中編4
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『後仏』

米村 平作という者が上役より大金を預かり管理する事になりました。

しかし、ある時火事にあい金を紛失させ、途方に暮れ上役に相談すると、某という僧侶を紹介してくれたのでした。

この僧というのは、失せ物など全て当てると有名な者で、藁をもすがる思いの米村が訪ねると、僧は彼が喋る前に此処へ来た用件をいい、どこの誰々が金を盗んだと実名を上げて答えてしまったのです。

上役共々問い質すと果たして男は罪を認めました。事の次第を僧に告げ、御礼を兼ね酒宴をもうけていると他家より急の呼び出しが僧へかかりました。

大変人気の僧ですから、この様な事は日常茶飯事で上役と米村も「それではこれで…」と席を立ったのでした。別れの挨拶もそこそこに僧は急いで先方へ…

すると、懐より何かを落とした様子…

呼び止めても気付かず僧は先へ行ってしまい、後日届けようと手をのばすとそれは袋に入った箱でした。取り上げてみると…『平作…平作…我を渡すな』と声が聞こえます。上役はとうの昔に帰り、ここは米村1人です。「空耳か?」と袋を懐に入れ家へと急いだのでした。

夜も更けた頃、寝ようとしていると突然の来客です。見ると血相を変えた彼の僧でした。

「米村殿!貴殿しか居らぬ!私が落としたモノを返して下され!」と言うのです。

「勿論、お返しします。」と言おうとすると何処からか…『平作…返すな…渡すな…』と声が聞こえます。僧には聞こえておらず、ここへきて米村は箱の中より声が聞こえる事を悟り、不思議に思って暫く声の言う通りにしたのでした。

米村が箱を渡さぬと思った僧は必死に金50両で頼むと言います。

声は『まだ返すな…渡すな平作…』と言います。結局300両という大金で声は『平作渡せ』と言いました。最後に米村は僧に箱の顛末を問い、僧が答えて言うには…

「箱が一度他人に渡った以上、『コレ』を私が御する事は出来ません。一族の誰かが受け継ぐでしょう。私は『コレ』が本願地へ帰るまで再び落ちぬ様するだけです。」と言い、箱の中身が『後仏』というモノである事を教えてくれたのです。

貴殿が『コレ』に取り憑かれた縁ですのでと前置きし『後仏』とは何であるかも教えてくれました。

『後仏』(うしろぼとけ)とは………

『後仏』とは別名『外法頭』ともいい、もとは人の頭蓋骨であるとの事。

僧の一族は普段より、異相の人間を見つけては生前より子細を告げて、死後に頭蓋骨をもらう事を約束に生きている間は何不自由なく生活させ、食を求めれば山海の珍味を…。女を望めば絶世の美女を…。殺人を望めば生け贄を…。望むモノは何でも叶えてやります。

しかし一つだけ嘘があり死後でなく、その人が余生を全うし死ぬ寸前、一番『生』に執着する瞬間に刀にて首を落とすのです。

この世の全ての快楽を得た人間の『生』への妄執は凄まじく満ち足る事を知りません。その妄執が最も強い時に斬られた首は12ヶ月間、土中に埋められた後、掘り出され綺麗に土を落として頭蓋骨の頂きだけ残してあとは捨てられます。ここは『天頂仏』と呼ばれ最も大切で、細かく砕かれ粉末にし、特別な方法で仏像『後仏』を造るのです。

これは歳ふる事に強力となり初めあらゆる望みを叶え。次に夢でお告げをし、最後には言葉を発して真理を語る様になります。

彼の僧で6代目の管理者(御守り人)との事で、しかしいつか必ず今回のように管理者の手から落ちて離れてしまう時が来ます。これを見つければ良し、そうでなければ大いに祟り、行く先々で人死にが出ると言う。

世に言う『外法使い』とはこれの事だと米村は思い、300両は不要と告げると僧は笑い…

「『後仏』が貴殿に授けた金です。使わねば知りませんよ。」と告げたのでした。

その後、米村はお役を辞して小さな舟宿を始めました。異才があったのでしょう十年の内に地元でも有数の大店になったのでした。

元々律儀で欲の少ない米村は息子夫婦と孫に囲まれ幸せの中で余生を送っていました。

ですがある時、釣りに行ったまま夜になってももどりません…数日後、番所から水死人の知らせが…家人が向かうと紛れもなく、米村の遺体でした…しかし…肝心な『モノ』がありません。そぉ…『首』が…。

結局、辻斬りの犯行として処理されました。

付近をねぐらとする、無宿人達の『袋を下げた僧侶』の目撃談はついに最後まで取り上げてもらう事はなかったとの事です。

最後までお読み下さり感謝致します。 拝謝

怖い話投稿:ホラーテラー 最後の悪魔さん  

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