短編2
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肉屋の家族

 僕は霊感がないので、今まで「幽霊」を見たことはない。

けど、幽霊や呪いなどの、目には見えないハズのものが、実際あるんじゃないかと思わせるものを一度だけ見たことがあります。今から15年ほど前の話です

僕はその肉屋に何度か買い物に行ったことがある。顔はもう覚えてないけど、40代ぐらいの女の人がいつも店番してた。どこにでも居そうな普通のおばさんだったと思う。

ある日突然、親からそのおばさんが亡くなったと聞かされました。

初めて聞いたときはビックリしたけど、そんなこともあるのかな…とぐらいにしか思いませんでした。

けど現在、町ではその肉屋の話は誰もしません。あまりに怖すぎて誰も関わりたくないんだと思います。

僕も詳しいことは知らないし知りたくもないので、知ってることだけを書きます。

肉屋の奥さんが亡くなった。死因はいちおう「病死」ということらしいですが、お葬式を終えた次の日に、残った旦那とひとり息子は引っ越していき、そのまま行方知れずになりました。

なぜそんな急に引っ越したのか…町の人たちはみんな噂してました。

「あの奥さんは病死じゃなくて旦那に殺されたんだ」と。

「いまに息子も殺されて旦那が捕まるぞ」とか、「あいつはヤクザだ」とか、面白半分で話のネタになってました。その頃はよかったんですが……

奥さんの死後、葬式が終わって7年経った2009年ごろ、行方不明だった息子だけが突然帰ってきたんです。

でももう7年も経ってるので誰もそのことに興味なくて、突然帰ってきたことは確かに不思議だったけど、もうその理由を知ることはできません

息子は、帰ってきたその日の夜、肉屋に火をつけました。

焼身自殺を図ったんです。

僕も現場に居て見ましたが、火の勢いはものすごく、空にまで届きそうなほど舞い上がって、町の人はみんな、その炎を見て青ざめてました。僕も、その炎の中に人がいると聞かされたときは、ゾッとしました。

「これはとんでもないことになったぞ!」

そしてそれ以来、町で肉屋のことについて話す人は、誰も居なくなりました。

はっきり言ってこの肉屋の3人家族は、謎だらけです。

奥さんが何故亡くなったのか、息子は何故自殺したのか…旦那はどこへ行ったのか?

もしかしたら、町の人の中には真実を知ってる人が居るのかもしれません。

その肉屋の建物は看板が半分焼けて黒くなり、骨組みと一部の壁だけになったまま、いまでも取り壊さずに残してあります。

まるで誰も、その肉屋が見えてないかのようにそのままにしてあるのは、もしかすると、取り壊すのさえ怖くてできないのかも…?

肉屋の3人家族はどんな人物だったのか…

関わるととんでもないことになりそうなので関わりたくはないけど、まだ何か、深い謎があるのかもしれません。

Concrete
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