中編3
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シラカワ ヤスオ 其の二

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12月16日、Jingle Bellsが鳴り響き、クリスマスmode一色の街並みに変わりつつ有る渋谷駅。白川は一人そこに居た。

去年とは違った凍てつく寒さの中、白川は自ら吐く白い息と共にジッと待つ。…対象者を狩る為に…。

対象者、本坂 源太郎 34歳。渋谷にマンションを持っている独身でチンピラ紛いの悪い噂の絶えないならず者。十代の頃、殺人及び殺人未遂を犯した。本坂の恐喝からの喧嘩、殴り合いの末の結末。しかし、警察は逮捕はできなかったので有る。眼と耳をゴルフクラブで潰されて殺されても…。

本坂は15歳の時にこの問題を起こしたが、厳重注意と補導という形で終わった。

この頃の少年法は少年の未来の為に、という口実からか刑罰が今とは比べ物にならない程、軽かった時代である。

それから十数年。

そんな「悪」のならず者道をひた走る本坂に、本気の恋の相手が見つかる。

そう。皆さんのお察しの通り吉田の娘、吉田 りんかで有る。

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白川は数時間前の 吉田と話をした内容を思い出す。

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吉田「あの、本坂という野郎は何度も私が殺してやろうと思い仕掛けたのですが、必ず護衛を3人つけているんです…。それも腹に拳銃を持った奴を…。違う何か、誰かからも追われていると思います。クソ野郎ですから!

私の手で…、この拳で殺りたくてたまらないんです!時間帯も、日も月も変えて計画を練り遂行しようと試みましたが、いつでも必ず3人いるのです…。初めて会った時に殺しておけば、りんかは殺されずに済んだのに…。踏み込めないこの情け無い父親を見て、りんかは泣いているのでしょうか……。」

白川は普段、口にしないタバコに火を付けた。

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吉田 りんかは当時21歳。ポニーテールの似合う、元気のある笑顔の可愛い女の子。某大学の二年生の頃、一人暮らしも慣れて来た時にたまたまバイトして居た居酒屋で本坂と出逢ってしまう…。

最悪の出逢いである。

最初はたまに店に来るくらいで1.2時間飲んで帰っていたが、いつしか帰る時間まで管を巻き、長居して りんかがバイトを終わると同時に強制的に連れ出されていた。

この事体を重く見た居酒屋の店主は翌日、吉田に連絡。りんかに吉田が問いただすと、りんかは堰を切ったように涙を流し、泣きだした。

「この事を親とかにチクると、みんな殺す。」と脅されていたと、りんかは言う。無理やり部屋に連れ込まれて乱暴され、そして本坂のモノはりんかの中に否応に入っていく…。朝まで何度も続け様に…。

襲われた事実を聞いた吉田は 震えながらに立ち、不動明王の様な顔で りんかに諭す様に優しく言う。

吉田「もう、心配は要らんぞ。安心しなさい。」

その日はりんかにバイトを休む様に言い、吉田が居酒屋に赴く。本坂の顔は店主が知っているので、来たら教えると言う算段だ。

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店主「吉田さん、くれぐれも店内で暴れることだけはやめて下さい。他のお客様にご迷惑がかかりますから…。お気持ちは十分に私にも分かります。本坂が来ましたら、店外へ連れ出して頂くと…。」と言うと、レジから入り口を凝視しながらコクンと吉田が頷く。

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開店時間五時からお客が入る。

店主「へい!いらっしゃーい!」

「こちらへどうぞ。」と、何組かカップルや若者が入って来た時だった。

店主「へい!いら……。」

中肉中背のその男はやって来た。本坂である。

店主「吉田さん…あいつです…」と言う前に、吉田の髪の毛は全て逆立っていた。

吉田「お前かーーーーーーーーッ!」と地面が、地球が割れる程の怒号を上げながら近寄り、本坂の胸ぐらを掴み外へ投げ出した。

続く…

Concrete
コメント怖い
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月舟さん、ロビン兄さん怖ポチ、コメントありがとうございます!

胸糞悪いでしょ?そらゃあ、ロビンさんも竹刀持ち出しますよね!

月舟さん、優しいお言葉ありがとうございます!

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