中編3
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お狐様

「神社の鳥居の前でかごめかごめをしたらダメだよ」

小さい頃に何回も言われた言葉です。

父方の祖母の家の近くに稲荷神社があり、その周りで遊ぶのがお決まりだったのですが、なぜかかごめかごめだけはダメだと言われていました。

私たち兄弟は真面目にその約束を守り、かごめかごめはしなかったのですが、どうやら約束を守らなかった子がいたようです。

そのお話をしたいと思います。

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ヒロはわんぱく坊主で近所の有名人でした。

「母ちゃん!お稲荷さん(神社のこと)で遊んでくる!」

「暗くなる前に帰ってきなさいねー」

お稲荷さんで毎日のように友だちと遊んでいました。

ある時、鬼ごっこもかくれんぼも飽きてきたので、別の遊びをしようということになりました。

「じゃあさ、かごめかごめしようよ」

その子は最近引っ越してきたばかりで、してはいけない遊びを知らないようでした。

「かごめかごめはここではできないんだよ」

友だちが言います。

「どうして?」

「お狐様が混ざっちゃうから」

「かわいいじゃん」

その子は理解していないようでした。

みんな「ダメだからしないよ」と言うのにふてくされてしまいました。

「一回だけなら大丈夫なんじゃない?」

ヒロが言いました。

でも、と他の子は乗り気ではありません。

「大丈夫だって、たぶん何も無いよ!」

ヒロが笑顔で言ったので、じゃあ…とみんなで一度だけすることにしました。

真ん中は引っ越してきた子です。

「やるぞー!せーの」

かーごめかーごーめ

かーごのなーかのとーりーは

いーつーいーつーでーやーる

よーあーけーのーばーんーに

つーるとかーめがすーべったー

うしろのしょうめんだーあれー

「〇ちゃん!」

「ちがーう」

「△くん!」

「ちがうよ」

「✕ちゃん!」

「ちがうー」

「じゃあヒロくんだ!」

「ちがう!」

「え?じゃあ、だれ?」

「「「「え?」」」」

5人で遊んでいたはずです。なのに全員その子の後ろにいないのはおかしいのです。

その子の後ろにいたのは、知らない子どもでした。

着物を着た同い年くらいの男の子です。

そして、みんな気が付きました。

「ここ、どこ?」

神社の中にいました。でも、何かが違う所にいたのです。

「こらー!!!」

いきなり声がしました。

驚いて声のした方を見ると、お宮でした。

お宮からまた声がします。

「こんなところで遊んでないで、早く帰らんか!」

みんな困りました。帰り方がわからないのです。

「ごめんなさい、帰り方がわからないです」

正直に言いました。

「かえしてやるから、とおりゃんせでも歌え」

声は怒っていました。

こわいので、言うことを聞くことにしました。

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とーりゃんせとーりゃんせ

こーこはどーこのほそみちじゃー

てんじんさまのほそみちじゃー

ちーっととーしてくだしゃんせー

ごよーのないものようしゃせぬー

このこのななつのおいわいにー

おふだをおさめにまいりますー

いきはよいよいかえりはこわいー

こわいながらもとーおーりゃんせ

とーりゃんせ

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不思議なことに、歌い終わった時にはいつもの神社でした。

しかし、真っ暗になっていました。

家に帰ると、両親が心配して待っていました。

こてんぱんに怒られましたが、帰ってこれたことに安心しました。

それ以来、神社では絶対にかごめかごめはしません。

あの時のように、お狐様に怒られたくないですからね。

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かごめかごめ

籠の中の鳥はいついつ出やる

夜明けの晩に鶴と亀が滑った

後ろの正面誰

通りゃんせ通りゃんせ

ここはどこの細道じゃ

天神様の細道じゃ

ちっと通してくだしゃんせ

御用の無い者容赦せぬ

この子の七つのお祝いに御札を納めに参ります

行きは良い良い帰りは怖い

怖いながらも通りゃんせ通りゃんせ

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コメント怖い
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この雰囲気超好きです!
(通りゃんせがなぜか好きな歌なので話に登場していて嬉しい!!)

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