中編3
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シロウヅ

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ある日、僕は友人と江ノ島へ行った。

電車の窓にはとても”いきいき’’とした入道雲が見える。

龍宮のような、紅い駅で電車を降りた。そこからは友人とは別々に自由に観光する事にした。

荷物は手ぶらになるようにリュックに入れていて、お茶、おにぎり、カメラくらいしか入っていないはずだがなぜかずっしりと肩に食い込んでくる。

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あまりに重く、リュックの中を一つずつ出していると、中にあるべきではないものが入っていた。

手のひらほどの小さな黒い亀だった。

なぜだろう。その時はなぜ入っていたのか深くこだわらなかった。というより、気にしなかった。噛んでくる様子は全くなく、可愛らしかったので手に乗せてみた。

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かすかに亀が足を動かすとすぐにバランスを崩し、私の手から落ちてしまった。このまま放置するのもあれなので、拾う事にした。よく見ると亀の足のウロコが少し剥けていて、ひっこめていた。

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亀をリュックに入れ、改めて観光を"しようとした" だんだん歩いて行くにつれどんどん肩にリュックが食い込んでくる。汗が目に入る。だんだん意識が遠のいていく。ついに僕は

shake

アスファルトに倒れ込んでしまった。

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shake

『…ああ、もうこのへんでいいよ お疲れ 脚はおかげで大丈夫だ…』

僕は仰天した。いつの間にか見知らぬ少年をおぶっていた。その少年が来ていた服はなんとなく古めかしかった。

『何じろじろ見てんだよ』

少年は茶っぽい髪に紅毛が混じっている不良?だとしてもいうべきことは言おう。

そっちこそどういうつもりだよ なんで君をおぶって歩かなくちゃならないんだ

『自分で拾ったくせに。今さら何だよ..ああなんか腹減った、なんか食い物ない?』

おにぎりなら…だけどこれは僕の分。

『なーんだ、おにぎりか、いらないよそんなもん』

なんだよその言い草は。少し贅沢なコメを使ったおにぎりなのに

『あんた名前は?』

あんたが先に名乗れ

『キサラギレン』

(少年は僕の名前を言った。そもそもなぜ知っている?)

それは僕の名前。

『現し界(うつしかい)の名前なんてどうでもいいんだ。俺が聞いてるのは、どこの家かってこと。あんたシロウヅなんだろ?珠を見せろよ、持っているだろう?』

タマ…

『なぁに赧くなってんだよ。だれの情夫(いろ)かって訊いてるんだ、今さら隠す事もないだろ』

イロ…

『あぁもう【蛻(から)】を拾ったからいいよ。脚の痺れも治ったし、自分で歩けるよ。…あんたの仲間、誰かあの世に行ってないか?でなきゃこんな都合いいところに蛻が転がってるわきゃない。』

(なんの話?)

(まさか…ねぇ…苦笑)

『んじゃここらで行くか、おっと、忘れていたよ。ほら駄賃、俥代。』

(少年は真珠粒くらいの翠の珠を寄越した。重みがある。こんなものは受け取れない。)

僕が辞退する前に少年は奥の宮の神門をくぐっていき、結界を超えて社の奥に姿を消した。祭壇の鏡が真夏の光を浴び眩しく瞬く。目がチカチカする。

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数日後。

家に友人との記念写真が送られてきた。写真をよく見るとあの少年が写っていた。結局名乗らなかったな。

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