短編2
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ついて来るな!

 彼女と初めて会ったのは、彼女が道に迷っていたときだった。

 声をかけると 、引っ越したばかりで ここから帰宅するのは初めてだと、笑顔を見せた。

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 方向が同じだったので、彼女のアパートまで一緒に歩いていった。

 困っている人を進んで助けるなんていい人ね、と彼女は言った。

 話もはずんだが、彼女は、室の前まで来ると急に振り返って叫んだ。

「ついて来るな!」

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 俺は、苦笑した。 家人に誤解されたくないとしても、この仕打ちはないだろう。

 彼女は、はっとした顔で詫びた。

 「ごめんなさい。 あなたに言ったんじゃないんです。 私、少し霊感があって・・・、外出すると霊が寄ってくるので、付いて来るなって言って払ってるんです。」

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 ゲッ、なんて女だと思った。

 そのときは適当に切り上げて別れたが、なぜかこのあと付き合うことになった。

 彼女によれば、霊的な因縁らしい。

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 付き合ってからは、彼女のアパートへ行くとき、俺はいつも車を使っていた。

 その日は、アパート近くの交差点で、大きな事故に出くわした。

 何台もの車が衝突、横転し、漏れた燃料からは火の手が上がった。

 俺は、間一髪避けられた・・・はずだったが、交差点から少し行ったところで、車が動かなくなってしまった。

 どうやら、巻き添えで何らかのダメージを受けたらしい。

 携帯を取り出すと、電源切れ。

 彼女のアパートが近いので、とりあえず歩いていくことにした。

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 アパートの前に着いたとき、背中に違和感が走り、振り返った。

 そのとき、奴らを見た。

 事故で亡くなったばかりの霊だと、直感で分かった。

 ゾンビのような奴らが、交差点の方から、列をなして俺の後を付いて来てる!

 俺は、思わず怒鳴った。

「ついて来るな!」

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 気配を感じ、前を見ると、いつの間にか彼女が立っていた。

 彼女は、見たことがない悲しげな顔で言った。

「あなたは、いい人だから、助けてあげたかった。」

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 次の瞬間、俺はものすごい力で、背中を引っ張られた。

 俺の体は、宙に浮いて、あの交差点の方へ引き飛ばされていった。

 彼女の姿が豆粒のようになったかと思うと、あっという間に視界から消えた。

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 俺を引っ張る力は、交差点のところまで来ても止まなかった。

 だが、どこに連れて行かれるのか、そこの状況を見て、ようやく分かった。

「そうか、俺は交差点事故で死んでいたんだ・・・」

Concrete
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