イヤホンから聞こえた老婆の声

中編3
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イヤホンから聞こえた老婆の声

これは私が体験した怖い体験です。

私は夜に、イヤホンで音楽を聴きながらランニングするのが日課でした。

田舎なので車通りはあまり無いですが、街灯が所々にあるのでとても走りやすかったのです。

その日も、いつものように音楽を聴きながら道を走っていました。

しかしある公園(と言ってもブランコくらいしかない小さな公園)の前を通る時に、イヤホンの音の調子が悪くなってきました。

(もうそろそろ新しいのを買うようかな?)

なんて心で思いながら、たまに雑音が聴こえても無視していました。

やがて公園を過ぎ、そこから少し先にある林の前まであと50メートルという所で、恐怖の出来事が起こりました。

突然イヤホンから、まるで電波の悪いラジオのような、「ピーピー、ジージー、ザーザー」という不快な音が聴こえだしたのです。

私もさすがに気味が悪くなり、いったいどうしたんだろうとイヤホンをつけたままの携帯をポケットから出そうとしたまさにその時、急に音の聴こえなくなったイヤホンから確かに声が聴こえてこう言いました。

   今すぐに帰れ

まるで耳もとで言っているような生々しい声で、しかも老婆のしわがれた、怒っているような苦しそうな声でした。

その瞬間私は恐怖のあまり、全身に寒気と緊張が一斉に走りました。

後ろを振り返っても、もちろん誰もいません。しかし恐怖はまだ続きました。

イヤホンを急いで外して前に向き直ると、今度は林の前から真っ黒の影のような塊がうっすら見えました。

私は目の錯覚かと思って、目を凝らしていました。(正直恐怖で体が硬直していた)

ですがその影が街灯の下に来た時、その黒い塊は確かにあって、しかも近づいてきていることに気が付きました。私は夜にランニングをしていた事を心から後悔しました。

もつれそうになる足を必死に動かしながら、とにかく走りました。

もしそいつがすぐ後ろにまで来ていたらと考えるだけで、怖くて後ろを振り向く事もできませんでした。

やがて公園の前まで来ました。

しかしそこでブランコをちらりと見てしまったことをまた後悔したのです。

なんと黒い影は、自分から見て右斜め前にあるブランコのそばにおり、しかも今度はうっすらと足の部分だけ見えていました。(今思うと女性だったかも)

私は軽くパニックになっていて、涙が出てきました。

泣きながらがむしゃらに家まで走り、家に帰って鍵をかけた後も布団の中で朝まで震えていました。

あの老婆のような声と黒い女性(?)は、今でも耳と目に焼き付いています。

そのせいでそれ以来、イヤホンも恐くて付けられないし、夜に家を出るのも恐くなりました。

今打っているこの手も震えています。

だって音の出る電子機械が近くにあるとあのような声が聴こえてきそうですし、

パソコンの黒い部分から今度は顔の部分が見えたらと思うとほんとうに怖いです。

もし私に霊感があれば、あの時足だけでなく全身が見えていたかもしれないんですよ!?

そして私に帰れと言ったのはあの黒い影か、それとも私を助けようとした誰かか、未だに分かりません。

とにかく、皆さんもイヤホンと夜には気を付けてくださいね。

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