短編1
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夢十夜(一行怪談)

―――こんな夢をみた。  

 

 

 

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一、

目の前で、自宅に事故物件を示すマークが点り、玄関がノックされる。

 

 

 

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二、

仕留めたばかりの猿がはめていたその婚約指輪を見た瞬間、彼は膝から崩れ落ちた。

 

 

 

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三、

ざぶざぶ音を立てて、水面から突き出たおびただしい墓標のあいだを彷徨いながら、あの子がじぶんの家を捜して泣いている。

 

 

 

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四、

「誰かいるのよ」と不安げに天井を見やっていたお祖母さんが亡くなり、屋根裏をさらうと埃まみれの骨壺が幾つも見つかる。

 

 

 

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五、

玄関先に集う見知らぬ人々に「おめでとう、本当におめでとう」と祝福された翌日、家族が次々死に始めた。

  

 

 

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六、

けさ、十年前なくした右腕から手紙が届く。

 

 

 

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七、

アラームが鳴り響いて、床下から厭な臭いを放つ蟹がぞろぞろ湧いてくる。 

 

 

 

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八、

狼はわたしだったのねと、血だらけの床に伏して震える赤頭巾を、白衣の女性はマジックミラーのむこうからじっと見ている。

 

 

 

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九、

集会場にある赤い柱の正体に気づいたとき、村人がだれも笑わない理由を悟った。

 

 

 

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十、

泣きそうな表情で女性は「お願い、お願い、生まれてこないで」とはち切れそうなお腹をさすり続ける。

 

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【了】

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たはー。こ、これはー。
綿貫さまに、よもつさま、ロビンさまも。
すごいですなー。

ほかの作家さま、読み専さまの参加も、あるかもー。
すごーくたのしみですね。

だんだん、おもしろくなってきました。うしし。

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あれれ、結構色んな方に飛び火して来ましたよー、なははー。

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小夜子さま
怖ぽちありがとうございましたー。
たはー、こわがってもらえて、とってもうれしいです。

修行者さま
怖ぽちとコメントありがとうございました。
やりますねー。でも、一足おそかったです。
またの機会に、是非いらしてくださいなー。

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むぅさま、菜食主義の猫さま
怖ぽちありがとうございましたー。
夢十夜、これにておひらきでございます。
お後がよろしいようでー。

ラグトさま
怖ぽちとコメント、ありがとうございました。
お誉めにあずかり、アイスがおいしくて困っちゃうー。
まあっ、断片から10話もですって。
ラグトさま、やっぱり恐ろしい子っ……ま、負けないんだからー。

mamiさま
怖ぽちとコメント、ありがとうございましたー。
六番目のお話が、1番すっきりまとまりました。
mamiさまの一行怪談、気になるー。
気になって昼も眠れなーい。なはー。

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斬新でした。
私もつい、一行怪談を考えてしまった…( ´∀`)
どれも好きですが、『六』が一番かな…
『九』は、ここから始まる噺を読みたいな…とか、色々楽しませていただきました。

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800字のてのひら小説や140字のツイッターのお話も面白いと思ったのですが、一行怪談なんてものもあるのですね。

秀逸すぎて、これで10話お話が書けそうと思いました。

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ロビンⓂさま
怖ぽちとコメント、ありがとうございましたー。
たはっ、床下収納庫にいったいなにが……。
そこはかとなく、闇をかんじますなー。

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綿貫一さま、チョコさま、月舟さま、りこさま、はとさま
怖ぽちありがとうございましたー。
おかげさまで、怖ぽちも100をこえました。今後も精進しまっせー。
みなさまが腰を抜かすこわーいお話、がんばってつくりますね。うしし。

珍味さま
怖ぽちとコメント、読者登録、ありがとうございましたー。
たはは、勝手にコラボしちゃいました。
ほうら、珍味さまも、一行怪談が、だんだん、やりたくなーるー。
「猟奇歌」はいま青空文庫で読みました。久作どんはクレイジーですな。
こんなこわいの読んだら、恐怖のあまり朝ヌクヌクおふとんから出られなーい。なはー。

いささま
はーい!はじめまして。Glueといいまーす、よろしくどうぞ。
怖ぽちとコメント、ありがとうございましたー。
そんな、ノーベル文学賞確実だなんて、ハルキをさしおいて悪いですよ。
子泣き爺のお話、面白かったので、いささまの一行怪談も読みたいです。うしし。

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Glueさま、こんにちは。初めまして。
いさと申します。
秀逸できれいでぞくっとする、三拍子揃った文章に惹かれてコメントさせて頂きました。どれも魅力的ですが、三、六、七が個人的には凄く好きです´`* そして、十は最後を締めるに相応しい、とてもエグ怖いお話でした…。
一行怪談、難しそうで楽しそうで、自分でもやりたくなってしまいますね。センスが問われるので、自分でやるには評価が「怖ーい」怪談やもしれませんが…。
素敵な怪談を読ませて頂き、ありがとうございました!

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