中編3
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髪の毛

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もう5年近く前の出来事です。

私のある友人にアパートで独り暮らしをしている冴えないモブ男がいました。

しかし、神様は彼を見放さなかったようで、そんな彼に似つかわしく無いような、とても可愛らしい彼女が出来たのです。

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実際、その彼女さんとお会いした事もあるのですが、まあホントに可愛い方で薄くライトブラウンに染めたボブの髪に女の子らしいバレッタを付け、控えめなお化粧。ふわふわな、それでいてカジュアルな服装。芸能人に例えるなら有村架純ちゃんのような…

『え?天使?』とこぼしたくなるくらい、素敵な女性でした。

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彼女に問いました。

あんなモブ男の何が良かったのかと。

混じりっ気のない純粋な笑顔で「誠実で、あのぷにぷにしたお腹が大好きです!」

((世の中にはホント、いたんだなあ。天使。))

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それから数日して、天使ちゃんとも仲良くなり、2人で遊びに行くようになった私は、ある相談を受けました。

「彼、浮気してるかも…」

「浮気?」

((こんな天使が舞い降りたのに浮気やと。あのブタ野郎。食品トレイに乗せて出荷すんぞ。))

「彼の部屋に髪の毛が落ちてて。黒くて長い髪の毛。私のじゃ絶対ないし、偶然かなって思ったけど、行くたびに結構な量が落ちてて…」

「なるほどなあ。ほな、うちがちょい絞めて来るけ、待っとり。」

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天使ちゃんと別れた私は、その足でモブ男の家を訪問しました。

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「おお、どうしたん」

「どうしたんちゃうわ。この豚が。」

「え、急に何や。」

「何やちゃうわ。この豚が。黒い髪の毛って何や。おい。」

「ああ…その事か…」

「その事か…ちゃうわ。この豚が。」

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一切合切の罵声を浴びせ、家へ上がらせて貰った私は謎の絞扼感に襲われたのです。

「ちょ、何この部屋。」

空気が重いというか、澱んでるというか、酸素が足りない空間に詰め込まれているような、そんな息苦しさを感じました。

「近いうちに、雪にも見て貰おうって思っててんけど…」

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そう言って、3段ボックスを動かした壁には備え付けのコンセントの穴が2つありました。何の事はない、普通の壁付けコンセントです。しかし、その差し込み口の穴からは黒い長い髪の毛が数十本ほどズルリと顔を出していたのです。

「うわあ…。マジか。」

「2ヵ月くらい前から。初めは1本2本やったんが、どんどん増えていって。気付いたらこんな束で出てくるようになって。引っ張ったら何の抵抗もなくスルって抜けるねん。彼女には怪しまれるけど、こんなん見せたら絶対気味悪がられて別れようとか言われるかもせんし…。」

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((浮幽霊…ってよりは生霊の類っぽいな…))

そう思った私は、モブ男に告げました。

「うちじゃ何もしてやれん。ごめんな。お祓いとかもうちじゃ出来ん。でも、塩盛るくらいなら出来る。気休めかもせんけど、やろうか?」

「頼むわ…。」

私は、モブ男の家に盛り塩を設置しました。

幸いなことに、これが効いたらしく、あの謎の髪の毛は出て来なくなりました。

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天使ちゃんには、それとない説明をし、納得してもらうのに相当の時間を浪費しました。

そんな彼らも5年半程の交際を経て結婚しました。

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あの髪の毛の持ち主も、意図も、何も分からないままですが、今が幸せならそれで良いか。

精々、天使ちゃんを幸せにしてやれよ。

就職活動で真っ黒に染め、長くなった髪の毛を綺麗に纏め、挙式で晴れやかに笑う天使ちゃんを見て、私はこんな話を思い出したのでした。

Concrete
コメント怖い
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ふたば様

怖っ…
怖いですよ!!
コメントを頂いてる中での皆様の考察が、ヤンデレ/昼ドラ化していて、本当に恐ろしいですよ…!!!

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月兎様

初めまして。
コメントありがとございます。
素敵なお言葉まで頂戴出来て、嬉しい限りです…!!

今後も文章力ともに精進していきますので、また遊びにいらして下さいね♬

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雪様初めまして。
雪様の書かれる作品を一番最初に拝見しました。
流れるようなタッチで読みふけってしまいました…
これからも、投稿楽しみにしています、!!

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千草様

コメントありがとうございます!
お久しぶりですね♬
ちょくちょく覗いて下さってくれて、嬉しいです♬

イケメンなんて、滅相もありません…!

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ゆかちん様

今では笑い話として、
「あの黒い髪の毛が、2人の運命の赤い糸になったんさ。黒やけど。」と話の小ネタになりつつあります。(笑)

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ロビン様

そこ!?そこですか!?(笑)

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菜食主義の猫様

コメントありがとうございます!!
貞子様がそんな奇抜ヘアーで井戸から出て来たら、私はその手を優しく握って、まず美容室で真っ黒に染めて差し上げます。ええ。

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こめちゃん

こめちゃんの考察が真実やったら、
それ、霊よりも怖いんやけど…半端ないで…
こめちゃんの発想力の逸脱さに脱帽する…
今度、創作の推理系執筆に際して、アドバイスを頂きたい。

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つっきー

日本人やからかして、やっぱり黒髪の怖さレベルって倍増よね。
白髪よりも黒髪が…ひぇえ…

面白い!??
ホンマに!?大阪人にとっての最高の褒め言葉や!!うっへーい!!(壊

ロリータに関しては、
甘でもゴスでも美味しく頂けます(-ω-)/キリッ

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お久しぶりです。
…凄く怖いですね。
でも、それよりも雪様のイケメンぶりに目がいってしまいました。

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