中編3
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視えない理由

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 私の伯母は40手前にして癌でなくなりました。

複雑な家庭であったので一緒に住んでいた事もしばしばあり、忙しい母の代わりに

炊事をしてくれたり、母に話せない悩みも打ち明けられる大好きな伯母でした。

今回はそんな伯母のお話を書こうと思います。怖い話ではありません...

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伯母も母も私も巫女家系のせいか良く視える体質です。

そんな伯母にも悩みが1つありました。

〝親近者や大切な人、ペットが視えない〟

家族としては悲しい事です。伯母は近しい者が視えない事をとても辛く思い

悲しみ、悩んでいました。

「なぁはるー...近くにタルト(犬)」おらん?毛が付いとるんよ…」

「おるよー。伯母ちゃんの横に座っとる!」

「そっかぁ...なぁ、写真で撮ったら写らんかな…」

当時スマホはなく、ガラケーの時代でした。

「撮ってみる?私やったらいけるかもしれんし、ママおるし…」

タルトとは叔母ちゃんが結婚する前から一緒に暮らしていた愛犬です。

伯母ちゃんから携帯電話を受け取るとカメラを起動させました。

「いくよー。ピースかなんかしとってー。」おあ

「うん...」

カシャ!

白い犬型のモヤが写りました。

「はる、ありがとな。」

どこか寂しそうな笑顔にこちらまで悲しくなりました...

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とある日...

伯母ちゃんが

「ユタでもイタコでも良いから会ってくる!」

と言い出しました。

「また突然...本物のイタコとかユタなんておるん?」

「見たら分かるやろ!来週行ってくる!」

「なんでねww悩みでもあるとね?」

「近しい人にまた会いたいんは人間の性やん。」

「まぁ...そうかもしれんけど…どこ行くんかはママと話してからにしてな心配性やからw」

「うーん、やっぱりあれよ。霊山やし恐山行ってくる!」

こうして伯母は一人恐山へと旅立ちました。

「はる、どう思う?」

「え?なんが?」

「お姉ちゃんが近しい人視えんのってなんか理由でもあるんやろか?」

「まぁ、あるから視えないんやと思うけど分からん。」

母と伯母ちゃんの話について話合っていましたが、空気が重いので私は自室に籠ってしまいました。

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5日後、伯母ちゃんは帰って来ましたが悲しい顔をしていました。

「伯母ちゃんおかえりー。」

「うん、ただいま...」

「元気ないやん、どげんしたと?」

「本物のイタコさんおった...話もできた...」

「だったら良かったやん!理由分かったやろ?」

伯母はポツポツと話し始めました。

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イタコさんに会うなり業を背負っていますね...と言われたそうです。

何故近しい者が視えないのかハッキリと説明を受け、前世に問題があるのだという事がわかりました。

伯母の問題がある前世は、昔話でよくある姥捨て山が関係していて、口減らしのために祖母だけではなく、母親、障害をもって生まれてきた兄、子供達をも置いてきてしまったそうです。

そんな伯母の前世により近しい者が視えないのだと...

伯母の旦那の兄には生まれつき知的障害があります。その旦那の兄とは前世実の兄だったとも...

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今目の前に居る伯母はそんな悲しい事が出来るような人ではありません。

何故前世の業によって悲しい目に遭わなければならないのか、子供だった私は悲しくもなり、イタコさんに憤りを感じました。

「そんなん...そんなイタコ絶対嘘言ってるに決まってるやん!伯母ちゃんそんなことせんもん!認めん!」

「はる...イタコさん本物やったよ。なんも言わんでもそうやって悩んでることポンポン言ってくれて...ショックやったけど前世は前世やから受け止めなしゃあないやん。」

「だって...」

なんとも言えない気持ちでいっぱいになり二人共黙り込んでしまいました。

視えない理由が前世にあるなんて辛すぎますよね...

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伯母はそれから何年かして癌が見つかり亡くなってしまいましたが

伯母の娘であるお姉の元に現れず、私の夢に出ては伝えたい事を言い逃げして消えていきます(笑)

お姉は零感です...お姉ももしかしたら前世に何かが...などと思ってしまいます。

最後までお読みいただきありがとうございました。

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叔母様の苦悩を思い、切なくなりました。
また、「親の因果が子に報う」という「因果応報」の概念に 囚われ続けたら、人はまさしく「死に至る病」つまり絶望するしかないだろうかと。考えさせられました。

普段、視えるはずのものが視えない・・・それが、愛する家族やペットだったとしたら、尚更、その故を知りたいと思うのは、ある意味当たり前なのかもしれません。

視えるということは、ある意味とても切なく悲しいことなのですね。知らなくてもいい事実、真実、しかも、自分自身が生まれるずっと以前の先祖の罪業を知ることになるとは。
このサイトの作家様読者様の中にも、お視えになられる方がいらっしゃいますが、その中の何人かの方は、「視えない方が幸せ」とおっしゃいます。
その意味するところの深さと、なにか視えるということの宿命的なものを感じさせるお話でした。

叔母様は、既に他界しておられるとのことですが、来世では、先達たちの前世の業から解放され、心穏やかな平安の日々を過ごされていることを乞い願うものです。

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めっちゃ切ない(´°д°`)

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