中編3
  • 表示切替
  • 使い方

ファン③

wallpaper:3706

以前お話しさせて貰ったバンドメンバーのヒトコワもこれで3作品目となります。

今回ご紹介するのはうちのギターを担当していたシンの片割れ、タクミのお話です。

nextpage

その日は、ライブで東京へ遠征していました。

夜行バスで出発し、帰りは少し観光してから新幹線で帰って来ようと云う事で、プチ旅行気分に浮足立っていました。

シンの一件から2か月ほどしか経っていなかったので、シンの為の気分転換旅行になれば良いと企画したものでしたが、まさかあんな事になるとは誰も予想していませんでした。

nextpage

東京でのライブも好調で幕を下ろし、合同ライブだったので、他のバンドメンバーと打ち上げをするべく、都内某所のBarを貸し切りにし、飲めや歌えやのどんちゃん騒ぎをしていました。

ドンドン運び込まれる料理とお酒を堪能しながら、深夜を回ってもその宴は続きました。

nextpage

午前3時を回った頃、幹事の1人がお開きのコールをかけ、参加していたキャスト達は次々とお店を後にします。私たちは、まだ騒ぎ足りない。とカラオケ店へ足を向かわせていました。

nextpage

その時、ある女性(少女?)が私たちに声を掛けました。

「あのっ…!!〇〇(バンド名)の方々ですよね!?私、九州から観に来ました!大阪のライブも見に言った事あります!」

何と嬉しい事でしょうか。

九州からわざわざ本州に渡って、私たちのライブを観に来てくれているとは。

nextpage

しかし、申し訳ないことに、その子の顔に覚えがなく謝罪交じりに感謝の言葉を告げました。

「これ、あの、受け取って下さい!」

そう言って渡されたのはA4程の大きさの可愛くラッピングされた箱でした。

どうやら、その子はタクミのファンらしく、私たちにくれた贈り物とは別に、先程のものよりも一回り小さな、これまた可愛くラッピングされた箱を彼に渡しました。

nextpage

『ありがとう。愛してるよ。』

そう言って、その子を思い切りハグしたチャラ男。禿げれば良い。爆ぜれば良い。

喚起にさめざめと泣く彼女に手を振って、私たちはその場を離れました。

nextpage

カラオケに着いて早々にプレゼントを開封することになりました。

メンバーのみんなへ。と送られた箱の中には、メンバーの顔をアニメ調にしたフェルト生地のマスコットが入っていました。

「すげえ。ハイクオリティ。」

「これ、次からのライブで付けようや!ほなあの子等も喜ぶで!」

「…コレ、俺似てへんやん。」

『アキラそっくりやで、この剃り込みの感じとか、怒り眉とか。』

「タクミがもろたやつも開けてや!」

nextpage

その声をきっかけにタクミが個人的に貰った箱を開封します。

ピンクと赤で綺麗に縛られたリボンを解き、包んである紙を捲った時、タクミの手が止まりました。

「どないしたん?」

『…んー、何かコレ開けたくないかも。』

「何でやねん、はよ開け、はよはよ。」

『いや、コレ開けん方が良い気がする。』

「ほな俺が開けるー♬」

そう言って箱を取り上げたのは、シンとベース担当のリョウでした。

nextpage

開けた瞬間、2人の顔が真っ青になりました。

「っわ!!」

手から落ちた箱の中に入っていたのは、子猫の死体でした。腐乱はしていないものの、箱の中や子猫に付着していた血は黒く変色していましたから、絶命してから時間は経っているように思いました。

nextpage

誰も何も言えないまま、その現場に唖然とするばかりです。

箱の中に入っていたメッセージカードにはこう書かれていました。

nextpage

≪タクミ、大好きです。大好きなタクミに、私の大好きなものを送ります。

〇〇(恐らく子猫の名前)です。可愛がってあげて下さい♡≫

nextpage

考えた末、その子猫は東京にある動物霊園で引き取って貰うことになりました。

行く末は見ていませんが、ちゃんと火葬してもらい、納骨して貰ったと信じるしかありません。

nextpage

私たちが出会ったあの女性をライブ会場で見かけることは何度かありました。

そこまでメジャー的に有名では無かったので、出禁などの措置まで追い付かなかったのが悔やまれます。それでも、彼がバンドを抜けずに続けてくれたことに、今でも感謝しています。

nextpage

人間の愛情は、時として理解しがたい行動を取らせてしまうようです。

タクミはそれ以来、猫に対して、また女性に対して、過度の恐怖心を覚えるようになりしました。

バンドが解散して2年程経ちますが、その傷は癒えぬままです。

Concrete
閲覧数コメント怖い
83815
31
  • コメント
  • 作者の作品
  • タグ
表示
ネタバレ注意

はとちゃん(with 天使)

うちのバンドも相当やったけど、
他バンドの方々にもなかなかのファンがいてたんよ。
その話も、どっかで出来たら良いなと思ってます!!!!
でも、人間って本当に理性がぶっ飛んだら何するか分からないから怖いよね…

つっきー

実話やで…めっさ怖かったで…
リアルにトリハダもんやったで…

何もしてないのに消えてたんよ!!
謎。怖。

むぅ様

私のバンドを含め、ヴィジュアル系の他バンドさんにも結構粘着質なファンが多かったようなので、もうこれは、ヴィジュアル系バンドの宿命かな…あはは…と。(ノД`)・゜・。

ゆか

好き過ぎると、どうにかなっちゃうんやろうね…
犯罪臭もぷんぷんするけど、警察はこの程度じゃ動いてくれぬ。
実害がなかったからねえ(ノД`)・゜・。

修行者サブアカ様

ファンなんですよ。むしろ、そこはファンであったと信じたい…
嫌がらせにしては度が過ぎてるし、余計に怖いです…

呪い、かもしれませんね…ふふふ…

ちっちっち様

いつもコメント下さって嬉しいです♬

私もびっくり&怖でした(笑)
2回目は無事に投稿出来て良かっただあ…

特に、私のバンドはヴィジュアル系だったのでぶっ飛んでるファンは結構いました…

こめちゃん

ホントにそれね。
人間の発想力って、時に狂気…
ってこめちゃん猫アレルギーか。辛いね…猫好きやったら余計に…

表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意
表示
ネタバレ注意