中編5
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祓い屋「匠」〜記憶〜

深い森の中。

お母さん!!

お母さ〜ん!

母親を呼ぶ少年。

その足元に横たわる女性。

お母さん!

お母さん!!

少年は必死にその女性に呼び掛けている。

その少年の母親であろう女性の腹部には、太い木の枝が突き刺さっている。

お母さん!

お母さん!!

女性はまだ死んではいない。

手遅れであることに変わりは無いが。

お…おかあ…さんは…だ…大丈夫…。

あ、あなたは…な、なにも…気にする…こ…ことはないの…よ。

ずっと一緒…にい、いてあげられ…な、無くてご、ごめん…ね。

こ、これから先…ど、どんな事があ、あって…もつ、強く…い、生きな…さい…。

あ、愛してる…わよ…

匠…。

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?!俺はハッと目を覚まし身体を飛び起こした。

また嫌な夢を見ちまった…。

身体中を嫌な汗が流れる。

俺は何気に周りを見回した。

隣では、蛍が気持ち良さそうに寝ている。

昼間、あんな事があったからな…。

そりゃ疲れるよな。

婆「おいヒヨっ子。

えらくうなされてたねぇ。

ちょっとこっちへおいで。」

ババアが襖を開け俺を呼んだ。

俺は蛍を起こさないようにゆっくりと隣の部屋へ行く。

婆「あれから何年だい?」

匠「もう…二十年になる…。」

婆「そうかい…。二十年かい。

時が経つのは早いもんだねぇ。」

あの日、あの場所で母親が死んでからもう二十年。

警察の捜査では、死因は事故死。

でも実際は違う…。

母親は殺されたんだ。

俺に…。

婆「肩のモン、見せてみろ。」

ババアはそう言うと、俺のシャツを捲り上げた。

婆「まだ消えないねぇ…。」

匠「あぁ…。」

俺の左肩にはアザがある。

このアザが俺にとっては、何よりも忌まわしい…。

婆「これからどうするつもりなんだい?」

匠「蛍の事か?

なる様にしかならねぇだろ…。」

婆「お前はそうやってまた哀しみを背負うのかい!

いつかお前自身がその哀しみに呑み込まれちまうよ!」

匠「分かってる…。でもなぁ…ばあさん。

俺はとっくの昔に…

母親を殺しちまったあの時に…

もう呑みこまれてるんだよ…。」

婆「あれはお前であって、お前では無いとずっと言っとろうが!」

匠「そうだな…。

あれは俺じゃねぇ。

でも俺だ…。」

あの時、母親を殺した俺は、俺じゃ無かった。

俺の中に入り込み俺を乗っ取ったヤツの仕業だ。

だが、あの時、母親の腹を刺したあの時も、母親がゆっくり崩れ落ちて行くあの時も、俺の意識は、はっきりしていた。

母親を刺した手の感触さえも…。

それに…。

ババアは知らねぇが、必死に母親を呼ぶ俺は…。

嗤ってた…。

俺を使って母親を殺したヤツは今も俺の中にいる。

俺はいつかコイツを殺すと決めている。

このアザが消えた時。

「おはよ〜…」

蛍が目を覚まし、部屋に入ってくる。

婆「あらぁ。蛍ちゃんは早起きだねぇ(笑)」

蛍「だってこの子達が(笑)」

そう言って笑う蛍の周りには、犬、猫、果ては鳥に狸とさながら動物園の様な光景が拡がっていた。

婆「あらあら(笑)蛍ちゃんは人気者なんだねぇ。」

蛍は嬉しそうに犬を撫でる。

普通の人間には見えない動物達ではあるが。

匠「ちょっと散歩に行って来る。」

蛍「私も行く!」

一緒に来たがる蛍を制し、俺は一人で出掛けた。

蛍「……。

おばあちゃん?匠、何かあったの??」

婆「ヒヨっ子なりに考え事でもあるんじゃないかい?」

蛍「ふ〜ん…」

婆「蛍ちゃん?蛍ちゃんはヒヨっ…匠の事をどこまで知ってるんだい?」

蛍「ん〜…名前しか知らない。

後は優しい事くらいかな?(笑)」

婆「そうかい(笑)

匠は優しいかい(笑)」

蛍はおばちゃんの優しい笑顔を見つめていた。

婆「じゃあ少しだけ、あの子の話をしてあげようかねぇ。

聞きたい?蛍ちゃん?」

蛍「聞きたい!」

蛍は即答した。

婆「じゃあ、あの子の小さい頃の話をしようか…。

あの子は赤ん坊の頃、それはそれは可愛いかったんだよ。

両親も物凄く喜んでねぇ。

その溺愛ぶりは周りで見てる私らが恥ずかしくなる程だったよ。

そんなあの子が二歳の時だったかねぇ。

急に、鬼が来る!て騒ぎ出したんだよ。

二歳の子供が言う事だからねぇ、勿論、両親は耳を貸さなかった。

でもね?本当に鬼が来たんだよ。

まぁ、正確に言うと鬼に憑かれた女がね。

その女は当時、憑き物屋をやっていた私を訪ねて来たんだけどねぇ、それが来るのが匠には分かってたんだねぇ。

匠の両親にはそんな力は無い。

一代飛んで、私の力が匠に宿ったんだと思ったよ。

だからね、私は力を持つ者だけに施せる、儀式をしようと決めたんだ。

私らの一族はね?

そういった力を持つ者が産まれたら、その者を災いから守って貰う為に、神様を身体に宿すんだよ。」

蛍「神様?」

婆「そうだよ。神様。私も匠も身体の中に神様を宿してるんだよ。

神様の力と自分の持つ力を融合させて、善くないモノを祓ったりするんだよ。

だから匠にはそういったモノは近付けないはずだったんだよ…。

ある日、私は依頼人と会うために遠方に行かなくてはならなくなってねぇ。

二日間、家を留守にしたんだよ。

その時にあの事件は起こってしまったんだよ…。

昨日、蛍ちゃんも行ったろ?あの山へ。

あそこの頂上には、祠があってね。

何かを封じ込めてあったんだよ。

蛍「何かって?」

婆「それが私にも分からんのよ…。

でも、匠はそこに封じられておった何かに憑かれよった…。

私が出先から戻った時にはもう遅かった…。

匠は母親を殺してしまっとった…。

でもねぇ?普通じゃ考えられない事なんだよ。

匠には神様を宿してある。

その匠に憑いた位だから相当なヤツなんだろうねぇ。

私の施した、封魔も効果は無かったからねぇ。

今もアイツは匠の中におる。

じゃが今は匠の中に宿っとる神様が抑えとる。

そのバランスが崩れた時、匠は…。」

蛍「匠は私と一緒なんだね…。」

婆「そうだねぇ。だから蛍ちゃんを引き取ったんだろね。

誰よりも蛍ちゃんの気持ちが痛い程、分かったんだろうねぇ。」

「誰の話ししてんだ?」

婆「おや?ヒヨっ子?帰ってたのかい。」

匠「べらべらとくだらねぇ話し、してんじゃねえよ!ババア!」

婆「…。」

匠「蛍、家へ帰るぞ。」

そのまま匠と私はおばちゃんの家を後にした。

あれから匠はずっと何も喋らない…。

匠も私と同じ苦しみを知っている。

違う…私なんかとは比べ物にならない位に辛い思いをして来たんだ…。

蛍「ねぇ?匠?」

匠「…」

蛍「ねぇってば!聞いてるの?」

匠「…」

蛍「私、お願いがあるんだけど?」

黙ったまま匠は蛍を見た。

蛍「いっしょ〜のお願い!」

匠「…」

蛍「帰ったら、ハンバーグ食べに行こ?」

匠「………。ったく…。

何が一生のお願いだ…。」

匠はそう言うと少し呆れた様に笑った。

蛍「やっと笑ったね!」

蛍は嬉しそうに微笑んだ。

何やってんだ?俺は…。

十歳の子供に気を使わせて…。

ったく…。

ダセぇな…。

匠「よし!帰ったら死ぬ程、ハンバーグ食わせてやる!」

Concrete
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mami様。

おばあちゃん、かっこかわいいですよね?(笑)
こんなおばあちゃん見て見たい!

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むぅ様。

お願いします!
楽しみにしないで下さい!
ど、どうか!

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マコさん様。

わたくしに過度な期待は禁物ですぞ!
コメントありがとうございましたm(__)m

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かいさん、走り出しも快調ですね!

これからの続編にも期待しておりますぞ!!

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DODO Asakura様。

コメント有り難うございます。
匠と蛍。少し似た境遇を持つ二人がどの様な結末を迎えるのか。
お暇があれば、続きを読んでやって下さい。

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