中編3
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たてだっこ

ある女性保育士がいました。

彼女はとても優秀な保育士でした。

優しく、誰からも好かれる性格の彼女は、保育園の子どもたちからの人気も高く、乳児から年長組まで、幅広い子どもたちからなつかれていました。

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手遊びやわらべ歌のレパートリーも豊富で、彼女のまわりにはいつも、子どもたちの明るく楽しげな歌声や笑い声が響いていました。

ですが、彼女には唯一、苦手なことがありました。

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それは、1歳頃までの乳幼児をあやすことでした。

子どもがグズったりすると、落ち着かせるために抱っこをしてなだめるのが普通ですが、彼女がそれをすると、泣き止むどころか、逆に、火がついたように子どもが泣き叫んでしまうのです。

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グズった子どもを向かい合わせになるように、左腕で抱き抱え、子どものアゴを左肩に乗せ、右手で背中をポンポンと叩きながら、身体全体を小刻みに揺らす…

子どもがグズったときに誰もがする「たてだっこ」ですが、彼女が1歳頃までの子どもにそれをすると、かえって強く泣かせてしまい、必ず逆効果になってしまうのでした。

理由は、彼女自身も、ほかの保育士も、全くわかりませんでした。

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ある日、彼女は街でたまたま入ったカフェで、偶然にも短大時代の友人に出会い、そこで近況報告や昔話に花を咲かせました。

友人も彼女同様、保育士として頑張っているということでした。

そこで彼女は、例の悩みについて、相談することにしました。

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********

「へぇ~なるほどね。誰からも好かれてしまう、アナタらしい悩みだね♪」

友人は、全てを見透かしたような表情で、そう答えた。

「ん?え?えっとぉ~、なんでそうなるの?」

彼女は、友人の言わんとしていることが理解できず、照れ笑いを浮かべた。

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「理論や経験を通して考えることを知らない、赤ちゃんの時代の時こそ、感性が豊かというか、感受性が強いというからね」

友人は、そう言ってから、おもむろに椅子から腰をあげると、次の瞬間、鬼のような形相を浮かべ、テーブル越しに彼女の鼻先まで、ぶわっと顔を近づけた。

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「うわっ!?ビックリした!なんなのよ、いきなり…」

友人の思いもよらない行動に狼狽える彼女。

「アハハハ♪ごめんごめん」

友人は再び椅子に腰を下ろすと、いつものように明るい笑顔で言葉を続けた。

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「ねっ!?ビックリしたでしょ?」

「そりゃぁ、ビックリしたわよ」

「これでわかったでしょ?」

「え?なになに?どゆこと?全然わかんないよぉ~」

友人はイタズラっぽい笑みを浮かべたまま、もったいぶったようにその理由を明かさない。

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「もう!いいかげん教えてよ!こっちは真剣に悩んでるんだからさぁ…」

ふて腐れ始めた彼女に、いたずら好きの友人もさすがにからかうのをやめた。

「誰にでも好かれてしまうっていうアンタの性格も、時には災いすることもあるのね」と言って、先程の突然の行動の意味を明かした。

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「さっき、ビックリしたでしょ?」

「そりゃ、当たり前でしょ。怖い顔していきなり近づいてくるんだもん」

「赤ちゃんだって、おんなじよ。だっこされたときに、怖い顔が目の前にあったら、そりゃぁ泣くわよ」

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「え?だからなんなのよ?」

「実は私、霊感強いんだけどさ………」

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「乗ってるのよ…

アナタの左肩に…

………悪霊が………」

Concrete
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雪さんお帰りなさい(T-T)
突然退会されたので、ビックリしました(´Д`)
でも、一度消えたアカウントは復活しないのですね…。
せっかく、アワード受賞で名前がゴールドになったのに…。
過去作品も一括で見られなくなったのも惜しまれます(ToT)
また一からレガシィを築き上げていってほしいと願っています♪
それと、この作品にコメント&怖ポチしてくださった皆さん、ありがとうございます。
これからも、ラスト一文で読者がのけぞっちゃうような作品を書いていけるように頑張ります。

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