短編2
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目を擦る。

 実際の体験談である。

 子供の頃から、目が悪かった。単純に、ゲームのやりすぎとか暗いところで本読むとか、視力に良くないことの積み重ね。後は、きっと、目をこすりすぎたのだと思う。

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 子供のころから、目を触るのが癖だった。

それは、目をこするとうにょうにょするものが見えるからだ。他の人はどうか知らないけど、目をこすると、うにょうにょするものが見える。

 透明なゴミじゃなくて、色がある。赤色、青色、黄色、緑色。それが、紫色になったりする。

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 それが収束して、中央でドーナツみたいな光になって、解れて消える。

それを見るのが好きで、目をよく擦っていた。

そういう風に、過ごしていたら、ふとある時。

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 視界の端っこに、人みたいなのが立ってる気がした。

最初は気のせいだと思って、特に気にせずに過ごしていた。

 でも、気のせいじゃなくて、常に、視界の端っこに何かいる気配がするようになった。

その人に視線をやるように目を動かすと、徐々にその人が動いてきて、徐々に大きくなって近づいてくるようになった。

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 その時点で怖くなって視線を外すと、居なくなるけど、直ぐにまた人の形ができる。

目を閉じて、じっと耐えても、目を開くと、はしっこにいる。瞬きすると、消えるけど、目を開いてじっと睨むようにすると、徐々に大きくなって、近づいてくる。

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 怖くて怖くて溜まらなかった。

だから、人の形を見たくなくて、目をこすってうにょうにょを出した。

うにょうにょが、目の奥で光って収束して紫色になって消えていく。

子供ながら気を紛らわせることで、精神的な負荷を抑えようとでもしたのだろう。

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  結果、色々目がおかしくなった。

天井の模様が人の顔に見えるというのは、良くある話。

それが実際、人の顔に見えるようになった。それから、身体の感覚が徐々に変わっていく。

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 眼を閉じた時、視界に光った粒ようなものが見えたら、体中に無数の虫がはい回るような感覚に陥った。痒みが止まらなくて、夜にすっきりと眠れないようになった。

 天井から、たくさんのネズミの大群が迫ってきたり、糸を伝うように無数の蜘蛛が落ちてきたり、小型犬くらいの大きさの芋虫がそこら中にはい回っていたり。

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 そんな変なものが見えるということを、誰にも話すことはできず、子供の頃を過ごした。

  目は擦らない方が良いですよ。

 

 

 

 

 

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