長編16
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本質〜畏〜

遂に匠さんの暴走が始まった。

圧倒的力の前に為す術も無く倒れたサクラさん。

窮地を救うべく現れた、紫水さん、葵さん。

だが、二人の力をもってしても暴走を止める事は出来なかった。

そして…。

二人が導き出した答えは、匠さん諸ともその中に宿るモノを消し去る事だった。

どうしても納得出来ない僕は三人の間に割って入る。

だが、理性を失った二人はそんな僕に気付かず、匠さんを消しにかかった。

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あぁ…。

僕はこのまま…。

僕は自分の確実な死を予感していた。

でも、恐怖も後悔すらもない。

僕が犠牲になる事で、1億分の1でも匠さんの助かる可能性が上がるのならそれで構わない。

何だか暖かい…。

凄く心地が良いなぁ…。

死ぬ時ってこんな感じなのか…。

紫水さん…。

葵さん…。

匠さん…。

今までありがとうございます…。

僕は静かに瞼を閉じた。

…………………………………………………………。

…………………………………………………………。

あれ?

僕はもう死んだの…か?

僕は自分が生きているのか死んでいるのか分からず、閉じた目を再びゆっくりと開ける。

ぼんやりと霞んで見える僕の視界。

それがはっきりした時、僕の前に背を向けて立つ人物の姿が見えた。

僕「だ…誰…?」

「いやぁ。

危なかったねぇ(笑)」

ゆっくりと僕の方を振り向きそう言った人物。

僕はその人を見た瞬間、安堵の涙を流していた。

僕「あ…ぁ…。」

「話さなくていいよ?

ただそこに居ればいい。

ね?(笑)」

僕「お…お…叔父さん!

叔父さん!!」

僕に背を向けて立っていた人物。

それは優しい表情の叔父さんだった。

叔父「カイ君…。

良く頑張ったね。

そんなに傷だらけになって…。

そこまでしても、あの術者を守りたかったんだね…。」

僕「僕…僕…」

泣いているせいか上手く話せない。

叔父「許せないねぇ…。」

え?許せ…ない?

叔父「自分達では抑えられないから消す?

その為には、自分達でコントロール出来ない程の力さえも使ってしまう…。

そして何より…。

カイ君をここまで傷付けて、それすらも分かっていない…。

僕は少しあの二人を買い被り過ぎていたようだね…。」

?!

叔父さんが話す背後で、二人の気がまた大きくなっている。

僕「お、叔父さん!

う、後!」

僕は精一杯の声を出し、叔父さんに危険を知らせた。

叔父「うん!

中々の力だね(笑)

あの二人も良く頑張った。

もう少し心の成長が必要だけどね(笑)」

叔父さんがそう話す間にも二人を包む気がどんどん大きくなっている。

叔父「少しだけ…。

少しだけ寝ていて貰おうか?」

叔父さんはそういうと二人の方を向く。

叔父「カイ君?

そこから動いちゃダメだよ?

まぁ、その傷じゃ動けないだろうけどね(笑)」

!!

叔父さんが僕に話し終わった瞬間、僕の体に異変が起こった。

僕は今、地面に座り込み、真っ直ぐ前を向いていた筈…。

筈なのだが…。

叔父さんが話し終わったと同時に、体がフワフワと浮いている様になり、自分が今、上を向いているのか下を向いているのかすら分からない…。

恐らく数秒…。

そんな状態が続き、それが不意に解けた時、叔父さんが話し始めた。

叔父「もう大丈夫(笑)

あの二人には少しだけ寝ていて貰ったからね(笑)」

叔父さんの言葉に、僕は視線を二人へと写した。

?!

いつの間にか地面に倒れ込んでいる二人。

あの数秒で…?

叔父さんは一体、あの二人に何をしたんだ?!

それにさっきの変な感覚…。

ジャリ…。

?!

僕が二人に気を取られていた時、背後で足音がした。

忘れていた…。

確か匠さんはこっちへ…。

僕はゆっくりと後ろを振り返る。

僕の目の前…。

匠さんは仁王立ちで僕を見下ろしていた。

そしてその目を叔父さんに向けた。

闇の様に真っ黒な目で叔父さんを見つめた途端、突風が吹き荒れた。

叔父「君が…。

確かに凄いね(笑)」

叔父さんは暴走を続ける匠さんを目の前に、余裕とも取れる笑顔を作っている。

だが匠さんはそんな叔父さんにお構い無く、叔父さんに対して手を伸ばした。

叔父「僕は君の相手はしないよ?(笑)」

!!!

叔父さんがそういうと匠さんがもの凄い早さで後方へ飛ばされていく。

お、叔父さんは今、何をしたんだ?

叔父さんは後方へ飛ばされ地面へと落下した匠さんを見ながら言う。

叔父「う〜ん…。

あの二人は本当に目が曇っていたんだねぇ…。」

目が曇る?

叔父「自分達が想像もしなかった圧倒的力を前にして、とても冷静でいられなかったんだろうね。

だから本質が見抜けなかった…。」

本質?

見抜けなかった?

僕「ど、どういう事なんですか??」

僕は叔父さんに尋ねた。

叔父「そうだねぇ…。

結論から言うと、彼は暴走なんてしちゃいない。

まぁ、かなり危険な状態である事は確かだけれどね。」

え?

匠さんが暴走していない??

僕「暴走していないって…。

そんな…そんな事ないですよ!

少なくともあそこにいる匠さんは、僕の知る匠さんじゃありません!

それにサクラさんだって手遅れだと…。」

叔父「サクラさん?

あぁ…開祖の末裔の事だね?

それは無理もないよ…。

あの術者は自分の孫であり、弟子。

そんな大切な存在が、目の前であんな姿になったんだ…。

冷静でいられる訳がない…。

だから、術のキレも鈍ってしまった…。」

僕「そうだとしても…あの匠さんの変わり様…。

あれは絶対に普通じゃありませんよ!」

叔父「言っただろ?

かなり危険だって。

でもギリギリの所で抑えてる。」

「お、叔父さん?!」

不意に叔父さんの背後で声がした。

叔父「やぁ。

目を覚ましたかい?(笑)」

そこには紫水さん、葵さんが二人並んで佇んでいた。

葵「貴方がどうして此処へ?」

叔父「どうして?」

紫水「術者の事は私達に任せると…。」

叔父「まぁ、君達の言いたい事は分かるよ。

僕は君達を信用していない訳じゃないんだよ?

でも、僕が来なければ間違いなくカイ君は死んでいた。

それに僕は、術者の暴走を止める様には言ったけど、殺せなんて一言も言っていないだろ?」

葵「も、申し訳ありません…。」

叔父「別に怒っている訳じゃないよ?(笑)

この件は君達に任せているんだからね(笑)」

紫水「叔父さん…。」

叔父「さぁ、時間だ。

僕はもう戻らないと。

後は任せていいね?」

紫水、葵「はい!」

叔父「うん!(笑)

いい顔だ!(笑)

これなら大丈夫だね。

カイ君?

その傷で辛いだろうけど、これから起こる事をしっかりと目に焼き付けておくんだよ?

人の想いは何よりも強い。

どんな化け物よりもね。」

人の想い?

化け物より強い?

僕には何の事か分からない。

叔父「紫水君、葵君?

畏れる必要なんてないよ?

彼は化け物でも何でもないんだから。

いいね?

最後に一つだけヒントをあげるよ。

彼に宿りし神は、本当に二体かな?」

??

叔父さんがそこまで話すと急に目の前がブレた様になり、元に戻ると叔父さんの姿はもう、そこには無かった。

紫水「カイさん…。

本当に申し訳ありません。」

葵「私達の力不足であなたをこんなに傷つけてしまった…。

本当に申し訳ありません。」

僕「ぜ、全然大丈夫です!

自分の事は自分で守るって言ったでしょ?

それより…匠さんの事を宜しくお願いします…。」

紫水「カイさん…。」

葵「分かりました。

あなたが自分を犠牲にしてまで守ろうとした方です。

必ず私達が元に戻します。」

僕は葵さんの言葉に安心し、ふらつく足取りで近くの巨木に背を預け座り込んだ。

紫水「それにしても…。

叔父さんが言っていた事…。」

葵「えぇ…。

彼に宿る神は二体では無い…」

二人は暫く考え込んだ後、お互いの顔を見合せ、静かに頷いた。

そして既に立ち上がり、こちらへと歩き出している匠さんに向かって静かに歩を進めた。

葵「余り時間は稼げません。

出来るだけ早くお願いします。」

紫水「分かっています。」

そういうと葵さんはその場で足を止め、ブツブツと何か唱え出した。

紫水さんは自分の額に人差し指と中指を揃えて当て、こちらもブツブツと何か唱えている。

そして紫水さん、匠さんの距離が数メ―トルになった時、葵さんが静かに両手を拡げ天に掲げた。

すると、まるでカ―テンを掛けたかの様に空から地面に向かって暗闇が迫って来る。

それはすぐに辺りを包み、完全なる闇となった。

なんだ?

何も見えない。

何が起こっているのか全然分からない…。

僕は不安にかられ、キョロキョロと辺りを見回していた。

紫水「葵さん!

もう結構ですよ!」

突然聞こえた紫水さんの声。

それを合図に辺りを包んでいた闇が消えて行く。

やっと周りが見え始めた時、匠さんの正面に立ち、両掌を匠さんの胸にあてがう紫水さんの姿が見えた。

不思議と匠さんはその場を動かない。

暫くすると紫水さんは匠さんから手を離し、ゆっくりと葵さんの元へ戻って行く。

紫水「私達はとんでもない過ちを犯しておりました…。

叔父さんが言った様に、彼は化け物でも何でもありませんでしたよ…。

ただ、私達が彼を畏れ、戦う事しか頭に無かっただけ…。

まだまだですよ…私達も…。」

葵「やはり…。

三体目の神の仕業ですね?」

紫水「えぇ…。

良く頑張ってくれていましたよ。

ただ、善くないモノの力が余りに強大過ぎて抑えきれなくなりかけてました。

なので、私の力を流し、加勢させて頂きました。」

葵「初めから私達がそれに気付いていれば…。

目の前の強大な力に怯え、本質を見抜けなかった…。

なんと情けない…。」

二人の会話を黙って聞いていた僕。

まるで全てが終わったかの様なその内容に僕は状況が飲み込めない。

僕「あの…。

さっきから言っている、本質ってどういう事なんですか?

それに、匠さんはどうしてあそこから動かないんですか?」

紫水「本質ですか…。

確かに…彼は暴走を始めようとしています。

ただ、彼の暴走はまだ始まっていません。

今の状態は、彼の中に宿る善くないモノの力が漏れ出しているに過ぎません。

私達二人はその漏れ出した力に畏れを感じ、今、彼の中で起こっている事に目を向けられませんでした。」

葵「その通り…。

初めからそれに気付いていれば、元より彼と戦う必要など無かったのですよ。」

戦う必要がない?

何が何だか分からない…。

紫水「先程も言いましたが、彼の中に私の力を流し込みました。

もう私達にするべき事はありません。

後は静かに見守りましょう。」

見守る?!

僕「見守るって?!

匠さんがあんな状態で放っておくって事ですか?!

そんな無責任な!」

?!

納得の出来ない僕が、紫水さんに食ってかかった時、それまで動かなかった匠さんが不意に両膝を地面に付いた。

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何だ?

ここは何処だ?

眠りから目覚めた様に瞼を開くと、そこには光一つ無い暗闇が拡がっていた。

辺りを見渡すと、遠くに明かりが見える。

ちっ…またかよ…。

俺はこの間と同じ様にその明かりに向かって歩き出す。

やっぱりかよ…。

明かりに近付くと、この間の様に小窓程の空間があり、そこから外が見えた。

?!

外を覗いた俺は、自分の目を疑った。

そこには、もがき苦しみながら地面を転がるババアの姿。

おい!バアサン!

何やってんだ?!

どうした!!

誰にやられた!

俺は必死に叫ぶが、外に声は聞こえていない。

?!

そこで俺は思いだした。

確かこの間、同じ事があった時、水面に写った顔は間違いなく俺の物だった…。

まさか?!

この間の事も、今目の前で起こっている事も夢じゃなくて現実なのか?!

て事は、今バアサンを苦しめてんのは俺自身?!

俺がそんな事を考えていると、俺であろうソイツがバアサンの首に手をかけた。

おい!

てめえ何してやがる!

離しやがれよ!おい!

俺は必死に叫びながら手を止めようとするが、どうにもならない。

ヤバいヤバい!

このままじゃバアサンがやべぇ!

俺が半ば諦めかけた時、俺の手を誰かの手が掴んだ。

そいつは俺からバアサンを助けてくれた。

そしてもう一人、雷を操るヤツまで現れて俺を止めようとしてくれている。

誰だか知らねぇが、何でもいい!

これが本当に俺なら構わねぇ!

早く俺を殺してくれ!

外に届かないと知りながらも叫ぶ俺。

そこで俺の視界がぼやけ始め、眠る様にゆっくりと暗闇へと落ちていった。

どれくらい経ったのか…。

再び目を覚ました俺は光のある方へと歩を進めた。

外には俺に背を向け、地面に座り込む一人の男性の姿。

?!

カイ?!

カイじゃねぇか!

てめえ何やってんだ!

何でてめえが!

い"っ!!

突然、俺の左肩が痛み出す。

その痛みは今までに無い程の激しいもので、俺は立っている処か、意識を保っているのがやっとだった。

カイ…。

頼む…。

早く…早く逃げてくれ…。

俺はもう…俺じゃねぇんだよ…。

意識が朦朧として来た。

だが、気を失うとカイが危ない気がして、俺は必死に目を閉じまいとこらえる。

…た…。

??

……く…。

朦朧とする意識の中で、俺の耳に何かが聞こえた。

…くみ……。

…た…み…。

匠…。

?!

間違いない!

誰かが俺の名前を読んでいる。

だが、今の俺には周りを見回す事さえ出来ない。

そんな俺に対し、その声はどんどん大きく、はっきりと聞こえて来た。

「匠…?

匠?」

?!

こ、この声…。

俺の名前を呼ぶ声…。

その声を俺は知っていた。

忘れようとしても、絶対に忘れられない大切な人の声…。

俺は静かに涙を流していた。

匠「ほ…蛍か?

悪りぃな…。

む、迎えに来て…くれたんだな…。

もうすぐ…もうすぐお前のとこにい…行くからよ…」

俺はこれが夢でも嬉しかった。

もう一度、蛍の声が聞けた…。

それだけで十分だった…。

「匠?

何弱気な事言ってんの?(笑)

そんなの全然、匠らしくないよ?(笑)

それに…匠がこうなっちゃったのは私のせいだもんね…。

私の為に、匠は…。」

匠「ば、バカ野郎…。

蛍のせ、せいなんかじゃね、ねぇよ…。」

蛍「匠…。

でも…。

でも、もう大丈夫だよ?(笑)

匠は絶対に私が守ってみせるから!

匠が私にしてくれた様に、今度は私が匠を守る番だよ?

だから匠も頑張って!

ね?」

separator

匠さんが地面に膝をついてから数分。

ピクリともその体を動かす事は無かった。

僕「し、紫水さん?

匠さんはどうしちゃったんですか?

本当にこのままで大丈夫なんですか?」

動こうとしない匠さんが心配になり、僕は本当に何もしない紫水さん達に少し疑問を感じていた。

紫水「彼は今、何もしていない訳ではありませんよ?

彼の中で何かが起こっている筈です。

それはとても私達に手出し出来る物ではありません。

今は彼と彼に宿る神を信じて、ただ待ちましょう。」

匠さんの中で何かが起こっている…。

本当だろうか…。

「あ"ぁぁぁぁぁぁ!」

?!

今までピクリともしなかった匠さんが突如叫び声をあげた。

頭を抱え苦しんでいる。

僕はそんな匠さんを見ていられなかった。

紫水「カイさん!!

行ってはいけません!」

匠さんに近付こうとする僕を紫水さんが制止した。

葵「今、彼に近寄ってはいけません!

あなたが行っても、神相手に何も出来る事はありません!

いえ、あなただけでは無く、神を前に私達人間の出る幕は無いのですよ。」

確かに…。

この二人でも相手にならなかったのに、僕が行ってもどうしようもない…。

匠さんは更に大きく叫び声をあげ、苦しんでいる。

紫水「出ましたよ!」

紫水さんが突然叫び、匠さんを指さした。

見ると、前屈みに倒れ込んでいる匠さんの左肩付近から、黒い霧の様な物が立ち込めている。

?!

それは徐々に形を成し、人の様になっていく。

僕「あ、あれは?!」

葵「あれが、術者に宿る善くないモノの正体。」

あれが、匠さんの中に…。

その黒い人の形をしたモノは空中へと高く舞い上がり、再び匠さんへと目掛けて急降下を始めた。

また匠さんの中に入ろうとしている!

このままじゃ…。

?!

変わらず倒れ込んでいる匠さんに視線を戻すと、今度は青い霧の様な物が匠さんの体を包み込んでいた。

僕「今度は一体何が?!

あれは何ですか?!」

紫水「あれも術者に宿るモノですよ。」

あれも匠さんに宿っているモノ?

元々、匠さんに宿っていた神というモノは善くないモノに吸収されたとサクラさんは言っていた。

だとすると…。

あれが三体目の神?!

匠さんへと向かい急降下する黒いモノがその背中に触れた瞬間、パァ―ン!と渇いた音が辺りに鳴り響いた。

そして、黒いモノはバラバラになり、地面に散らばっている。

終わったのか?

僕がそう思ったのと同時に、その黒いモノがまるで個々に意思を持つ様に動きだした。

まだ終わってないのか?!

僕はただじっとバラバラになった黒いモノを見つめていた。

ソレは徐々に一ヶ所に集まっていき、元の形を成そうとしていた。

そんな時、匠さんの体を包んでいる青い霧の様なモノも動きを見せていた。

ソレは匠さんの体を離れ、徐々に立体的になっていく。

?!

ソレが完全に形になった時、僕は言葉が出なかった。

先に現れた黒いモノは、ただ人の形を成したモノだった。

だが…後に現れた青いモノ…。

人の形では無く、完全に人…。

それも若い女性…。

これには流石の二人も驚いた表情をしている。

そして本当に僕達が驚かされたのはここからだった。

「貴方達のおかげで、こうやって匠を守れる事を本当に感謝しています。

ありがとうございます。」

その女性は本当の人間の様に言葉を発した。

紫水「貴方は…。

蛍さんですね?」

蛍?!

蛍さんって匠さんが手にかけてしまったあの…。

じゃあ、匠さんに宿っていた、三体目の神って蛍さんの事だったのか?!

匠さんを守りたい一心で、自らが匠さんの守り神となって、ずっと匠さんの中に…。

蛍「はい(笑)

私、蛍っていいます。

匠に救って貰った幸せ者です(笑)」

救って貰ったって…。

匠さんは蛍さんの事を救えなかったんじゃ…。

蛍「あ…。

すみません。

先に用事を済ませてもいいですか?」

蛍さんは僕達にそういうと、黒いモノに近付いていった。

蛍「許さない…。

匠をこんなに苦しめた貴方を許さない!

匠だけじゃない!

匠のお母さんも!

匠から大切な者を奪った貴方を私は絶対に許さない!」

?!!!!!!

突然、蛍さんの体が青い光に包まれた。

その光は蛍さんの体の周りで渦巻いている。

黒いモノも体の周りを更に黒い霧の様なモノで包んでいく。

そして、その二つが触れ合った時、余りの衝撃に近くにいた僕達は吹き飛ばされた。

砂埃が舞う中、立ち上がった僕達は蛍さんの方を見た。

そこには先程の光を纏った蛍さんでは無く、穏やかな表情で匠さんを見つめている蛍さんの姿があった。

黒いモノの姿は無い。

紫水「終わりましたね…。」

葵「そうですね…。

それにしても、蛍という少女…。

元はただの人の筈…。

それが今や神…とは…。」

紫水「それ程までに彼を想っていたのでしょうね…。」

蛍さん…。

蛍さんは、結果的に匠さんの手によってこの世に別れを告げる事になった…。

でも蛍さんは、匠さんに救われたと言っていた…。

きっとそこには、僕達では到底理解出来ない二人だけの特別な想いがあるのだろう…。

「ほ、蛍…か?」

匠さんが蛍さんに気付きその名前を呼んだ。

どうやら正気に戻った様だ。

蛍「匠?

疲れたでしょ?

でももう大丈夫だよ?(笑)」

匠「蛍?

本当に蛍なのか?

蛍!

蛍…。」

匠さんは蛍さんの姿を見て泣き崩れている。

匠「すまねぇ…。

すまねぇなぁ…蛍…。

俺はお前を救ってやりたかった…。

なのに…俺は…俺は!」

蛍「匠?

何言ってるの?(笑)

私は十分、匠に救われたよ?

もうこれ以上無い位に幸せだったよ?

本当だよ?

私はもう十分、匠に救って貰った…。

本当に…本当に幸せだったんだから…。」

匠「………。」

蛍「それにハンバーグもいっぱい食べれたしね?(笑)」

匠「ったく…。

そうか…幸せだったか…。」

蛍「うん!(笑)

だからこれからは私が匠を守るんだ(笑)

ずっとずっと匠の中で匠を守るからね?

匠が嫌って言っても離れないんだから!(笑)」

匠「ったく…。

お前の好きなだけ俺の中にいやがれ…。」

蛍「ほんとに?(笑)

やった!

じゃ、ずっと匠の中にいるね(笑)」

そういうと蛍さんの体が徐々に薄くなってきた。

匠「蛍…。

ありがとな…。」

蛍「うん!(笑)

また匠に何かあったらすぐに出てくるからね(笑)」

そう笑って蛍さんは消えていった。

僕「た、匠さん!

大丈夫ですか?!」

僕は匠さんに近寄って声をかけた。

匠さんは袖で涙を拭いながら僕にいった。

匠「大丈夫かじゃねぇよ!

てめえはバカか?

力もねぇくせにしゃしゃり出やがって!」

僕「?!

す、すいません!」

匠「でも…ありがとな…。

そっちの二人も…。

紫水に葵だろ?

本当にすまねぇ。」

紫水「とんでもありませんよ(笑)」

葵「私達は結局お役に立てませんでしたから。」

やっと匠さんが正気に戻り、今回の叔父さんからの依頼は何とか終える事が出来た。

サクラさんもあれ程苦しんだにも関わらず、ほとんど無傷で、流石としかいい様がない。

僕はと言うと…。

思いの他、傷が深く病院で何針も縫われた事は、この際、良しとしておこう。

僕の傷が落ち着いたら、今回の事を叔父さんに報告に行こうと僕達が話していると、匠さんも是非、叔父さんに会いたいとの事で、四人で報告に行く事になった。

叔父さんへの報告へ行くのだが、僕達四人、特に僕、紫水さん、葵さんの三人は少し気になる事があった。

それを確かめたくもあった。

それは蛍さんが消える間際、僕達に言った言葉。

蛍「貴方達が叔父さんと呼ぶ人物…。

言いにくいけど彼は…。

彼は危険過ぎる…。」

Concrete
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はと様。

泣いて頂けましたか!(笑)
さぁいよいよ最終章突入でございます!
最後まで、自己満足を貫かせて頂きますm(__)m

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月舟様。

行けるとこまで…。
行けるとこまで……

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セレ―ノ様。

全快おめでとうございますm(__)m
しかし…。
また急かす!
もう少し寝ていて下さい!(笑)

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