初めて俺にフェラチオした女の話

中編6
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初めて俺にフェラチオした女の話

 おにい、だいすきっ。

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 冷えた空気を一息に吸い込んで店の戸を開ける。美容師に整えられた髪をボーイが褒めてくれた。明後日から彼と海外旅行なのと嘘をついて、大好きなバンドを聴きながら私は呼び出しを待っていた。

 今夜は俺が行くよっ、手招きしたボーイの後をついて歩き車に乗る。よかったな、初めてのお客さんだぜっ、浮かれた言い方をするボーイに、眩しいから窓を閉めてと私が頼むと、目を閉じてろよと小馬鹿にされた。

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 ルームナンバーを確認してチャイムを鳴らす。

 背を伸ばして椅子に座り、手帳を見ていた男に初めましてとお決まりの挨拶をしてから、料金と禁止事項の説明をして、こんな時に恐縮ですが、とお気に入りの前置きをつけて名前を聞いた。純です、よろしく、お金が先だったよね、男は落ち着いた声でそう言うと、二つ折りの使い古した財布から五枚、紙幣を差し出した。

 ねえ、少し話を聞いてくれないかな。男が言った。きた、お馴染みの性癖告白の始まりだ。私のとこみたいなSM系に限らず、他所でも同じだと聞くけど、男がプレイの前に話すことなんて決まってる。男の細い指を撫でながら私は声を少し高くして、もちろんと答えた。

 それじゃあ、と言って男は鞄の中から手錠や口かせ、皮バンドを取り出すと、無言で私の足首に皮バンドを巻き、口かせをはめ、最後に両手を手錠で固定して、手錠から伸びるチェーンをベッド脇の支柱に巻きつけた。

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 初めて君がフェラチオしてやった男はどんなやつだった?

 すべての準備を整えた男が抵抗する力の無くなった私を見下すようにして言った。こうして女の自由を奪った上で行為をしたがる男の多さに呆れつつ、男のものが口に入って来るところを想像してしまい下半身が熱くなるのを感じた私は拘束された口を使い、声にならない声で、んっ、んっ、と喘いでみせた。

 そうか、話せないよね。それじゃあ俺が初めてフェラチオしてもらった時のことを教えてやるよ。

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 まだ俺が小さい頃の話しだ。うちは借金を抱えた父親と離婚して、シングルマザーになった母親と俺と妹の三人暮らしだった。母親は引っ越した先の新しい土地でも、ろくでもない男にイカれて、家事なんてしないし、家はめちゃくちゃだった。もちろん飯も作らなかったから、いつも妹は、おにい、おなかすいた、おにい、おこめたべたい、って痩せた両手で俺のそでをつかんで震えてた。

 汚い手で触るんじゃねえよ、と妹の手を払いのけて俺は学校に通っていた。そこで給食も食べてたし、母親から金をもらってた俺は空腹に耐えることも、衣服に不自由することもなかった。

 あんたは私の子やし食わしたる、けどな、あいつは違うやろ。母親はそう言って、妹には一切なにひとつの世話をしなかった。

 俺と兄貴と妹、父親には三人子どもがいたけど、俺と兄貴は母親の子、妹は母親の姉の子、姉夫婦が交通事故で死んで、仕方なく引き取った子が妹だった。借金で手が回らなくなった父親は兄貴だけ自分のところに残して、俺とまだ小さい妹は母親が連れていくことになった。

 なんで二人も連れてきちゃったんだろ。あの人も無責任よね。小さい子には女の親が必要だからって。すぐ働ける年になるお兄ちゃんだけ自分で抱えとくなんてねえ。

 母親は酒を飲んでよくぼやいていた。俺は母親に同調して、そうだよ、おまえってほんとくっさいなあ、と言って妹の髪をつかんで突き飛ばした。

 妹をのけ者にする生活を続けていると、いつか妹は米が食べたいとも寒いとも言わなくなった。ある日、俺が学校から帰って漫画を読んでいると、畳の上で寝ていた妹がふらふら立ち上がり、俺の方に寄ってきて言った。

 おにい、いいことしてあげるから、おちんちんだし。

 俺のズボンをつかんでパンツと一緒にずり下ろして妹は続けた。

 あのね、おかあさんとね、いっしょにきたおじさんがね、こうしたらおとこのひとはみんなきもちいいって、おしえてくれたの。おかあさんにね、こんどおじさんにしてあげるときまでに、おにいのちんちんで、れんしゅうしときっていわれたの。

 おにい、だいすき、おにい、だいすき、そう繰り返しながら、妹は俺のものをひたすら舐めたり咥えたりした。

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 なあ、この話しの続き、おまえ知ってるか。

 そう言うと男は私の目の前にキャリーケースを持ってきてファスナーを開け、布に包まれたかたまりを取り出した。男がよいしょっと言ってかたまりを布の中から取り出すと、透明の袋に密封された老婆の顔が出てきた。

 死人の生首を目の前にして私は拘束された口を使って必死に息を吸い込むことがやっとの状態で、なにも考えることができなくなり、恐ろしさで涙や鼻水ばかりぼろぼろと溢れた。

 男は私の店に電話をかけ、女が体調を崩したから部屋まで迎えに来てやってくれと連絡すると、私の頭を壁に強く押し当て、私の目をじっと見て言った。おまえはそのまま黙って見てろ。

 しばらくすると、チャイムが鳴った。男はかなづちを後ろ手に握りしめ扉が開くと、よお、久しぶりだなあと言って、力いっぱいそれを振り下ろした。

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 ベッドの脇に拘束されている私の目の前に、手の指の先から足の先まで、床に固定されたボーイが仰向けに横たわっている。男はまるで機械のやるように、ボーイの手足を拘束し、身動きがとれぬよう、頭、首、両手、腹、と順番に拘束具を取り付け、さらにその拘束具の上から床にクギを打ち込み、ボーイを完全に固定した。そしてSMプレイ用の無理矢理、ペニスを口に押し込む時に口を広げっぱなしにしておくための道具をボーイの口に取り付けると、私を見てもう一度聞いた。

 この話しの続き、知ってるか。

 私は首を横に振りながら、内心もうダメだと思っていた。

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 最初は妹に舐められるなんて、気持ち悪かったんだけど、だんだん良くなって来てさ、それから俺、毎日あいつにしゃぶらせたよ。流石に毎日やってると、うまくなってくるもんだよなあ。かわいそう?馬鹿言うなよ、血が繋がってないんだから赤の他人だろ。なにしたって可哀想なんて思わねえよ。まあ、兄貴は違ったみたいだけどな、普段は親に全く反抗しなかった兄貴が妹と別れる時だけはぎゃんぎゃん泣きじゃくってさあ。

 妹も兄貴のことは好きだったみたいで、おにい、だいすきっ、いっしょにいてってわんわん泣いてなあ。最後は兄貴も諦めて、ぼくが大人になって戻ってくるまで、妹のことはお願いします、なんて母親にすがり付いて懇願してよ。ありゃみっともないたらなかったぜ。

 妹?今?あれ、言ってなかったっけ。この話し、店の女によくしてやるから、おまえも知ってるもんかと思ってたぜ。

 妹なあ。死んだよ。餓死。はっきりした死因は分からんけど、ありゃ痩せすぎてたからなあ。俺の精子たくさん飲んでりゃ、死ぬこたあないと思ってたけどなあ。まあ俺も当時は若くて馬鹿だった。それだけ。ってことでこの話しはお終いな。

 ボーイは話しをやめて、皮の鞭で何十回も叩かれて真っ赤になった私の尻の肉をつねりあげ、私が声をあげて泣きわめくのを見てケラケラ笑った。

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 目を覚ましたボーイが腹の上に置かれた自分の母親の顔を見て、狂ったキチガイのように叫び、もがいている。でもSM専門のこのホテルでいくら大声を出したところで盛り上がっていると勘違いされるだけだろう。うるさいなあ、と男はボーイの顔の中心に何発も拳を振り下ろした。

 純、ボーイと同じ名前を名乗った男は、生首の入ったそれを持ちあげると袋をナイフで裂き、銀色に輝く食品用の大きなボールにごろんっと老婆の頭を丸ごと入れた。次に鞄の中から理科の実験準備室で見た薬品の瓶を取り出して、液体をボールの中の老婆の顔にかけると、ジュクジュクと顔が溶け出し、ものすごい匂いが部屋中に充満した。

 ボーイは目から血を流して、痙攣を起こしたように、身体をビクビクさせている。男はジュクジュクになった顔をゆっくりとボーイの口元まで持っていくと、なあ、お腹へったろう、残さずお食べ、と優しく言って、乳児の母が子に乳を飲ませるようにボーイの頭を片手で支えながら、母親の顔を開きっぱなしの口の中に少しずつ流し込んだ。

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 もうなにも聞きたくないし見たくない。血や骨や肉だけじゃない。もっと色んなものがこの部屋で混ざり合ってる。

 鼻水も涙もおしっこもぜんぶ出しきって、せめて大好きなバンドマンの彼と海外旅行に行きたかったと滑稽なことを考えて茫然としている私に、かなづちを握りしめた男は静かに言った。

 おまえも誰かに話したか。

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オイキタロウ様
お読み頂きありがとうございます。
驚いて頂き、とても嬉しいです。

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タイトルから受けるいい加減さが微塵も感じられず驚きました。

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sun様
お読み頂きありがとうございます。
分かりづらくて申し訳ありません。

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ラジオバラード様
お読み頂きありがとうございます。
私自身いつもひりひりしてるんです。
どうしようもないと思います。

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筆者さんの話は、何かどれも、ヒリヒリする(笑)
もしかして火傷?
子供には
読ませたくない
桜枝、で575

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ロビンM様
お読み頂きありがとうございます。
エログロナンセンスの域は早くに脱し
今後は、不条理作品を書いていきたいと思います。
よろしくお願いします。

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ぜ、ぜぜ、絶対にメシ食いながら読んだらダメなやつだ!…ひ… この雰囲気好きです。

怖さもさる事ながらエロ、グロ、胸糞、オタ萌え、不条理、悲しみ、怒り、恨み、闇、残虐、虐待、の全てがこのお話に集約されているようで凄いと思います。題名にもセンスを感じます。た、タグが足りません!…ひひ…

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月舟様
お読み頂きありがとうございます。
怖かったですか。良かったです。
また書きます。

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hatu_risu様
私の技量不足です。精進します。
お読み頂きありがとうございました。

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難しすぎてわからなかった

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