中編5
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ある記憶の話し

私は今まで度々ちょっとした不思議な体験をしてきました。

その時の事を時々書きたいと思うので長くて拙い文章ですが、読んで頂けたら嬉しいです。

それでは…

私が小学4年生の時の話しです。

私にはずっと前から時々思い出す光景がありました。夢で見た事があるのか、その辺は不明でしたがこんな光景です。

“古びた家の和室(仏間と居間の二間つづき)で4〜5歳くらいの女の子が二人、仲良く遊んでいます。

それを一人のおじいさんが目を細めて微笑みながら見ています。

おじいさんは顔色が悪く痩せており、縁側にある椅子に腰掛けていました。

浴衣を着ていて布団も敷いてあったので、身体の具合が良くないのかも知れません。

因みにそのおじいさんを私は何処かで見かけた事がある様な気がします。

何処で会ったかは定かでは無いのですが…。

そのおじいさんが二人の女の子に、何か話しかけ(何を言ったのかはよく分かりません。)立ち上がって仏間の隅にひざまずいて手招きをして女の子達を呼びました。

二人は嬉しそうにおじいさんに走り寄っていき、ひざまずいているおじいさんを囲んで覗き込んでいます。

おじいさんは古い蓋付きの缶を持っていて、その蓋を開けるとお菓子が沢山入っており、女の子達に二つ三つ、手渡しました。

女の子達は喜んで部屋の中を小走りしてまた遊びに戻り、おじいさんは微笑みながらまた眺めている…”

という、特別な事は無く、ごく日常的な光景です。

けれどそれをいつ見たのか、誰なのか、夢なのか何なのか、全てが謎でした。

ただその光景は人の声や音がほとんど聞こえない(それとも思い出せない?)のですが、時々女の人の笑い声や、

「良かったね。」

という言葉が聞こえたりしていました。

姿は見えず、その女の人は声だけですが、とても優しい、落ち着く声で、それだけは耳に残っていました。

そんな内容をずっと前から…記憶に残っている限りでも保育園児の頃には既に思いだしていたのです。

そして小学4年生のある日、私は母にこの時々思い出す光景の話しをしてみました。どうせ、

「そんなの分かんないよ、夢か何かでしょ。」

と、言われると思いましたが、他に聞く人が思い浮かばなかったので母に聞いてみました。

母は予想に反して、

「どうしておじいちゃんの事をお前が知っているの!?」

と、すごく驚いた感じで私に言いました。

母が言うには母の父親、つまり私の祖父は若い頃病気で身体を壊してしまい、仕事に出る事もほとんど出来ず、家計は奥さん(祖母)が貧しいながらも何とか支え、彼は家の中で静かに日々を過ごしていたそうです。

祖母は優しく物静かな祖父とは正反対の厳しい人で、家族を養う為、土方仕事をしていた男勝りな女性(夫に代わってわざと厳しくしていたのでしょう。)で、一服の時に貰うお菓子を、疲れて空腹でも自分は一切食べず、家に持って帰って来て、それを一家の長である祖父に渡していました。

祖父もまた、そのお菓子を自分は食べず、普段お菓子など食べられない自分の子供達(母とその兄弟)の為に大事に缶の中にとっておき、子供達が何か良い事をした時などに少しずつお菓子をくれていたそうです。

月日が経ち、子供達が大人になって長男が家を継ぎ、娘(私の母)も嫁ぎ、他の兄弟も独立して、一家は貧しく無くなってもう祖母が無理に働かなくても良くなったけれど、祖父は缶の中にお菓子をとっておいて、今度は可愛い孫達にお菓子をあげていたのです。

私がもの心ついた時から祖父はもう亡くなっていたので今まで考えも及ばなかったのですが、母の話しからすると、私の記憶の中のおじいさんは母方の祖父だったのです。

そして私には少し歳の離れた姉が二人(二人は年子)いるので、多分私の記憶の中の二人の女の子は小さい頃の姉達の様です。

その祖父は私が産まれて間もなく亡くなって(この話しはこの時が初耳でした)、

私は産まれてすぐに高熱が続き、母が届ける母乳も全て吐き出して全く飲めず、みるみる衰弱していくのでお医者さん含む皆はもう諦めていた中、母だけは自分が退院した後も毎日私のもとに通いガラス越しに私を見つめ泣いていたそうです。

そして母も窶れ、母乳も出なくなってしまう程弱ってしまいました。

祖父はそんな自分の娘がいたたまれなかったのでしょう、病院に行き、泣いている母にそっと、

「お前はこの子の為に出来る限りの事をした。だから自分を責めてはいけないし、お前にはもう二人の子供がいるんだからお前がそんなんじゃ、子供達がかわいそうだ。

それにこの子は大丈夫、きっと助かる。」

そう言ってまた帰ったそうです。

それから何日もしないうちに祖父は急に体調を崩し、すぐ病院に入院をしました。が、劇症肝炎という病気であっという間に亡くなってしまったそうです。

祖父の呆気ない死と引き換えの様に、生死をさ迷っていた私は皆が信じられないくらい、あっという間に回復していき、病気だったとは思えないほど元気になって退院したそうです。

この話しを聞いて私は祖父が自分の身を犠牲にして私を助けてくれたのだと思い、今まで何も知らず、満足にお墓参りどころか仏壇に手を合わせる事すらしてこなかった事に罪悪感を感じ、実家に連れて行っもらってとりあえず仏壇を参る事にしました。

仏壇に飾ってある祖父の遺影は正しく私の記憶の中のおじいさんでした…

この時はこれで私の記憶の謎が全て解決したと思いました。が、

そもそもどうして私が今まで話しに聞いた事もない祖父の事をこの目で見てたかの様に分かるのか?そして時々聞こえる女の人の声は誰の声なのか…??根本的な解決には至っていなかったのです。

また暫く月日が経って私は大人になり、今現在妊娠中で、段々大きくなる自分のお腹を撫でたり、お腹の中の子に話しかけている今、解った様な気がします。

そう、それは…。

怖い話投稿:ホラーテラー 玉梓さん  

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