長編8
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表と裏

青年と入れ替わり、闘いに参戦した女性。

その力は鬼すらも圧倒するものであった。

だが、女性の狙いはあくまでも響ただ一人。

その時、そう語る女性の背後に次なる刺客が姿を現す。

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「隠れてないで出てきたら?」

女性はそう言うと、手に持った札を握り潰した。

女性の声に反応し、木々の間から男性の物と思われる声が聞こえて来た。

「お見通しでしたか…。」

暗闇の中からゆっくりと声の主が姿を現す。

「あっ!

あの青年は!!」

現れた男性の姿に男が声を上げた。

木々の間から姿を現したのは、先程二人の前に現れた響と名乗る青年だった。

「不意討ちをする積もりは無かったのですが…。

大変失礼致しました。

お初にお目にかかります。

私、響と申します。」

そう言って響は女性に頭を下げた。

「おい!

あの青年はなにもんだ?」

男性が男に問いかける。

「あなた方が鬼と闘っておられる時に、私達の前に姿を現した青年でございます。

彼は響と名乗り、自らが陰陽師の末裔だと…。」

「なっ、なんじゃと?!

ならばあやつが今回の元凶か?!」

突然現れた、今回の元凶である響に、男性と老僧は驚いた。

そして、二人はその体を震わせている。

「む、無理だ…。

あんなモンと闘える訳がねぇ…。」

「禍々しいのぉ…。

アレと比べると鬼が可愛く思えるわ…。」

二人は響から何かを感じとったらしく、ガチガチと歯を鳴らす程に怯えている。

「で?

あたしに何の用?」

だが、女性は響に対しても全く臆した様子はない。

響はそんな女性を見つめ、微笑んだ。

「先程のあなたの闘い、拝見させて頂きました。

お見事。としか言いようがありません。

まさか、あれほど容易く鬼を倒せる人間がいようとは…。」

そんな響を睨み付ける女性。

「ふ〜ん…。

見てたんだ…あたしの闘い…。」

何やら女性の様子がおかしい。

「えぇ。

全て拝見させて頂きました。

ですので、私自ら赴かせて頂きました。」

女性は下を向き、ブツブツと何かを呟いている。

「あたしの闘い見てたんだよ…ね?

全部…見たんだ…よね?」

響の言葉を聞き、女性がフルフルと肩を震わせている。

「はい。

全て拝見させて頂きました。」

響が答える。

「…………な。

な……………るな…

舐めるなぁ!!!!!!」

?!

突然、女性が叫び声を上げたかと思うと、響の頭上に閃光が走り、その体を真っ二つに裂いてしまった。

「なっ…

こ…これは…。」

二つに裂かれた響の体が、ゆっくりと崩れ落ちた。

その足元からは炎が上がりパチパチと音を立てている。

そんな響に歩みより、見下げる女性。

「お見事??

自ら赴いた??

舐めんじゃねぇよ!!

このあたしを式神ごときでどうこう出来ると思ったの?!

帰って主に伝えな!

もうすぐあんたを殺しに一人の術者が現れるってね!」

女性はそういい放ち、響に背を向け去って行った。

「全て…お見通し…でしたか…。

お…見事…。」

そう言い残し、響の式神は炎に焼かれ燃え尽きた。

「すぐ行くよ!」

戻ってくるなり、もの凄い剣幕で捲し立てる女性。

だが、女性と依頼主である男以外は全て手負い。

この先の闘いに耐えられない事は一目瞭然であった。

勿論、女性もそれは承知していた。

それを分かった上で尚も捲し立てる。

「何ぐずぐずしてんの?!

さっさと行くよ!!」

女性の言葉に、青年がゆっくりと立ち上がり歩きだした。

だが、後の二人は立ち上がらない。

そして。

「わ、悪いけどよぉ…。

この傷じゃとてもじゃねぇが闘えねぇ…。」

「儂もじゃ…。

この傷じゃ足手まといになるのは目に見えとる…。」

この二人の言葉に、青年が何処か悲しそうな表情を見せた。

「あっそ。

ならご自由に。」

女性は二人にそれだけ言うと、青年に肩を貸し歩き始めた。

次第に遠くなって行く三人の後ろ姿。

それをただ黙って見つめる二人の能力者。

そんな時、背を向けて歩く女性が言った。

「あんた達!

プライドまで折られたんなら今日で術者なんて辞めちまいな!

今後一切、能力者を名乗る事は、このあたしが許さない!」

この言葉を残し、三人は闇の中へ消えて行った。

響の元へ向かう道中、三人の誰一人口を開かず、黙々とその歩を進める。

暫くし、余りの沈黙に耐えきれず男がその口を開いた。

「あ…あの…。

余計な事かも知れませんが、先程の二人に対しての言葉…。

少々、言い過ぎではと…。」

女性に対しそう切り出した男。

女性はチラリと男の顔を見て、小さくため息をつく。

「まぁ、貴方からして見ればそう思われても仕方が無いでしょうね…。

でも、三流と云えど彼らは術者を名乗る者。

その彼らが、異界の者に臆し、屈する事など絶対にあっては駄目。

でも彼らはそれをやってしまった…。

自分で術者を辞める事を選んだ様な物なの。

もし、彼らがそれでも今後、術者を名乗るなら、さっきも言ったけど、あたしが彼らを潰す。

術者というものはそんなに甘いものじゃないのよ…。」

男は女性の話を聞き、この女性が持つ覚悟を感じ取りそれ以上何も言えなくなる。

そこから更に無言のまま歩き続けると、突然目の前に社が姿を現した。

「こ、こんな所にこんな建物が?!」

男は突然現れた社に驚きを隠せない。

だが、女性は何も答えず一点を見据えていた。

女性が見据えるその先。

そこに佇む一人の男性。

響だ。

女性はゆっくりと歩を進め、響と対峙した。

「先程は、大変失礼致しました。

改めて、私が響、本体にこざいます。

悪気はございませんので、どうかお許しを。」

響はそう言い、頭を下げた。

「ふん!

気にいらないね…。

あたしを目の前にしても余裕。って感じのその態度がね!」

女性は響に対し強い口調で言う。

そんな女性に対し、響は薄ら笑いを浮かべ答えた。

「申し訳ありません。

抑えていた積もりだったのですが…。

出てしまっていた様ですねぇ(笑)

まぁ、気付かれてしまっては仕方がありません。

貴方が仰る通り、私は貴方に臆してはおりません。

貴方に私を鎮める事など、出来ないのですから(笑)」

響の言葉に、女性が激昂しまいかと、男はその顔色を伺った。

だが、意外にも女性は響の言葉を聞いた後、クスクスと笑いだした。

「あははははっ(笑)

偉い余裕だね?(笑)

あたしに鎮められない?

鎮められても又、復活するの間違いじゃないの??」

?!

女性の言葉に響が体をピクリと震わせた。

「あんた、あたしを本当にその辺の術者と一緒にしてる訳??

だったら今すぐに考えを正した方がいいと思うよ?」

明らかに響が動揺している。

「き、貴様まさか?!」

「そ。

そのまさか(笑)

普通分かるでしょ?

これだけ多くの被害者が発生している失踪事件で無事に帰って来たのは幼い兄弟二人だけ。

勿論、この二人が他の失踪事件と無関係とは思えないし、そうかと言って本当に何も無く、無事に帰ったとも思えない。」

「貴様!!」

何故か響が激昂し始めた。

「ここに来る前に、その兄弟に会ってきたわ。

普通の人間には見えないだろうけど、はっきりと呪印が施されていたわ。

おおかた、あんたのその体が朽ちかけた時に、どちらかの体に転生する積もりだったんでしょ?

でも、もう無理ね(笑)

その呪印、あたしが解いたから(笑)」

?!

「私の呪印を解いただと?

馬鹿な!

あれは代々、我が一族に伝わる呪法による物。

貴様ごとき並の術者が解ける訳なかろう!」

女性は響の言葉に、又、クスクスと笑いだした。

「だからぁ。

ずっと言ってるでしょ?

あたし、並じゃないんだよね(笑)」

「ふ、ふざけるな!!

私は最高の陰陽師、安◯晴明の末裔ぞ!

その術を貴様ごときが!」

その響の言葉に、女性の表情が変わる。

「陰陽師、陰陽師って…。

だから何?

安◯晴明って言えば、誰でもビビると思ってんの?」

女性は首を左右に振りながら溜め息をついた。

「貴様!

我が先祖を愚弄する気か!」

響が一歩前へ踏み出す。

「あんた馬鹿?

あたしは陰陽師も安◯晴明も愚弄してなんかない。

あたしが愚弄してんのはあんただよ!

ハァ〜…。

仕方が無いから説明してあげるわ…。

あんたが崇拝して止まない陰陽師も安◯晴明も、その実力は本物。

だからこそ、何百年経った今も、その名は語り継がれている。

この国に知らない者何ていないんじゃない?

でもね…。

確かに陰陽師は表立って有名ではあったけど、それとは逆に、世に名前を出さない一族も存在していた。

世に名前が出ないからって、陰陽師一族に力が劣っていたと思う?

そんな事は無い。

恐らく、その力は同等かそれ以上。

まぁ、その時代にあたしがいれば、間違いなく陰陽師より上だっただろうけどね(笑)

あんたも陰陽師の末裔なら、名前位聞いた事あるんじゃない?

宿御一族の名をね。」

女性が口にした一族の名に響が再び肩をピクリと震わせた。

「その名…。

確かに聞いた事がある…。

一族の文献にも記載されていた…。

決して表には出ないが、我が一族と肩を並べる一族があると…。

ま、まさか…貴様がその一族の?!」

「だとしたらどうする?

面白いよね?

時を経て、表と裏の一族の末裔が顔を合わせたんだから…。」

そう言うと、女性は響に歩みよった。

「さぁ…決めようよ…。

どっちが強いかをさぁ!!」

?!

女性の叫びと同時に、響の頭上に閃光が走る。

先程、響の式神の時に見せた術と同じ物だ。

「甘いですよ?」

響は瞬時に札を頭上に掲げる。

すると閃光は響の体を避ける様に地面へと落ちた。

?!

「甘いのはあんただよ?」

いつの間にか、響の背後に女性が立ち、両掌を響の背中にあてがっていた。

「巡れ…雷…。」

女性がそう言うと、響の体に衝撃が走る。

その場に片ひざを着く響。

「式…風雷…。」

片ひざを着きながら響は何かを呟き、そっと二本の指で女性の足を撫でた。

?!

途端に女性の体が竜巻にでも巻き込まれた様に、凄まじい速さで回転しながら宙へと舞い上がった。

突風に巻き込まれ、その身を回転させている女性。

やがて、その体は落下を始め、このままでは地面への激突は免れない。

そんな時、体を回転させながらも女性が両腕を左右に広げた。

すると、今まで吹き荒れていた突風が嘘の様に止み、女性は宙に浮くかの様にゆっくりと地面へと降りたった。

「へぇ〜。

思ったよりやるじゃない(笑)」

女性は楽しそうに響に言う。

「貴方も中々。

ですが、遊びはここまでですよ?」

響はそう言いながら、人差し指、中指を揃え、自らの唇へと宛がうとブツブツと何かを唱えた。

?!

女性の動きが止まる。

両足を動かそうと必死の様だ。

「貴方の足はこれで動きません。

怨みがある訳ではありませんが、終わりにさせて頂きます。」

Concrete
コメント怖い
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セレ―ノ様。

いえいえ!
見逃しまくりで大丈夫ですよ(笑)
少年受けしそうな作品ばっかりですから(笑)

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月舟様。

断言致します!
あの二人はこのまま終わります!(笑)
間違いなく!

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ふたば様。

そこに気付いて頂けましたか!
そうなんです!
周りの人間には影響がないんですよ!
ただ…姉さんは…

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はと様。

続きを待ってくれていると?!
こ、光栄でございます(T-T)

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珍味様。

詮索し過ぎですって!(笑)
私の作品は珍味様が思っているより、あさ〜いですよ!(笑)

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沙耶様。

凄くないですよ〜?
沙耶様は錯覚しておられるだけですよ〜?
冷静に読んで見て下さい。
本当にただの自己満足作品ですから(笑)

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むぅ様。

またまた典型的な展開になって来ちゃいました(^^;
わたしゃあ、ホントに浅はかですわ(^^;

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ゆっけ様。

さすがです?!Σ(゜Д゜)
止めて下さいよ!
そんな大層な話しじゃないですよ?(笑)

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かいさん、つ、続き~( ̄▽ ̄= ̄▽ ̄)続きはどこ~!?
映像が頭に浮かんでくるような迫力でした~!
続きをお待ちしてまーすm(._.)m

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さすがです!👏( ˘ω˘ )続きが気になって何も手がつきません!!

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あ!!
また途中でポチっと…(^^;

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