中編5
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女の人

五年前、当時の彼氏と一緒に住んでいました。

と言ってもまだ一人暮らしをしていた

彼の家に転がり込んで半同棲していた感じです。

付き合ってから3年が経つ頃

ちゃんと荷物を運んで一緒に住もうと

彼が言ってくれたので服やら必要なものを

運んで本格的に住み始めました。

この時には既に分かっていたのですが

彼の家には何かがいました。

目では見えず頭の中で見えるタイプの

霊感を私は持っています。

彼の家はアパートなのですが

一部屋が二階建てになっていました。

1階は水場。(台所 洗面所 お手洗い お風呂)

2階はリビングと寝室でした。

玄関を開けると目の前に階段が見え

右に目をやると台所が見えました。

たまにお線香の匂いや懐かしい匂いが

したりしていたので、その時点で何かが

居ることは分かっていました。

住み始めてから半年が経つか経たないか。

その頃から階段を上がる時に

台所から階段を覗き込まれている

光景が頭に流れるようになりました。

ただじっと見ているだけなので

彼に言うこともなく1人でビクビク

しながら過ごしていました。

彼は夜のお仕事をしていたので

1番怖い時間帯には必ずいません。

そんな時には極力、1階には

おりず2階で過ごしていました。

そんな時、彼のお店の従業員が

鍵が壊れてしまい修理するまでと

荷物を持って彼と帰ってきました。

私は働いておらず、彼の帰りを

待って一緒に寝ていました。

その日も眠かったのですが

従業員がいる前で彼と一緒に

寝るのが何故か恥ずかしく感じ

従業員が寝るまで布団の横で

寝転がってテレビを見ていました。

そのまま私は眠ってしまいました。

ここから最悪な1ヶ月を送りました。

夢を見ました。

私の父も霊感があるのですが

家族4人(私 父 兄 弟)でどこかに

出かけている夢でした。

ふと、父と同じほうを見て

「あの人、違うよね」「あんまりよくない」

「見たらあかん」「分かった」

と会話をしました。

そこには女の人の霊が立っていました。

その瞬間、夢は覚めたのですが

現実で人生初の金縛りに合いました。

目が動くことに気付いたのですが

怖くて目も開けずひたすら耐えました。

怖い話でよく見たり聞いたりしていたので

体験したことのない金縛りみはかなりの恐怖心が

あったのですが、この時はすぐに解けました。

そのまま彼が寝ていた布団に

寝ているのなんてお構い無しに

逃げるように入りました。

数日後、従業員が無事鍵の修理が終わり

それまで寝てもらっていたリビングも

人がいなくなり、横になってテレビを見ていて

その日もそのまま寝てしまいました。

すると、夢と現実の間にいるような

不思議な感覚になりました。

家の階段を女の人がゆっくり

上がってくる映像が頭に流れます。

まるで部屋と階段との壁がなく

横から見えているようでした。

そのまま上まで来てしまい

ドアの前で立ち止まっていました。

不思議な感覚がなくなった瞬間

またしても金縛りになりました。

この時は前回と比べ物にならないくらい

怖く必死に目を閉じていました。

すると、頭元で床が軋む音がして

そのまま寝室の方へ歩いていきました。

どうすることも出来ないのに

彼が寝てるどうしようどうしようと

考える事しか出来ませんでした。

また軋む音がし始めて、私の頭元を通り

ドアの方まで歩いていました。

音がぴたっとやんで私の金縛りも

解けました。ドアの方は見れず

さっさと布団に入りました。

そして数日後

これが最後の金縛りで

最も最悪な最後でした。

その日は、前回と違い

布団で寝ていました。

寝る前に彼と外で飲んでいたので

2人ともかなり酔っていました。

彼は布団に入るなりすぐ寝て

私は目を閉じて眠りにつくのを

待っていたのですが、寝付けずに

不思議な感覚がまた襲ってきました。

真っ暗などこでも無いところに

私は立っていました。

少し離れたところに女の子が見えました。

これはなんなんだろう。次は何?

やばい。これ絶対やばい。

女の子は、マンガや映画でよく見る

赤いワンピースのようなものを着た

トイレの花子さんみたいでした。

暗いはずなのに女の子の姿も

赤とハッキリと見え私の恐怖心を煽ります。

逃げなきゃ。来る。どこに?

思考がぐちゃぐちゃなのに

女の子からは目が離せずいると

私の方に向かって走ってきました。

そのまま私にぶつかり私は衝撃に

目を閉じ、開けるとまたさっきの位置に

女の子が立っていました。

また来る。

何故か女の子の行動が先読みでき

その通りに女の子は来ました。

またぶつかる。

またぶつかってきました。

そしてさっきの位置に戻る。

また来る。次は文句言おう。

この時点で私の中で

現実かのようになっていました。

そして女の子は走ってくる。

ぶつかる。

文句って何を言えば?

そう考えているとぶつかる寸前で

私の前に立ち止まり、顔を上げました。

目は前髪で隠れており

気味の悪いにたぁっと笑った

口元だけが見えました。

その瞬間、現実に戻り金縛り。

布団でしたし、隣には彼。

必死に声を出そうにも出せず

目をぎゅっと閉じて声を出そうとします。

段々かすれた声が出ているのが分かります。

彼が寝返りをうち、私に背を向け

押し入れの方を向いた瞬間びくっと

飛び跳ねました。

何かに驚いたように。

その衝撃で私の金縛りは解け

疲れたのかそのまま眠りました。

次の日、彼に

「昨日何にビックリしたの?」

と聞くと

「ん?どういうこと?いつ?」

覚えていませんでした。

この時、私は押し入れの前に

何かが居たんだ。彼は覚えてなくても。

あの女の人が私たちを見てたんだ。

と思い、家に帰りました。

数ヶ月後、彼とは別れてしまいましたが

今でもあのアパートに住んでいるようです。

まだあの女の人はいるのか。

あれはなんだったのか。

私になにか言いたかったのか。

きっと謎は解けないままでしょう。

Concrete
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