苦海、限りなき事 - 峰岸善衛の備忘録

長編13
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苦海、限りなき事 - 峰岸善衛の備忘録

とある晴れた日の夕刻。穏やかな海面を南に向けて航行するクルーザー。

デッキ上では、船客たちが船上から眺める夕陽の美しさに感嘆の声を上げている。

「見て!すんごい綺麗!」

「やっぱり陸の上から見るのとでは、大きさが違いますねえ。」

「見事だねえ。こんな景色を見るのは、今まで生きてて初めてですよ。」

紳士淑女の楽しげな声が飛び交う。

「皆さんともお友達にもなれたし。」

「これも船旅ならではの楽しみですよね。」

「ほんに、良い時代になりましたなあ…」

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ある春の日。

峰岸は、妻治子と共に、遊覧船に乗っていた。歴史ある漁港を出発し、周囲の島々の景観を楽しむ短時間のクルージングである。天候にも恵まれ、燦々と降り注ぐ陽光の下、青い海原に点在する奇岩、小島を彩る緑のコントラストを眺めていると、とても爽快な気分になる。

夕暮れ時になり、ぼちぼち帰港する船のデッキで辺りの景観を楽しんでいると、立て続けに二隻のクルーザーとすれ違った。よく見ると先行する船が後の船を曳航しているのである。

(曳航って難しいんだよな…。片方が故障でもしたのかな…。)

治安に関わる仕事をしていた峰岸は、安全が気になるのである。

繋がれた二隻のクルーザーは、ゆっくりとすれ違い、粛々と去って行った。

再び島々の景観に目を戻した峰岸は、どうもさっきのクルーザーが気になっていた。何故だろう…。

(そうだ…。曳航されている方の船に人が沢山乗っていた。)

彼等もまたデッキ上で楽しげに会話し、のんびりと周囲の風景を楽しんでいるように見えた。身綺麗ななりをした、ごく普通の人々だった。

(景観を楽しむのは結構だが、曳く方の船に乗せた方が良くないか?曳かれる方は、不安定で危ないんじゃないかな…。定員の問題か?)

再び峰岸が振り返った時、南に向けてゆっくりと進んでいく二隻の船影が、まだ見えていた…。

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数日後の夜。

久方ぶりに現れた先祖に近況報告をしていた峰岸は、ふと思い出して例のクルーザーの件を話してみた。何か気になること、事情がありそうだと彼が直感した話は、本当に妙な裏事情であることが多く、そしてそういう話は大抵の場合、既に先祖の耳にも入っているのである。

果たして今回も、全ての事情を知ったような雰囲気で、先祖はこう言った。

「その船は、紀州沖を南に向けて曳航されておったのじゃろう?」

「はい、それが何か…。」

「何か思い出さぬか。」

「はあ、それだけでは何とも…」

「補陀落渡海よ…」重苦しい声で先祖は言った。

補陀落渡海とは、南方に在るとされる観音菩薩の浄土を目指す目的で中世に始められたとされる、いわゆる捨身行の一種である。渡海を行う者(基本的には僧侶)は、僅かばかりの食糧と燈油を持って渡海船と呼ばれる動力の無い箱舟に一人乗り込み、沖合へ曳航された後で切り離される。後はひたすら観音浄土に行き着くことを願いつつ、海上を果てしなく漂流しながら往生を遂げていくのである…。

「あの曳航されていた船には9名の船客が乗っておった。彼等は全員あの世に旅立つために乗っていたのじゃ。」

「何ですって?」

無造作に語られる衝撃的な事実に峰岸は驚愕した。

「そもそも、あの船客達は、身寄りも無く余命いくばくも無い、早々と自分の始末をつけることを願っていた者ばかりじゃ。じゃが、もうひとつ、あの者達に共通しておるのは、悲しいまでに、真面目で“きちんとしていた”ということじゃ。」

先祖の口から淡々と語られる真実に、峰岸はじっと聞き入っている。

「自分はもう長くない…。もし、このまま孤独死して、発見でも遅れた日には、遺体はどろどろの腐乱死体になり、周囲に異臭を蒔き散らし、床に腐汁は染みつき、部屋は事故物件となってしまう。発見した者や遺体の処理に当たる者には、地獄を見るような思いをさせる。即ち”他人様にご迷惑をおかけしてしまう”。それだけは避けたい。何よりも、そんな姿を世間に曝したくない。誰にも迷惑をかけずに、ひっそりと静かに始末をつけたい…。そういう価値観を根強く持ち続けている者は、まだまだおる。常々そんなことを案じておった者達に、とある葬祭業者がこの話を持ちかけたのじゃ。」

淡々と語られていく重苦しい真実を聴きながら、峰岸は思う。

(金も無く、そもそも身寄りが全く無かった場合、誰が始末をつけてくれるのだろう…。最近は墓に入るのだって一苦労のご時世だ。色んな事情から、お墓の数自体減りつつある。樹木葬や、海洋散骨にしても色々と面倒くさいし、費用もかかる。”おちおち死んでもいられない“という苦い冗談もよく耳にする。そんなことを心配している余命いくばくも無い人達に、葬祭業者は持ちかける…。

”どうせなら、観音様の浄土に行きませんか?要は故事にちなんで補陀落渡海をしようというわけです。表向きは友人同士でのクルージングですが、日が暮れたら睡眠薬を飲んで、お休みになってください。後は、当社スタッフが必要なことは全て処置して、最後に船底を爆破します。目覚めたときには、浄土ですよ…。乗っている間に船ごと沈めてもらえれば、ご遺体はそのまま水葬になるわけで、お墓の心配は要りません。水深の深い所で沈めますから浮かび上がることもありませんし、人前にお姿を曝すこともありません…。

“実は貴方のようなご心配を抱えておられる方は他にも沢山いらっしゃいます。みんなで乗って行けばさみしくないし、船客同士が、いわば墓友というわけです。費用の点ならご心配なく。勿論ご自宅の遺品の整理なんかも、こちらでやっておきます…。”)

「そんな罰あたりな話、本当にあったのでしょうか。」

先祖の言葉とは言え、峰岸はまだ信じられない。

「このご時世、罰あたりな話なぞ、珍しくないではないか。」

皮肉な調子で先祖は応えた。

「それにしても、もし本当なら自殺関与・同意殺人罪になります。犯罪ですよ。」

「関係者全員、口をつぐんだまま海に沈んで行ったとしたら、どうやって立証できる?」

先祖の言葉に峰岸は黙りこむしかない。

「だとしたら…。せめて、あの人達が安らかに往生できてると良いですね。」

「往生なぞ出来るわけがなかろう。」

少しでもこの話に救いを見出したい峰岸の望みは、先祖の冷徹なひと言によってあっさりと否定された。

「考えてもみよ。補陀落渡海のような捨身行は、死の恐怖や飢えの苦痛に向き合いつつも、なお端然としていられるだけの超人的な覚悟と胆力を要するのだぞ。長年修行を積んだ老境の僧侶が、覚悟を決めて臨んだ場合でさえ、失敗することもあるくらいじゃ。普通の人間が、たまたま老い先短いからと思って臨んだくらいでは、とても成功するものではない。しかも今回、死に臨んで経を上げる坊主もその場にはいないのだぞ。」

「じゃあ、あの人たちは…」

「当然、死の間際の迷いや恐怖に囚われて、この世に執着を残してしまった。残念ながら、船幽霊となって、あの海域を彷徨い続けることになろう…。」

先祖の言葉が峰岸の心を一層暗くする。彼の心の中に、船内の情景が浮かび上がってくる。

当初、夕陽の素晴らしさに感嘆し、楽しげに言葉を交わしていた船客たちも、日が暮れて暗くなるにつれ、だんだん口数が少なくなってくる。船内を重苦しい雰囲気が支配し始める。

(…ねえ、本当に浄土なんか行けるんでしょうか?)

(…。)(…。)

(…やっぱり、これって正しくないような気が…)(今更そんな事言うなよ!ここまで来て、引き返せないじゃないか。)(今なら引き返せますよ!船はとりあえず浮いてるんだし、ね、やっぱり生きて帰りましょうよ!通りかかった船に助けを求めることだってできるじゃないですか!)(ここまで来てなんですか!わしらの気持ちを乱さんで欲しい。)(やっぱり、怖いよおぉー!死ぬの嫌だよおぉー!)(黙れ!静かにしろ!)(南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…)

(ええい、うるさい!うるさい!うるさあい!)(おい、ナイフなんか持ちだしてどうする気だ!)(うるさい!そんなに怖いなら、わしが一思いに殺してやる!)(はは、こりゃ面白え。どうせみんな死にに来たんじゃねえか!手間が省けるってもんだ。)(じゃ、あんた勝手に死ねよ!俺は助かりたい!)(ナイフをとりあげろ!)(畜生!はなせ!)(うぎゃあーっ!)(きゃあーっ!)

(…何て事を…。もう、だめだ。この渡海は血で汚されてしまった。もう浄土には行けない…)(あんたのせいだぞ!どうしてくれるんだ!)(南無阿弥陀仏、南無阿弥陀仏…)(怖いよおぉ…嫌だよおぉ…)

既に曳航索を外して傍に停止している曳航船からは、葬祭業者が笑い転げながらこの模様をモニターで眺めている。

(ぎゃっははは、いやいや、こりゃすっげえ面白えなあ。この期に及んで何て醜い連中だ。…さて、そうは言っても時間が来た。名残惜しいが、ぼちぼちやるか。)

(…あの、まだ睡眠薬も飲んでないみたいですけど…)

(もういいよ。あいつらそれどころじゃねえだろう。ふん、どうせ浄土なんか信じてもいなかったくせに。単にてめえの死骸を海に捨てに来ただけじゃねえか。それに睡眠薬なんて、どうせ最初から積んでいなかったのさ。へへ。さあ、皆様、とっとと魚の餌におなりなさい!くそったれ!)

嫌悪と侮蔑の想いをこめて、葬祭業者が船底の爆薬のリモコンスイッチを入れる。鈍い爆発音と共に船体が幽かに揺れたかと思うと、ゆっくりと傾斜し始めた。一斉に湧きおこる船客たちの悲鳴、怒号、そして哄笑が船内を満たす。

こうして絶望、恐怖、後悔、憎悪、妄執、我利その他諸々の念を満載した船は、ゆっくりと暗い海底に沈んでいく…。

「誰も浄土なんか行けなかったんですね…。」

暗澹たる思いにすっかり打ちのめされてしまった峰岸が呟く。

「しかり。誰も行けなんだ。」

「救いの無い話ですね…。」

「しかり。救いの無い話じゃ。」

「誰も幸せにはなれなかったし…」

「そこは少々違うな。喜んだ者はおる。」

「えっ?」

先祖の言葉に峰岸は面食らう。まだ先があるのか?

「他でもない。あの葬祭業者よ。今回の船客達の戸籍を売りさばきおった。」

「何ですって!」

淡々とした口調で語られたとんでもない事実に峰岸は面食らう。

「もともと、あの業者は、倒産寸前の状態で、社長もぼつぼつ廃業しようかくらいに思っていたところじゃ。廃業ついでに小金が稼げれば、儲けものぐらいに考えておった。」

「そうか…。その一方で、色んな事情で他人の戸籍を入手したがっている人間や、それを手配する輩は、確かに存在します。人知れず海に沈んで二度と浮かび上がってこない人間の身元を、小遣い稼ぎとばかりにそいつらに売ったということですか…。」

「念の入ったことに、生前に各人の戸籍謄本、保険証等の証明書類、一切の事務手続きに関する白紙委任状まで提出させておった。後始末に必要ですので、とか適当なことを言ってな。あの船客自身、身寄りも無く、そもそも死ぬつもりなのだから、後はよろしくというわけじゃ。みな、文句も言わずに協力した。勿論僅かに残った遺品の類も、奴等がきっちり金に換えた。」

「この世から静かに消えたまま誰にも気付かれない渡海者の情報を金と引き替えに教えてやり、念の為、本物の謄本や証明書類等もセットで付けてやる。それを買った者は渡海者の身元情報を使用、管理できることになり、事実上戸籍を買うのと似たような効果を得る…。最近は近隣住民や大家とかも碌に顔を会わせないことも多いから、近所で顔を覚えている者も少ないでしょうしね。あの人達が消えた部屋には、いつのまにか別の人間が入居し、何食わぬ顔で渡海者達の人生を引き継ぐ…。」

町の片隅で、誰にも知らぬ間に転々と一人の人間の人生が譲渡されていく…。その不気味な現実に峰岸は戦慄を覚える。

「そういうことじゃ。そして、そういった諸々の関係者の仲介を行うには、幅広い情報網が必要なのは分かるじゃろう。膨大な情報量を取得、管理し、結びつけることを得意とする者にしか、こういう絵は描けぬ…」

「そうか!あいつらこんな所にまで…」

インフィマティコーポレーション。自ら開発した人工知能を活用し、日々至る所で”負”のエネルギーを生産させる一方で、その反対物として発生する莫大な”正”のエネルギーを収穫し続けている世界的IT企業。そのビジネス実態は、単なるIT企業を超えて、様々な分野への投資を行う、一大コングロマリットであり、傘下にはあらゆる業態の企業がぶら下がっている。

(考えてみれば、お得意のビッグデータを駆使すればこういう人達をリストアップするのも可能というわけだ…。独居老人で身寄りの無い者とか…。そしてその氏名、住所等々。病院のデータなんかとも絡めたら、その中で余命いくばくも無い者とかも絞り込める…。

(こうやって”見込み客リスト“を作ったら、あとは倫理観に欠けて、金にも困っているような葬祭業者を探し出して、この計画を唆す。リストを提供して、”営業”をかけさせて参加者を集めさせる。おんぼろクルーザーや操船スタッフも必要ならば手配してやる。裏サイトの情報なんかも手に取るように把握できるから、他人の戸籍を欲しがっている連中を探し出してきて紹介する。こうして日々”船客”を募って有る程度人数がまとまったら、静かに出港する…。

(もともと成功する筈のない補陀落渡海は、当然のごとく阿鼻叫喚の最期を迎える。勿論そこには、莫大な”負”のエネルギーが発生し、どこかでその莫大な反対物、”正”のエネルギー場が発生する。それを整斉と収穫すれば、諸々のコストを考えても、グループ全体では、たっぷりおつりが来るというわけだ。このスキームも、多分例の人工知能が発案し、インフィマティが実行してるんだろう。戸籍売買の金目当てで嬉々として船客を集める葬祭業者。そいつらを自分のパーツとして使いこなすインフィマティ。まったく、とんだ”終活ビジネス”じゃないか!)

峰岸の心は、暗い海そのもののように、暗澹たる思いに沈んでいる。

「何て酷い…。ただ、他人様に迷惑をかけたくないと思っていただけなのに…」

「他人に迷惑をかけず、静かに始末をつけたい。確かにそういう彼等の想いに嘘は無かろう。じゃが、やはり、これは正しいやり方とは言えぬ。厳しいことを言うが、修行を積んだわけでもない人間が、”真似ごと”で捨身行をするなぞ、お前も言った通り罰あたりもいいところじゃ。そして、必要も無いのに船を沈めるのは、海洋にゴミを蒔き散らすことにもなる。また、もしも沈むところを誰かに見られた場合は、海難事故ということになり、発見者は救助に駆けつけて来よう。海上保安庁や水上警察も駆り出されるであろう。これこそ多くの人に迷惑をかける行為ではないか。」

確かにそのとおりである。峰岸自身治安の仕事についていただけに、よく分かる。

「迷惑をかけたくないと思いながら、なぜ、皆さんそういう所に気付かなかったのでしょう?」

悲しげな顔で峰岸が問いかける。

「繰り返すが、もともと彼等の気持ちに嘘は無い。そういう意識さえ全く無い者に比べれば、ある意味立派と言えるかもしれぬ。だが、それを心配するあまり焦りが生じていた所に、一見良い解決策のような話を囁かれたため、つい、乗ってしまったのじゃろう。冷静に考えれば、そもそもこんなのは間違っている、ということはすぐに判る筈じゃが、なまじ案ずる心が強いばかりに、目が曇っていたのじゃろうな…。」

そう聞くと余計に救われない気分になる。あの葬祭業者の口車に乗せられなかったら、この人達も普通に往生を遂げていたかもしれないのに…。峰岸の心に、やりきれない気持ちが沸いてくる。

「ところで善衛よ。」

「はい?」

「墓参りは、ちゃんと行っておるか?」

「も、勿論です!」

狼狽える峰岸の様子にうっすらと笑みを浮かべると、例によって先祖はあっさりと消えて行った。

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深夜。

眠りについた峰岸は、怖い夢を見た。

夢の中で彼は、世界一周旅行の豪華客船に乗っている。おりしも、豪華な船内パーティーが開かれて、船客たちの楽しげな会話が辺りを満たしている。

と、突然大きな衝撃と共に、船体が激しく揺さぶられた。

「氷山だ!」「沈むぞー!」「助けてー!」

あっという間に船体は傾き始め、辺りは悲鳴と怒号に包まれる。パニックになった船客が闇雲に走り始める。

峰岸も狂ったようになって、人ごみをかき分け、甲板の上に出ようとするが、もがけども、もがけども、全く前に進めない。

「くそっ!どけっ!畜生!どけーっ!」

峰岸は手足を無茶苦茶に振り回しながら、もがき続ける。目の前の人を突き飛ばし、なぐり、蹴とばしながら、進もうとする。

いつの間にか甲板の上に立っていた。

ふと気が付くと何故か右手にナイフを握っている。その刃はべっとりと血で汚れており、峰岸の右手も手首まで真っ赤に染まっている。

「うわっ!」

ナイフを思い切り甲板に投げ捨てた拍子に思わず振り向いた峰岸は、自分の背後の光景に目を疑った。

自分の後ろに、長い長い死体の列が出来ている。

老若男女、無数の死体が延々と折り重なって列を作っている。流れる血が川となって峰岸の脚元を浸し始める。

「げっ!」

胸を刺されて血を流し続ける者、頸動脈から勢いよく血を噴出させている者、脇腹から内臓がはみ出てくる者。

「いたいよぉ…」

まだ息のある者のうめく声。

(俺が…この人達を…?)

「うわあああーっ!」

悲鳴を上げた峰岸は、脚元に出来ていた血だまりに脚を取られ、甲板を滑って行く。あわや海に落ちそうになったところで、何とか船べりを掴んで身体を止める。

と、「べちゃり」。

音がして、彼の腕をぬらりとした手が掴んだ。

目の前には船べりに、ぴちゃ、ぴちゃと手をかけながら、次々に海から上がってくる異形の群れがあった。

腐敗ガスによって青白いビニール人形のように膨れ上がった水死体。見る間にその体からは、髪や肉が剥がれてずるずると流れ落ちていく。ぽっかりあいた眼窩からは、鮮血のような色の赤い蟹が次々と這い出てきては、ぽとりと甲板に落ちる。あたりには呼吸すら満足にできないくらいの猛烈な腐臭が充満している。

(…これであなたもお友達…)

(…一緒に旅を続けましょうよ…)

(…結局どろどろ…)

(…浄土には行けなかったし…)

(…おちおち死んでもいられない…)

それを合図に一斉に沸き起こった船幽霊達の哄笑が、けたたましく辺りを包む。と同時に、ひときわ大きく船体が傾き、船は一気に転覆した。

峰岸の身体は、一切の光の消えた暗黒の海面に向かって、ゆっくりと吸い込まれて行った…。

[了]

Concrete
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いえいえ、スルーしたつもりはございません。しっかりと受け止めさせて頂きました…って受け止めてどうする。自分でも何かわからなくなってきましたf^_^;。お休みなさい。

あっ、タイタニックと炊いた肉・・・うん、スルーですよね。
くだらなさ過ぎましたね・・・反省します。

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