。ま~父方の叔父にあたります』

その叔父様もまた座り直して、私に一礼を返してくれた。

nextpage

「そうでしたか・・。この度は、本当に助かりました。」そう言って両手をついて深々と頭を下げると、叔父様は『いいんだよ~でも気をつけなよ?あ!あと角と角の間の髪の毛も弱点だからな~毟ってやるといいよ』と言い残して消えた。

クリンとした大きな目が印象的だった。

ガタイも良いんだろうが足が長いのか、座るとちょっと小さく見えた。

nextpage

その後、光輝が帰宅するまで眠れるでもなく、かといって、早く帰ってきて~と泣き言を言う訳にも行かず、暗い部屋の中で今しがたの出来事を思い出して震えていた。

nextpage

数時間も経たずに、彼が帰宅した。

ドアホンを急いで取り、玄関口で待ってた。

私が、そんなところにしゃがみこんでるのを見て不思議に思ったのか、「どした?何かあったの?」と優しい声で聞いてくれる彼に抱きついて今の話をした。

nextpage

「怖っ!」という彼の顔に恐怖の色は浮かんでいない。肝が据わってるんだろうか。

光輝のお父さんに、兄はいたが弟は居ないはずだと答えが返ってきた。

しかも、お兄さんもオラオラ系ではなかったようだ。

聞きはしなかったが、生まれてこれなかった弟さんが居たのかもしれないが、血筋の方には違いない。

nextpage

「沙羅?怖いの?慣れてるのかと思ったけど」

そう言って笑う光輝には悪いけど、自宅に出る奴らは、しょっちゅうなので知り合い感覚だったりする連中もいる。

何度遭遇しても怖いと感じさせる奴もいる。

が、自宅以外でこの世の者でないものと遭遇するのは、恐怖以外の何者でもない。

nextpage

「怖いと思ったら、あの角のラーメン屋に食べに行ったらいいよ。遅くまでやってるし、旨いんだ。それにね、イ・ケ・メ・ン店長だよ?俺も小腹空いたら食べに行くんだ。一人で行っても大丈夫なように言っておくからね」

nextpage

炬燵で二人並んで寝転びながら話をし、まだ動悸の治まらない私をヨシヨシしてくれて、「俺の沙羅の脚を撫でるなんて!色情霊めっ!」と憤り、思い遣ってくれる光輝が心底愛おしいと思った。

だけど、これで終わった訳ではなかった。

nextpage

翌々日のこと・・

彼が昼間の仕事に出かけてる間に起きた。

前の晩に彼と食事に出かけて久々の二日酔いで起きれなかった私。

「ねぇねぇ?」と肩を揺すられて目が覚めた。

nextpage

遠慮がちに肩を揺するのだが、頭がクラクラしてる。

「あ~?何?ちょっと揺すらないで頭ふらついてるから」

なんて、ブツブツ文句気味に言ったら、肩を揺するオトコの声が聞こえた。

nextpage

「ねぇねぇ?いつまで居るの?居心地悪いから早く帰って欲しいんだけど」

・・・はぁ???

その声は光輝でもなく、幼くもなく、年齢の良くわからない声音だった。

「居心地、悪いん?」そう聞くと「うん。早く帰って欲しいんだよね」

「あ~マジ?ごめんねぇ~」そう答えた後に、やっとショボショボしてた目が開けた。

nextpage

やはり部屋を見渡しても私以外に誰も居ない。

居るはずがない。

誰か・何か・の痕跡もない。

(この部屋には、私に長居して貰っちゃ困るのが居るんだなぁ)

nextpage

昼の仕事を終えて帰ってきた彼に、帰る日を唐突に告げた。

「それさぁ?夢だったんじゃない?沙羅が、自分で長く居すぎてるって感じてるから見た夢じゃないかな?俺は、いつまで居てくれても構わないもん」

nextpage

・・・夢だったらいいね。。

でもさ。確かに肩を掴まれて揺すり起こされたんだよね私。

nextpage

仕事の疲れで、風呂と仮眠のために帰ってくる光輝のサイクルに合わせて、アチラの住人もルームシェアしてたりしてね?家賃も払わずに。

そして自分達の存在を私にアピールするかのように床置きの間接照明の電球が切れてみたり、壁掛けの電池で動く玩具?の電池切れが立て続けに起きたのかもね~

nextpage

念の為に持っていったクリスタルウォーターも撒いてきたけど、濡らしてはマズイものが多くて差支えの無いトコしか出来なかった。。

蒔いた場所はバルコニーの入口。1月に行った時に妙に怖かった場所だった。

クリスタルウォーターの効果は絶大だと再認識した。

nextpage

次に行った時には別の手段も交えて・・

あの手この手で成敗してくれるっ!!

勿論、あの勇猛果敢な叔父様にも手伝って頂きたいところだけれど。。

それは無理かなぁ・・。

nextpage

~~

久し振りなのに、怖さが出なくて相変わらずのヘタレですみません。

本当はすんごい怖かったんです(´;ω;`)ウッ…

~~

Normal
閲覧数コメント怖い
1,28729
30
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意

何故かコメが途中で切られるので、分けてコメントさせていただきます(>_

沙羅さんの作品は奥深く芯から怖さを駆り出されるので、私は本当に好きです(*^^*)

オレンジの髪、角… 妖怪だと思いながらも正体がわからないところにも恐怖を感じました。

沙羅さんお久し振りです(^^)
新しいお話ありがとうございます!
こういう体験は絶対したくないですね(>_

表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意

はっ!!ガ━━━( ゚д゚ ;)━━━ン
ゆかちんさんの発言にビビッて、抜けてもうた!!!

怖ポチ下さった皆様、ありがとうございましたm(__)m

毎度、駄文でとりとめもなくダラダラしてますのに、怖さを汲み取っていただいてるようで
とてもうれしく思います(*^^*)

また、コメなどで絡んでいただけると、小躍りもします♪
今後とも、よろしくお願いします♪

表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意

ラグトさ~~ん💛
こんばんわぁ(*^^*)
いつもありがとうございます(*・ω・)*_ _))ペコリン

体調不良は、ここ一年悪化の一途を辿ってますww
ガテン系の職場を辞めてから、一気に今までの無理という無理が(不調)として表面化してるような感じですかね??

なので、今は【人生の中のインターバルだっ】って決め込んでます♪
全力疾走した後は、やはりクールダウンも必要ですから(^^

ラグトさんも体調不良とのこと。
風邪は万病の元って言うらしいですね(ボソボソ)
油断大敵ですから、安静にしててくださいね(*^^*)

むぅさん(^^)こんばんちゃ♪

やっぱり人混み、苦手ですか・・
何か、人の集まるところは、念が渦巻いてるような変な錯覚と人酔いして
うまく歩くことも出来なくなっちゃいますよね~
(*・ω・)(*-ω-)(*・ω・)(*-ω-)ウンウン

で・・行列のできるお店も・・入れないでしょ~~~?( ̄ー ̄)ニヤリ

表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意