中編3
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沖縄

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私の中学の修学旅行先は沖縄でした。

修学旅行の中でも「学びを深める」そんな名目で盛り込まれた、ガマへの入洞体験と、首里城参拝、更に戦時中を生きた方々の当時の体験談を聞く。そんなイベントが目白押しだった修学旅行で、私が唯一行きたくなかったのは、ガマへの入洞体験でした。

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ガマとは皆さまも知っている通り。防空壕のことです。

投下する爆弾から身を守るために、洞穴へ籠もり爆撃を避けるためにつくられたシェルターのようなものです。ですが不運なことに、防空壕に手榴弾が投げ込まれ、中へ避難していた市民や兵士諸共、被弾し全滅したガマも少なくはなかったそうです。

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私たちが訪れる先にあったガマは、その手榴弾の餌食となり、約百数名ほどが命を失ったと報告されている場所でした。

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バスで近くの停留場に着いた段階から、私の体調は著しく悪く、冷や汗が流れ、顔色は真っ青。歩くのも困難といった状況でした。ですが、戦争の傷跡を学ぶ。という課題に燃えていた教師は私の体調不良には目もくれず、訴えさえ拒絶し、私はそのガマの内部へと足を踏み入れることになったのです。

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80名の生徒が入ったその空間は、狭く、蒸し暑く、普通でも気分が悪くなってもおかしくない様な状態でした。ガマへ入った瞬間、私の頭の中に色々な声が響きます。

それは、恨み辛み憎しみ悲しみ痛み苦しみそんな痛烈な叫びがどんどん私の中に入り込んでくるのです。辛抱堪らなくなった私は、ガマへ入って3分足らずで気を失ってしまったようで、次に目が覚めた時は旅館の自室の布団の上でした。夕食の声が掛かりましたが、食欲などあるはずもなく、ただ早く家へ帰りたい。とそればかり考えていました。

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その夜です。

__ずず、ずずずずず…ずず

何かが床を這うような音がします。

就寝時間で真っ暗になった部屋から聞こえるその音は、人為的なものでは無いと容易に想像が出来ました。

『このまま寝てしまおう。』

その私の思いに反して上半身を起こす私の身体。

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見ると足元には両足の無い兵隊達が身体を引き摺るようにほふく前進をしている姿がありました。

そのまま部屋の隅に視線を移します。小さな子供を抱き、うずくまる母親の姿が見えました。顔が焼け爛れ、我が子を守ろうと、覆いかぶさるように抱きかかえる母親。子供の「お母さん、熱いよ。痛いよ。」という声が脳内へこだまします。

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私の両脇には若い女学生が数名立っており、恨めしそうに私を見下ろしていました。本来であれば、艶やかな黒髪であったであろう、その髪は焼け焦げており、片側の頭皮は剝き出しになっています。床にぽつりぽつりと血が滲み、独特な鉄の香りが鼻を付きました。

背後から唐突に絞められた首。苦しさに息を吐くと、声からして初老の男性のように感じました。「苦しい。痛い。ずっとずっと痛い。痛い。死ねない。苦しいのに。」男性の指がドンドン私の首に食い込んでいく感覚。

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『ああ、死ぬんやな。』

そう思い、目を閉じた時、友人に頬を思い切り叩かれていました。

「雪!何してんの!」

私は自分で自分の首をきつくきつく絞めていたらしく、私の呻き声に気付いた同室の友人が私を叩き起こしてくれたようです。

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沖縄で体験したその出来事は、夢だったのか、霊障だったのかは定かではありません。

しかし、私の首についた痣は1週間ほど消えずに残っていました。

それから沖縄へは、行っていません。

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あの方々を理解し、敬い、寄り添ってあげるという事が私にはまだ無理なようです。

この霊と関われる力を少しですが持っている私に出来ることはなんだろうと、考えるきっかけになった体験でした。

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二度と、あんな悲しいことが起きないで欲しい。

あんな辛い思いをした人々と同じような経験をさせないで欲しい。

と、今は願う事しか私には出来ません。

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F様

度々のコメントありがとうございます!!
本当にありがたいお言葉を多数頂けて、とても嬉しいです。
昨日はメッセージにて酷い誤字脱字失礼しました…
眠気がピークの時は安易にPCを叩いてはいけませんね…(ノД`)・゜・。

これからも楽しんで頂けるようなお話を投稿していきます!!
是非、仲良くしてくださいね!!

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雪様
沖縄に残った傷跡は本当に深いモノです。
ですが、雪様のような優しい方がこうして死者の魂に寄り添って頂ける。
それだけで彼等の魂は救われると思います。
私如きが言えることではないのですが、素敵なお話をありがとうございました。
今後も応援しております。
雪様のお話はとても読みやすく、惹き込まれるようです。
今までの作品も一掃して読んで参りたいと思います。

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F様

怖&コメントありがとうございます。
F様は沖縄在住の方なのですね!!!!
沖縄自体はとても素敵な場所で、私も大好きな場所のひとつです。
故に、彷徨える魂たちに寄り添えない自分の不甲斐なさを呪い、立ち入れない次第にございます…ゆくゆくは。大手を振って沖縄へ再旅行したいと思っております。
沖縄は自然が豊かで人々もおおらかで、とても素晴らしい場所です!!

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初めまして。Fと申します。
私は沖縄で生まれ育ってもうかれこれ20年以上になります。
雪様のお話しを読んでコメントさせて頂きたくて登録しました。
確かに沖縄にはまだまだたくさんの古傷が残っております。
ですが、雪様にとって沖縄が決して居心地の悪い場所にならないようになることを祈っています。沖縄はとてもいい場所なんですよ(*´▽`*)

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こめちゃん

沖縄を嫌いにはならんよ!!
あんな綺麗な海、町、人、嫌いになる要素なんて皆無!!
だからこそ、立ち入れない今の状況は凄い悲しいなって思うね…
うちにもっと霊との交信をしっかり出来るスキルがあれば…なんてね…

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ゆか

コメントありがとう♡

霊を近くに感じなかったり、信じなかったりすると、やっぱり軽率な事してしまう子っていてるでな…。でも無知は罪やないから、そうやってちゃんと叱ったゆかは偉いと思う!うちやったら殴り倒してるかも…

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つっきー

つっきーも似たような体験をしたんか…
沖縄って凄い綺麗やし、良い場所やし、何回でも行きたい場所ではあるんやけど、戦争の傷跡って結構深く付いてて、うちにはまだ行く勇気が無いわ…
ホンマに素敵な場所なだけに、悲しいなって思うんやけどね。

そんな中、つっきーらしいグルメ話題を挟んでくれて、うふふ。って和ませてくれて、ありがとうやで( *´艸`)♡

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shiburo様

コメントありがとうございます!
そのお言葉が励みになります…
霊を視るというのは怖いばかりではなくて、こんな風に悲しい思いもするんだ…
なんて感傷に浸ってしまった一件でした。

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ちいちゃん

コメントありがとう!!
嫌な思いっていうよりは、何だか凄い悲しい思い出になっちゃったなあ…
って感じかな(ノД`)・゜・。
怖いって感じはほとんどなくて、辛いとか悲しいとか苦しいって感じがバンバン伝わって来たよ…

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