中編5
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彼女の答え

そう、それは

突然のこと

彼女と前から約束していた

アイスクリーム屋さんの行列に並んでいる時のことでした

真夏の暑い日差しの中で

少し調子が悪そうだった彼女は

倒れたらしいんです

らしい、と言うのは

僕はそのとき彼女のそばにいなかったんです

僕たちは些細な事で喧嘩をしてしまいました

待ち時間が長かったことにも僕は少しイラついてたのかもしれません

少し頭を冷やそうと気まずいまま

彼女を1人残し僕は列を離れてしまいました

彼女からごめんねのラインが入り

僕も反省をし、列に戻ろうと歩いていると

列が乱れ人だかりができていました

そう、彼女が倒れていたんです

打ち所が悪かったと言うのが医者の見解でした

彼女の意識は戻ることなく

3日後に短い生涯を終えました

僕はあまりの突然の別れに

この事とどう向き合っていいかわからないでいました

実は付き合ってまだひと月ほどで

その日も3回目のデートでした

まだ彼女の事を誰よりも知っているほどでもなく

何枚かの写真がスマホに残っているぐらいで

ほんとに

まだ、これからでした

そう言えば

僕のどこが好きで付き合ってくれたのかも聞いていなかったし

知りたいこと、聞きたいことが沢山ありました

彼女の両親とも病院で始めて会いました

友人?

お付き合いさせていただいている?

どう挨拶しようかも迷いましたが

そのままを、言いました

ご両親は付き合っている男性がいることも知らなかったそうで

今までも彼氏がいた記憶はないと言っていました

彼女が入院してからの三日間、毎日病院に行きましたが、付き合いの浅い僕がそこにいることも場違いに思えていました

亡くなった時に母親に

短すぎる生涯でも

最後に青春の一欠片でも経験できたのは良かった、と

泣きながら、そう言われました

葬儀にも参加はしましたが

どこにいていいかもよくわからず

親戚の人たちも僕をどう扱ったらいいかわからない感じでした

ただ、なんで倒れた時に横にいなかったのかと、

そんな気持ちは言葉には出されなくても感じました

遺影の彼女は笑っていましたが

僕には笑いかけてくれているようには思えませんでした

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全てが終わり

なんとなく荷物の整理をしていると

文房具屋の紙袋が出てきました

中を見ると日記帳でした

そう言えば

最後のデートの日に

彼女が買って

偶然、僕が預かったままになっていたものでした

もちろんなにも書かれていないはずの

新品であるその日記帳をめくると

初めてのデートの思い出が綴られていました

何を食べた

何の映画を観た

そんな他愛のないことが書かれていました

あと、

運命かも、と書かれていました

それを僕は不思議と怖いとは思いませんでした

あまりに短かった彼女との付き合いなので

そう、彼女の事自体夢の出来事か

僕の妄想だったのかもと

思うようになっていたのです

明日起きると

日記帳は真っ白でなにも書かれていない、

そんな気もしてましたし

そのまま日記帳を閉じました

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次の日

起きて日記帳を見ると

また次のデートのことが綴られていました

僕が美味しいと言ったもの、

可愛いと言ったもの、

あと、

離れたくない、と書かれていました

僕は読みながら

明日、

僕が見るのは最後の日の日記だろうか

その日事故に遭ってしまった彼女は

どんな思いだったんだろうか

そんな事を思いながら僕は眠りました

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次の日ページをめくると

デートの前の日の日付がありました

「約束をしていたアイスクリーム屋さん

恋人が出来たら一緒に行きたいと夢に見ていた

少し待つみたいだけど

その間いろんな話も出来るし楽しみ」と

そのページには

花が1枚挟まれていました

紫色の可愛い5枚の花びらでした

「アイスクリームにライラックを添えて…」

と、日記は終えていました

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次の日からは日記は綴られる事はありませんでした

日記帳に、文字が現れる事自体不思議な事ですが

次に書かれることは

最後の僕への気持ちだと思っていたので

ここで終わってしまうのは

なのとなく腑に落ちませんでした

あの日記は生前の彼女の思いが現れたものなのか

それとも、今、彼女が書いているものなのか

そんな思いもあり

その答えも僕は知りたいと思いました

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49日の法事にも誘われましたが

参加はできませんでした

それまでも彼女を助けられなかった負い目が僕から消えることはありませんでしたから

法要の当日、

僕はアイスクリーム屋さんに並んでいました

あの日記帳の中で唯一書かれていた未来のこと

それをしてあげようと思いました

中で1人で食べるのははずかしかったですけど

彼女への最後の弔いのつもりで

席を待ちました

30分ぐらい待ったと思います

1人席がないこともあり

僕は2人席へ案内されました

彼女が好きそうな味は全く見当もつきませんでしたので

メニューの1番上にある

バニラを頼みました

バニラアイスがテーブルに運ばれ

店員さんが去ると

僕は日記帳に挟まれていた花びらをそっとアイスの上に乗せました

その時、視線を感じて顔を上げたんですが

そこには誰も座っていませんでした

アイスを見ると

花びらは消え

うっすらと紫色の模様をつけていました

僕はアイスを食べ終え店を出ました

もう彼女にして上げられることもないと思いました

信号待ちをしていると

すこし気持ちも軽くなった気がしました

信号が変わり歩き始めると

目の前を紫色の花びらが通り過ぎた気がしたんです

立ち止まりその先に顔を向けると

一台の車が迫ってきていました

僕の生きている時の記憶はここで終わることになります

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あの時の車の運転手の顔が

満面の笑顔をたたえた彼女の顔に変わったように見えたのは

僕の勘違いじゃなさそうです

僕が知りたかった答えも聞くことができましたし

だって

僕の隣にはずっと…ね

Concrete
コメント怖い
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怖いけど、この感じ好きです〜!これだけ強く想ってくれてたんだって確認(?)できたし、ある意味では幸せなのかもしれません…。もちろん、その方法は、完全ホラーですが。笑笑

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shibroさん〜
コメント、怖ポチありがとうございます(≧∇≦)
三題を与えられると(うち1つは自分のですが…)普段使わない言葉だとこんなに難しいものかと再発見しました
映画が好きなので
怖い表現も頭にある場面を言葉化する感じなんで
やっぱり読者さん任せですね笑
ありがとうございました(≧∇≦)

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最後ゾッとしました(((((((・・;)

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